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映画館であった痴漢と変質者のはなし

前回の生理の話に続き、こういった話をオープンに書くのはやはり緊張するし、アップロードする時にドキドキしてしまうけれど、書かねばと思うので書きます。

生まれてから大学生時代まで、私は痴漢にも変質者にも出会いませんでした。同じ学校の子たちの会話では、痴漢の話などしているのをたまに聞いていて、私の周りでもよく起こっていました。私には起こらない出来事だろうなと思い過ごしていました。

大学卒業後、映画館で働き始め、その頃の私は映画学校にも通って監督として映画を作っていました。ちょうど、初めての監督作品を撮り終え、上映をし、すごくやり切って心にぽっかりと穴があいた感じで、次に撮る卒業制作の内容はどうしよう...とぐるぐると毎日考えていた時のこと。

映画館で働いていたある日、映画館の反対側のすぐ近くの建物にコピーをとるためにお昼すぎの明るい時間に歩いていました。建物に向かっていたら、中年のおじさんが反対から私の方向に向かって歩いてきました。「●●駅ってどっちですか?」と聞かれ、「電車に乗らないといけないので、すぐ近くの最寄りの駅はそこです」と言ったあと、「●●って分かりますか?」と聞かれ、私はその●●が聞き取れなくて「はい?」と聞き返したら、真面目な顔で「ペニスって分かりますか?」。

急なことでなんて反応すればいいのか分からなくて、「...分かんないです(笑)」と言い早足で後を去りました...。

その後コピーを取りながら、あれは一体なんだったんだ...?なんて返事したら良かったんだろう...無視すれば良かった...?など色々な事を考えました。見た目は普通にそこらへんにいる、普通の中年のおじさん。明るい時間、人が普通に通る道で堂々と言われ、初めての出来事に最初はびっくりしたけど周りには笑い話として話してました。

そしてまた同じ年のある時、友達と映画館で「愛のコリーダ」(大島渚監督)を観に行きました。初めての映画館で、ずっと観たかった映画、大好きな芹明香さんも出演しているし楽しみでした。

劇場に入って私たちは前方の真ん中ら辺の席に座りました。上映まで話しながら待っていると、上映ギリギリにスーツを着た中年の小太りの男性が私の右隣に座ってきました。なぜか私の隣の席以外も横の席は全部空いていたのに。

最初はなんで隣なんだ...と思ったけど、この人のこだわりの好きな席なのかなと思って特に気にせず、映画が始まりました。

上映始まって中盤か後半あたりから、なんだか右の太ももが熱い...もしかして...そう思って恐る恐る自分の太ももの熱くなっている部分を触ってみると、人の手が...

ああ、もうどうしよう。ここで私が大声を出したら映画を楽しみに観ているお客さんに嫌な思いをさせてしまう、迷惑をかけてしまう、友達にもどう伝えていいのかわからない、伝えた時にもし逃げられたらどうする?手を掴んだらすぐ逃げられてしまう?

もう心も頭もパニック。どうすれば良いのか分からなかったけど、勇気を持っておじさんの手を払い除けてみた。そうしたら、その後は触ってこなかったけど、でもなぜかずっとまだ隣に座っている...もう本当に映画は全然集中できなくて、ずっと心臓バクバクした状態でした。また触られたらどうしよう...いつこの人逃げ出すだろう...どうやって捕まえよう...そんな事をずっとずっと考えて、映画はエンドロールに。

客電がついて、右を見ると中年の男性は普通に帰ろうとしていました。もうここで逃したらダメだと思って、勇気を出して男性の腕をつかんだら、一瞬にして顔が青ざめ、私に一言言い放った言葉が「やめてください...」

それは私の台詞だよ...思いっきり腕を掴んでいたけど振り払われてしまい、走って中年の男性は逃げ、私も走って後を追いかけました。事態に気がついた劇場スタッフの方も追いかけてくださったのですが、逃げられてしまい...そのあとは恥ずかしさと悔しさで号泣してしまった。

急に飛び出して号泣している私に、友達もびっくりしていて「なんで言ってくれなかったの」と寄り添って言ってくれました。劇場の女性スタッフさんもケアしてくれて、色々と話をし、警察にも連絡を入れ家に帰りました。

