その純度の高さでBLドラマの新境地を拓くタイドラマ「I Told Sunset About You」に世界中が嫉妬する
SNSでの布教活動が目覚しく、気になっていたドラマ「I Told Sunset About You」を観た。
最近では有料配信サイトの買い付け合戦がめざましい日本のタイドラマ事情だけれど、この作品はまだ見つかっていないらしい!・・・が、この記事を書き始めたときと状況が目まぐるしく変わり、どうやらめでたく買い付けされた模様。さすが、タイドラマへの動きがだんだん早くなってきた。これで日本語訳で見られる日も近いだろうか。
と言うのもいま見られるのは英語字幕版のみ。ゆえのふわっとした理解ではあるのだけれど、圧倒的な映像美とセリフだけではなく表情の演技が圧巻である主役お二人の、みずみずしい表現力に助けられ、全く気にならないので大きく解釈は違っていないだろうと推測して書き進める。
主人公は男の子って感じの幼さと男っぽさが同居する爽やかBillkinくんと、
整った顔立ちに色香漂うPPくんの2人。彼は特に難しいシーンが多かったと思うけど堂々と演じきっていた。将来性抜群。
2人は幼い頃は仲の良い友達同士だったが、ちょっとした諍いが元で2度と話さないほどに疎遠になっていた。ところが大学受験のシーズンになり再び同じ教室で学ぶ時間を持つようになり、最初はぎこちなくお互いを遠ざけるような態度を取る2人だったが、勉強を教え合うことで再びその距離が縮まり始める。
男の子2人の友情物語のようであるけど、物語の冒頭はこんな感じで始まる。
素直になれない2人は離れていた時間分、かつての距離を取り戻すのに幾度かぶつかり合うことになるのだが、徐々に合わさってくる歯車が動き出した途端、昔に増してお互いを必要とし合うことに気付いていく。
そう、これは「この気持ちは何だろう」とまだ何も始まっていない若い2人が、芽生えつつある自分の気持ちを持て余し揺れながらも、次第に「恋」に気付いていく、究極の純愛ストーリーなのだ。
こういう非常に細かな気持ちのヒダを丁寧に丁寧に一つずつ描いていく、というドラマ、ぜひ日本で生まれてほしかった。もう嫉妬すらしてしまう、悶え苦しむ美しい男の子2人の魅力的なことと言ったら。
このジェラシーは日本だけではないはず、もはや世界レベルだろうと想像し、認定する。
最初は友情を温め合い、お互いの秘密を打ち明けるなどして距離を縮めていった2人だが、なぜかお互いが他の誰かと仲良くしているところを見るにつけ心がざわざわしてくるようになる。ただこの感情が何なのかがわからない。
そして友情の証でもあったお互いの秘密にすら、2人は苦しむようになる。
ジリジリとした焦り、ざわつき、それに訳もなくイラつくのだけれどその正体が自分にもわからない。
視線だけ表情だけ、というシーンがとても多いのだけれど、2人の演技がうまいのと演出の妙だろうか、セリフのないところに感情が溢れかえっている。
それをひしひしと感じるとき、受け手である視聴者の想像力と感情移入がまんまと迷路へ誘われていく。
一言で表すなら「エモい」のだろうけど、この2人、まさにエモーショナルの代名詞。
そしてもう一つの見所は、プーケットの美しい風景。ゆらゆらと浮かぶ2人の危うい関係を包み込むような海の水面。
海辺や水面でくつろぎながら、言葉を交わすシーンも多かったけれどハンモックに揺れながら、ギリギリのところで気持ちを確かめ合う手探りの会話が特に良かった。2人の色気に酔いしれてしまう。
そして舞台裏を描いた公式の配信動画では、主人公2人とスタッフの苦労が印象的だった、海の中のキスシーン。
気持ちに気づきながらも、まだ受け入れられない2人の揺れる心が海の中という秘密の場所で寄り添っていく姿がいい。
寄り添い、絡み合いながらもなかなかひとつになれない気持ちは、友情や家族、そして進学という人生の転機において2人の運命を大きく変えていくことになる。
1話が1時間以上あり、全5話で完結。第二部スタートはすでに決まっていて、進学後の2人の姿を描くとのこと。
ここでもうひとつ、特筆すべきはBillkinくんの抜群の歌唱力。ドラマ中で口ずさんだくらいでもその圧巻の歌唱力は窺い知れたけれど、ダウンロードしてちゃんと聴いても申し分なくうまい。
この色気、21歳?とは思えない。末恐ろしい。
PVもエモいからぜひチェックして欲しい。
恋する気持ちを表した中国語の歌詞を、訳しながら2人で歌うシーンも良かったな。
先日、Fantopiaというタイの人気俳優がザクザク登場したファンイベントがあったのだけれど、その際のBillkinくんの歌唱シーンが世界観ぴったりで良いとファンたちを唸らせていたので、興味のある方はYouTubeで検索されたし。
公認なのかよくわからないけど、ファンの方たちがUPしたような画像はガンガン出てくる(Twitterの方が早いかも)
それにしてもBLドラマに関しては、タイが一歩も二歩も抜きん出ていることがこの作品を見たことで確信に変わった。
そしてBLに限らずタイのドラマは、コメディもミステリーもラブストーリーもとことんやってる姿が清々しくすらある。
時々謎な演出や、馴染みのない効果音など、日本ドラマに慣れきっているととっつきにくさはあるけれど、それを乗り越えると素晴らしい世界が待っているのだ(そして時々ある早すぎる展開や意味不明なシーンもご愛敬)。
2021年もタイドラマから目が離せない。