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「行こうか 戻ろうか」―詩―

すじ雲と冬色の風を 追いかけて
その下を 走りに 走ってきた
息が あがり 足はよろける

気が付けば いつの間にか
遠い 異国の地にまで
流れて 来た

父母の土地の 方角さえ
見失いつつ ある
ただ がむしゃらに 
ひたぶるに 駆け抜けて
幾星霜もの年の 後姿を 見送ってきた

これで 本当に
良かったのだろうか・・・
自分には 別の
「するべき事」が
あったのでは ないだろうか・・・

あの人の 前髪のたおやかさ
うすい 梅色に 光る唇
きゃしゃで 崩れそうな 肩先
雪のなかで 握り合った時の
暖かかった 手のぬくもり

それらを 過ぎし事と
昔の日記帳の中に 置き去りにし
義理をつらぬく道だと 吹聴し
自分の魂を 騙しつづけてきたのでは
ないだろうか・・・

このまま この凍った大地を
少しの 人生手柄を 携えて
歩き続けて 行くのが
天命と いうものなのか・・・

化石のような 今の人生を 続けるか…
それとも 村の 通いなれた細道に もどるか…
躊躇逡巡(ちゅうちょしんじゅん)が 立ちはだかる

行こうか 北の 光り輝く異国の街へ
戻ろうか あの人の 手の中に
呼んでいるのは 父のしわがれた声・・・・

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立山 剣
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