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「分をわきまえた恋」エッセイ-「今となっては笑い話だけど、当時はシャレにならなかったエピソード」企画応募作品

大谷義則さんの「今となっては笑い話だけど、
当時はシャレにならなかったエピソード」の企画に参加
させていただきます
大谷さん なんとも 他愛無い話ですが 企画の
一番最後尾に加えてくだされば幸いです

題:「分をわきまえた恋」エッセイ

とんと 昔の話ですが、今となったら 
もう打ち明けてもいいかなぁ..

ビーナス見つけた!!

ボクは 大学二年生。
キャンパスは 華やかな賑わい
もうすぐ 夏休み。でも一年生の
時の通信簿が悪く、親の手前
仕方なくノートを小脇に抱える
目立たない大学生だった。

その出来事の きっかけは 偶然起こった。
校内の 池の側でぼんやりとしていると
合唱部らしい一団が 練習を始めた。
普段の練習室が使えず、外での練習に
なったようだった。
 声合わせの後で 歌いだしたのは
ベートーベンの「第九」の合唱だ。
「ふーーん さすがに 皆ないい声してるなぁ..
ドイツ語で 歌ってんのかなぁ??」と
何気なく 練習風景をみつめる。
すると ひとり 独唱をする女性がいた
ぽっちゃり体型で 背も低かった。
しかし ボクはその女性から目が
離せなくなった。何故とは聞かないで欲しい
これが 噂の一目ぼれだ。
彼女は 白い面立ちで 彫りが深く 
髪がおしゃれにカールしてた
ボクの目の前には ミロのビーナスの
白い顔が 重なって見える
「歌う ビーナスがいた!!」

ボクは 合唱部の知り合いに会って
彼女のことを それとなく、しかし
ねちねち しつこく 聞いた。
友人は 苦笑いしながら 教えてくれる。
彼女は 2年生で 英文学部に属しており 
かなりのお嬢様らしい。名は Fさん。
合唱部以外に、書道部にも属してるとのこと。

「うーーん 両部とも自分には縁なしだ。
それにお嬢様育ち…. 野良犬の自分には
不釣り合いだなぁ。しかし
一度火がついた ガスコンロは
簡単に 吹き消せない!!」

先輩へのお願い

書道部には 親しい先輩がいるのを
思い出した。 天祐 我にありだっ!!
ボクは その週のうちに先輩に
電話して 「勉強のことで 相談に
乗って欲しい」と頼む

先輩とは ランチタイムが終わって
人影のすくない 学食であった
先輩の 自慢話をさんざん聞かされた後で
空々しく 自分の勉学の悩みをチョロと
述べて、いよいよ本丸に突入した

「あの  ボクの親友が Fさんに
一目ぼれしてて、彼女とつきあいたいと
いってるんですが、何とかなりませんか??」

先輩は ニヤリ。 
「あのFに 惚れたやつがいるのか・・・ 
よくよく物好きだな。 あいつと
つきあうのは 骨だぞ。 なにしろ 気位が
たかい。 なんでも 元は華族(子爵)の家柄だった
らしい。 実は 俺も半年くらい
つきあったんだ。 もう金がいくらあっても
切がない。 何しろ やれ バレー鑑賞したいだの
日比谷の松本楼やマキシムの ランチが食べたいだの、
XXブランド大好きとか 平気でねだる大学生だ。
彼女と一緒に冷やし中華??とんでもない。一度だって
食べたことないさ」

嘘はすぐに露見

「おい おまえ ずいぶん 親友のためとはいえ
えらく 熱心 親切だなぁ。 
あ~ん。。えーーっ? もしかして 
Fに お前が惚れてるんじゃ ないのか??
おれの顔 まっすぐ 見ろよ」

ボクは レモンスカッシュにむせながら
必死に否定する。

先輩は 鼻でフッと笑う
「やっぱり そうか。お前はいつも
惚れっぽい男として 有名だったもんなーー
おまえ スーツあるのか? 親は金持ちか?
銀座の 松本楼やマキシムで 食事したこと 
あんのか??
辞めた方がいいぞ。 分をわきまえた恋を
さがしたらどうだ。 それでも Fが好きというなら
俺が うまく 仲は取り持ってやるけどな」

ボクは 真っ赤になって うつむいて
なんども 頷いてた。
身も世も捨てた恋に 走っても
相手は 120%羽衣を翻して
大空に 舞い上がってしまうのは
明白だった。 ボクの一目ぼれの
野良犬の恋は、袖を擦り逢う事もなく 
泡となり消えた

そうして、時がすぎ、お互い社会人となって
あの先輩と 飲むたびに
ボクは まだ さんざんいじられキャラになる

ボクは 悲劇の主人公にも
ロミオにも なれない
目立たぬ 地味社会人で
ヨッソ ヨッソして生きてる

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立山 剣
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