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BLだけではない、これは1人の人間が命の意味を悟るファンタジー

先日最終回を迎えた「A Tale of Thousand Stars」。日本題として「千星物語」として多くのタイ沼民を熱狂させた。

数多くのBLストーリーを取り揃えているタイドラマ界だけれど、濃度で言うと今作はかなりライトな部類。大体一つのストーリーでメインカプの他にサブカプが何組か登場するのがタイドラマお決まりのパターンではあるのですが、今作はメインカプのみ。
そのメインカプも相当焦ったく、お互いの気持ちを推し量りに量りまくって、10話中90%以上がダダ漏れまくっている相手の愛情を決め打ちすることなくすれ違いや思わせぶりに終始する焦れ神展開。

それがまた主役2人の爽やかさにぴったり!推せる!!

メインを務めるのは、パパンダオ村を守る森林警備隊のPhupha隊長(Earthくん)と心臓移植がきっかけでパパンダオ村のボランティア教師として赴任することになったTian(Mixくん)。くっきり二重が印象の爆イケな2人。絵になる!

始まった頃に書き綴ったこちらでも書きましたが↓ストーリーとともにこの物語を紐解いていく。

 Tianは豪邸に住み何不自由なく暮らしているお坊ちゃん。ただ心臓の病気が発覚してからは、残り少ない人生に自暴自棄となり、自分の境遇に噛み付くように遊び呆ける日々を過ごしていた。
いつものように友人たちと酒とルーレットに興じた帰り道、倒れたTianは病院に運ばれる。目が覚めると、移植された心臓により一命を取り留め、新たな人生が始まっていた。

Tianはもうすぐ死ぬから、と何も考えずに浪費していた日々のことを改めて考えるようになり、ひょんなことからドナーの存在を知る。

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元の生活にすんなり戻ることに強烈な違和感を覚えたTianは、自分の生きる意味を模索するようになり、それが Tianの苦悩の始まりにもなる。

Phupha隊長との出会い

ドナーであるTorfunがつけた日記を読み、彼女の願いを叶えることが自分の使命なのだと思い込んだTianは、苦悩を振り切るように彼女の代わりにパパンダオ村のボランティア教師に志願する。
ただ、パパンダオ村で与えられた住まいはスマホも繋がらず、十分な設備が揃わない粗末な家。そこで登場するのが、森林警備隊の隊長であり代々ボランティア教師の世話役をしているPhupha。
すぐに家に帰りたくなるだろう、とイジワルを仕掛けてくるPhuphaに歯向かうように、意地を見せるTian。
2人の物語はゆっくりじんわりと始まっていく。

ともかく、このPhupha隊長は皆の信頼が熱い、頼れる男なのだけれど恋愛に関しては全くの素人でその愛情表現は小学生以下。

イジワルな言動とは裏腹に、Tianに向けられる眼差しはいつも柔らかくて、愛情に満ち満ちたもの。
隙を見ては無邪気なTianの顔をじっとり眺める様は、好きですよね?それって好きってことですよね?の連続なのだけれど、本人は全く認めようともしない。

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恋愛に関しては純粋を通り越してややイラつくほどに無知にTianの気を引こうとする悪ガキ隊長Phupha。

けど合間にやっぱり好きがダダ漏れて収まりがつかない隊長。意味深な発言を繰り返し、オブラートに包みまくって愛情表現するむっつりぶりがたまらない。

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こんなふうにメインカプは一向に何も進みません。そんなジリジリが最も苦手!という方には向かないかもしれませんが、この物語は単なる惹かれ合う2人が愛を認識するだけに止まらない深いテーマが潜んでいるのでご心配なく。

焦ったい2人にナイスアシストしまくる(?)恋愛マスターNam医師

じりじり2人の間にいて、Tianの心臓移植のことにいち早く気づくことになるパパンダオ村の医師Nam。

隊長のことをよく知るNamはTianにも隊長にも何かにつけてけしかけるようなセリフを吐き、気持ちを認めさせようとする。その真意たるや、自分が結婚を考えるほどの愛しい愛しい彼女がいる余裕からか、単なる面白半分からなのか、いい調味料となって物語に刺激を与えている。

