【TAKAMORI】冥府に輝く太陽

ここは冥界、亡者集う魂の終着点
どこまでも静かではるか天井に現世の光が覗くのみ

冥界の門番が傅き述べる
「我が王の御耳に入れたいことが」
なにやら、嫌な予感がしたがそのまま続けさせる
「不死鳥が下りてまいりました」
またかと思った、頭が痛くなってくる
「クソ鳥…」
彼女がここへやってくるのはこれが初めてじゃない
定期的に死んではここへ来るそして生き返り去っていく
再開を憂いている暇はない、今にもここへやってくるだろういつものことだ
「カリ!久しぶり!」
来た、冥界の闇を晴らしてしまいそうなほどの明るい声
私は呼吸を整え尋ねる
「今回はなにをしにきたの」
彼女は見たことがないほどの笑顔を浮かべ
「カリに会いに来たの!」
とそう言った、
そんな簡単に冥界に来られたらたまったものじゃない、私の仕事に自信がなくなる…
「どうせまた生き返るんでしょ、ならその時まで好きに冥界を歩いてなさい」
私は適当にそういうと視線を外した、
がまだそこにいる
「なに、まだなんか用?」
ため息交じりにそう聞くと
彼女はまぶしいほどに目を輝かせ頬を赤らめながら
「あのね、せっかくだから一緒にお出かけしない…?」
何をバカなことをと思ったが、ここで断ったところで駄々をこね始めるのは想像に難くない、
「分かったわ、はぁ…いいわよそれくらいの時間ならあるから」

「えっ本当に!?」
喜んでいる、とても喜んでいる、ここが冥界でなければすべてを燃やし尽くすのではないかという昂揚が見える。
ここまで喜んでいる姿を見ると悪い気もしない…とそう思った。

手を取られて外まででてきた
「それでどこへ行く気、ここは私の庭のようなものだし行きたい場所があれば案内してあげてもいいわよ」

「カリと一緒ならどこでもいいよ!」
無邪気に笑って言う
「そう、なら少し歩きましょうか」
そう言うと彼女も少し遅れてついてきた
特に話すこともなく歩いていると、彼女が声をかけてきた
振り返ると何やらさっきより一段と顔が赤くなっている
「手、繋がない…?」
まさかそんなことを言い出すとは思わなかった…
「なんで私があなたと手なんかつながなきゃいけないのよ」

「ダメ…?」
彼女は瞳を潤ませて懇願してくる、このままでは今にも泣きだしてしまいそうだ
ため息をつき
「分かったわよ、ほら」
手を差し出す
「やったー!!」
今までの涙目が嘘だったかのようにころころ笑う
「まさかさっきのウソ泣きじゃないでしょうね」

「うーん、そんなことないよ!」
元気いっぱいに返してきた
「そう」
許可したものは後には引けない、手をつなぐくらい大したことない

そんなこんなで歩いていたら
今度は指を絡ませてきた
「な、なにしてんのよ!」

「いいでしょ…?」

「そんな可愛く言っても駄目なものは駄目!」

「えっ今可愛いって言った!?」

「いや、別にそういう意味で言った訳じゃ…」

「もっと素直になればいいのに…!」

彼女が来るといつもこんな調子だ、毎回彼女のペースに乗せられる
しかし、もうそんな時間も終わりらしい
「残念だなぁもう少しカリとお話ししていたかったのに」
心底悲しそうな顔をして彼女は言った
「どうせまた来るんでしょう」
私は言った
「まあね!だから、待ってて」
彼女のその言葉からは信頼が感じられた
「気にはとどめておくわ、急に来られると心臓に悪いから」
待てと言われても私の居場所はここしかない
「良かったぁ…!じゃあもう行くね!」

「ええ…」

名残惜しそうに笑いながら彼女は飛び去って行った、後に残るのはつないだ手のぬくもりと
果てしない静寂
「はぁ…」
私は一人残されため息をつき帰路に就く、城に戻ると従者がいつものように出迎える

玉座へ戻り頬杖をつきながら物思いにふける
いつも気まぐれに姿を現しては私の世界を乱して帰っていくクソ鳥
彼女が来てからだこんな感傷に似た思いを抱くようになったのは
胸の奥底をきつく締めあげられるようなこの違和感
痛いとも違う、悲しいとも違う

この感情に名前を付けるとしたらなんだろうか

END

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?