有名企業に勤めているのに家なき子になった話~第5話~
波乱だらけだったプロモーションの仕事でしたが、
奇しくもそれが私達の結婚を促すきっかけとなりました。
「彼氏なのに」
「結婚していて旦那ならまだしも…」
仕事の条件をなんとかしようとして、
よく上司から言われた言葉です。
他の理由をでっちあげられたら良かったのですが、
本当はやりたかったというのが私の本音。
「やりたくない」なんてことは
嘘でも私は口にできず、
先輩や上司に相談する際は正直に
「彼氏がいやがっていて…」と話してしまっていました。
そうするとそのようなことを言われ
当然それは元夫の耳にも入っていました。
彼氏だと立場が弱い。
きっとそう思ったことでしょう。
結婚ということ自体に
あまり乗り気でなかった元夫も
その一件以来、
具体的に結婚に向けて動いていくこととなりました。
ダイヤの入った婚約指輪に
真っ赤なバラの花束。
プロポーズは、
本当に好きな人からだったら、
どんなシチュエーションでも嬉しいものだと思います。
私はその日、泣くことはできませんでした。
もちろん、嬉しくなかったわけではありません。
それでもどうしてか、感動できなかったのです。
なんとなく今日されるだろう…
そんな予感もありました。
もちろんその場でOKはしたのですが、
泣けなかった理由に気づくのは
もっとずっとずっと後のことです。