「名も知らぬ人」―詩―

何気なく　すれちがい
少し　気になった
亜麻色の　長い髪と　
彫像のような　後姿

次に　見かけた時も
何故か　心の隅から
離れなかった

ラッシュアワーの
気ぜわしい　時間
スマホを　見つめる
その人の　塑像の横顔から
僕は　目を離せなかった

丘の途中の　ベンチに座り
犬と一緒に　ぼんやりと
休日の　街並みを　見降ろしてた

誰かが　坂をのぼってくる　足音・・
突然　犬のルルが　
君の足元に　駆け寄り
円い目で　君を見上げた
君は　小さな笑みを浮かべて
ルルの頭をなぜ
僕に　恥ずかしそうに　会釈した

ほんの　偶然の手助けで
僕は　やっと　君と　
言葉を　かわした
それが　僕の 淡い恋の
始まりだった

僕は　君の名前を知る前から
君に　虜になって　しまってた

その想いは　秒単位で
膨らんで　小さな種は
発芽して　花をつけそう

僕の恋は　これから
何処へ　行くのかわからない

休みの日には
お気に入りの　坂のベンチにすわり
「うれしい待ちぼうけ」を　楽しんでいる
もちろん　キューピッド役のルルも一緒だ

（２０２２年の作品のリライトです）

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