家に着く間近に警察から電話があり、防犯カメラを見たけども顔が分からず特定するのも厳しく、現行犯じゃないと難しい...など話をされ、結局逮捕には繋がりませんでした。

その時の私の服装が膝丈くらいまでのスカート履いていたから、スカートが原因なのか、私が声を出さなそうな弱い抵抗しない大人しい女に見えたのか、たまたま目に入ったから隣に座ってきたのか。本当に分からないけど、どうして私がやられたんだろう、私の何かが原因なのかと、何度考えても悔しかったです。

私も映画館で働いていたから、普段来ているお客さんたちの事も、もしかしたらこの人も...と、つい疑ってみてしまいそうになったり、他の女性のお客さんも、もしかしたら何かされていないかと心配でした。

私の親には悲しむだろうし、この事は話さないでおこうと思っていたけど、やはり自分一人で抱え込んで秘密にしているのもだんだんしんどくなってしまい、ある日お母さんに言いました。「隣に座ってきた時に、移動しなかったあなたも悪い」

泣いたお母さんが言った一言。ああ、私が悪いんだ。

知人のお店に言って、痴漢された事を話した時も「それはもっちーも悪いよ」と。やっぱり、私が悪いんだ。

もちろん、隣に座ってきた時にすぐ移動すれば何もされなかったとも思う。注意すれば防げた。結局は私が悪いんだと思いました。だけど、なんで私も悪いと言われなきゃいけないんだろう...本当は、「辛かったね」とただ寄り添って欲しかっただけなのにな。そんなモヤモヤを抱えて過ごしていましたが、これを作品に昇華させようと思いました。

そうして卒業制作で撮った作品がこちらになります。(また宣伝...)https://www.youtube.com/watch?v=glFhMz6pJxY

【あらすじ】地味で彼氏もいない名美は、好きな本を読みながら古本屋でアルバイトをしている日々を送っている。
ある日の帰り道、変質者に出会った名美は初めての出来事に動揺をする。
そんな時友人の京子から、変質者を反撃する計画をもちかけられ、2人は実行しようとするが・・・。

前回おすすめした作品、Netflixの「セックス・エデュケーション」シーズン2の第7話は、本当に心に刺さるものでした。以下ネタバレになってしまうので、お気をつけください...!









第7話の前に、第3話でエイミーがバスで見知らぬ男性に、お気に入りのズボンに精液をかけられてしまう。友人のメイヴがその話を聞いた時、メイヴはすぐさま「通報しないと。襲われたのよ」と言うがエイミーは「寂しいか頭のおかしい人よ」と私は平気!気にしてない!という態度をとるが、警察に行き事情聴取を受ける。

事情聴取後、私は平気、大丈夫だと思っていたエイミーだったけど、本当は全然大丈夫じゃなかった。部屋で一人きりになった時、涙が溢れて止まらない。いつも乗っていたバスに乗れなくなり、ボーイフレンドにも触れられるのが怖い。

私も痴漢にあった映画館にあれ以来今もなんだか行く事ができてない。もう数年経っているし、誰かと一緒に行けば大丈夫かと思うけど、なかなかまだ行けていません。

そして、第7話では女子たちが今まで自分が被害にあった事を話すシーン。駅ですれ違いざまに胸を触られた事、セクハラ発言を受けた事、夜中に跡をつけられた事など。

みんなそれぞれ、怖い辛い体験をしていた。これが普通なのか、当たり前なのかと思ってしまわないように、笑い話にしないで、心を麻痺させないように気をつけないと、周りもきちんとそれは酷い事だよ、怖かったねと言ってあげられたら、どれだけ救われるだろうか。

そして、最後エイミーはメイヴ達と一緒にバスに乗る。癒えるのはとても時間がかかるけれど、周りにこうして痛みに寄り添ってくれる人がいたら、どれだけ心強いだろう。悪いのはあなたじゃない。

私も笑い話にしないで、自分に起こった出来事ときちんと向き合っていかないと行けないと思う。そして、近くで同じような思いをしている女性たちに手を差し伸べてあげたい。



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