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(写真)るりが11歳の時に編んだシロツメクサのハートの冠。かわいいものをつくるのが上手でした。

(注)この投稿は自傷行為に関する表現を含みます。心理的に不安定な方、負担になる方はこれ以降、読まないでください。

兆しを告げる短歌

ある日、るりが詠んだこんな短歌に目が留まりました。

化粧品のテスターみたくカッターを覚束ない手で腕に刻むの

リストカット…?
ただ、寝ている時にチラッと腕を見ても傷は見当たりません。私は、るりが感傷的になって、傷ついた繊細な私を演じたいのかと思いました。当時友達に送ったLINEには、「まあ、リスカの痕も全くないし、本物の自殺願望がある人とはレベルが違うと思うけどね。」と書いていました。(いま思えば、私はなんて浅はかだったのでしょう…。)

ただ、抗うつ薬を飲み始めたのに、るりの鬱っぽさはどんどん悪くなる一方でした。ちょうど、世界で一番愛していた我が家の猫がこの世を去って1年が経とうとする頃でした。いま思えば、命日反応も鬱を加速させていたのでしょう。

自傷の告白


ある日、雑談の中でさらっと、るりが「自傷」という言葉を使いました。よく覚えていないのですが、友達の自傷行為か、一般論として自傷について触れたか、だったと思います。自分が自傷をしているという話ではありませんでしたが、私はその言葉が気になり、「ひょっとして…るりも自傷をしているの?」と聞きました。すると、「うん。」と即答しました。

まるで、私から聞いて、気づいてほしかったようでした。るりは自分のことを話すことが苦手で、意識的か無意識かわかりませんが、少し気になるようなヒントを出して、相手から質問させるように仕向けるのです。

心臓がバクバクしました。咄嗟に「腕を見せてもらってもいい?」と聞くと、また「うん。」と即答し、すぐに服から包帯に巻かれた片腕を出してくれました。まるで、気づいてほしかった、見てほしかったかのように。

包帯を巻いていたこともショックでしたが、それを外すとさらに息が止まりそうでした。想像以上の傷…。恐れ慄きながら、なんと言えばいいのかわからず、なんとか「…痛かったでしょう….。」と絞り出すと、るりはあえて軽い感じで「全然痛くないんだよ。私の周りにも何人もしている人いるし。これで気持ちがスッとしたら学校にも行けるんだから、これからも自傷を続けながら生活を続ければいいんだよ。」と言うのです。まるで自傷を救いと思っているかのようで、全く理解できませんでした。

何を言えばいいのかわからず、傷口の手当てを2人でして、「これからも一緒に手当させてね」と言うのが精一杯で、なんとか寝かせました。

私は一睡もできませんでした。

布団での会話

朝、起きたるりに布団の中で添い寝しながら、話しました。私がるりを大切に思っていること。寄り添いたいこと。なんでも話してほしいことを伝えました。

るりは、「1ヶ月ちょっと前から自傷をしていて、気持ちがモヤモヤしたりワーっと込み上げると、切ってしまう」、と。その前日は、私の外出中に不安に駆られ、頓服の抗不安薬を飲んだら愉快な気持ちになってしまい、友達に電話して「様子がおかしいよ」と言われるぐらい笑い転げたのに、電話を切った後、落ち込みだけ残っていて、ハイテンションなまま切ってしまったこと。そうしたらいつもより傷が深くなって初めて包帯を巻いたことを教えてくれました。

よく教えてくれたと思います。

「不安と戦って頑張っていたから切っちゃったんだね、ひとりで頑張っていたんだね」と言ったら、るりは泣いていました。

るりは自分のnoteを軽妙な感じで書いて、「自傷を知って母が泣き崩れた」とか、「母号泣事件」とか書いています。が、本当は自分が泣きたかったんじゃないかな…気持ちを押し込めていたからめったに泣けなくて、苦しかったのではないかな…。気がつかなくて、本当にごめんね、るり。

気持ちは短歌にのせて

その頃、るりが詠んだ短歌です。短歌は気持ちを表現し発散する手段となってくれたようでした。

かしゃかしゃと鳴る音のどうも愛おしいこと、軽いなにか ぼくの命も

正体のわからぬ悲哀を胸の中たまに取り出し撫でてやり戻す

泣きそうで泣けないあたしのバカな目がかなしみの肩代わりをしている

金星だ ところであなたのかなしみはあなたを殺しはしませんか


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