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リーダーとして常に威厳ある態度を維持する隊長も、Namには叶わない。

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お前の可愛いボランティア教師、とTianへの特別待遇をことさらからかうNam医師。誰よりも2人の恋の行方を心配するいい男、なんだよな。

親友の存在

この物語のキーとなるもう1人の存在が、Tianの親友であるTul(Whiteくん)。彼はTianの遊び仲間でもある都会っ子。電気も水道もままならないような村に突然住むことになったTianの心配をしながら、理解も見せる。

そして隊長への気持ちを持て余すTianに対し偏見も軽蔑もないフラットな感覚でアドバイスし、ずっと親友でいるから、と涙ぐましいセリフを送る親友of親友Tul。

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キレイごとな言葉ばかりでなく、ちゃんと現実も見据えてアドバイスしようとする真摯な態度が光る。Tianの両親からの信頼も厚く、何かにつけてTianの将来について心配をする。
この物語では特に語られてなかったように思うけど、彼にもいい人、見つかるといいな。

彼の苦悩とは〜この物語のテーマ

Tianは恵まれた環境を疑うこともなく、ワガママに生きてきた。何でも両親が与えくれ、贅沢にも慣れ切っている。

ただもう終わると思っていた命が再び自分の手の中に戻ってきたとき、Tianは一瞬で戸惑いの中に迷い込んでしまう。

それは喜びというより苦悩。自分の命の裏側には、莫大なお金と1人の死が絡んでいる。その事実はこれまでと変わりなく恵まれた環境でぬくぬくと生きるにはあまりにも重く、Tian自身が受け止めるには決定的な何かが足りないのだ。

「自分が生かされた意味とは何か」

Tianは自分の中で息づく心臓からの違和感を、その人が生きるはずだった人生を考えることで逃れようともがく。そして彼女の願いを知った時、それを叶えることが自分の使命と思い込むようになる。

本当は答えなどないことは、彼自身もわかっていたのかもしれない。

ただ将来に希望を抱き、村の人からも信頼されていた彼女の心臓を抱えるのに自分は相応しくない、ということをどうにか打ち消したかった。

Tianがもがき、戦った先には誤解やすれ違いが幾度も発生するのだけれど、その都度隊長や子供の存在に助けられるTian。彼が抱く愛情は日に日に膨らんでいき、それは村の人々たちにも届いていく。

全10話。YouTubeでは英語字幕しかないけれど(他の言語もあるが日本語字幕はなし)、JFCの方々が日本語字幕をまとめてくださっているので、ノンストレスで物語を楽しむことができる。本当にありがたく、素晴らしい訳に毎回涙するので、英語が苦手な方はぜひそちらを見て欲しい。↓ここからリンクへ飛べる。

このリンクはYouTubeの再生回数に反映されるとのことなので、日本の熱量を世界に届けたいという方にも最適。

BLファンタジーと括られがちではあるけれど、2人の人間が寄り添いお互いを見つめることで、人生において大切な何かを見つけていく人間愛の物語。

自分がわからない、将来何をして良いのかわからない、ということは本当はあらゆる可能性に満ちていることなのだ、ということがわかる。

Tianは自分は生きていていいのだろうか、という苦しみを抱えながら村にやってくる。教師という仕事を通して自分の生きる価値を見出したいと「与える」ことを第一に考えていくのだけれど、逆に村や隊長、子供たちからもらったことにより、新しい人生を歩む自分が彼らにお返しできるものは何かを考えていくようになる。

Tianが得た命で、心で、辿り着いた答えは、彼自身が今後様々な場面で自らが選択していく未来にある。

物語の終わり、ラストで見せられるシーンは隊長の欲望爆発(?)って感じで微笑ましい。意外とTianの方がオラオラで攻めていくんだよな・・・隊長の尻に敷かれ具合は到底部下には見せられない?(笑)



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