たくさんの解の中から最適解を見つける
そういえば暫く洋服を買っていない。と、ふと立ち寄ったユニクロで洋服を見ながら思った。
着ている黒いTシャツの首元はヨレヨレで、元々の色よりもだいぶ薄くなりグレーに近い色をしている。靴下もパンツも全てのゴムがとっくの昔にその寿命を迎えている。
一方、陳列されている洋服はどれもシワがなく(当たり前ですが)、私の身なりを考えると高級品に見えた。
「もういっそのこと、家にあるTシャツを全部捨てて、一気に買っちゃおうかな」
そんな考えが一瞬頭を過ったが、結局その日は何も買わず店を後にした。
服を買わなかった理由は明確で「買っても仕事に何も影響がないから」である。
自分でサービスを始めてから "サービスが上手くいくかどうか" が不安の種になり、何か行動を起こす時はいつも「それってビジネスに何か意味あるのか?」なんて考えてしまう。
そんな自分の購買行動を振り返えると、ヒトが「欲しい」と思うものと「買う」という行動を起こすまでの間に果てしない溝があるのだなぁと気付かされる。
「買う」ということは、身銭を切ると言う。身銭とは自分の所有物になったお金を示すと私は解釈している。
つまり、自分が一度所有した財産を手放すということ。行動経済学で言う保有効果が働くので、何かを買うという決断が一層しにくくなる。
また、買った後に期待に見合ったリターンがあるとも限らない。特に私はファッションセンスが全くないので、洋服を買うと言うのは非常にリスクの高い博打と同じようなものだ。
妻とまだ交際していた頃、デートの時に自分が一番気に入っていたオレンジ色のシャツを着て待ち合わせの場所に行ったら妻が失笑した。
「こんな服、薬をやっているような変なやつしか着ない」と言われた時に初めて自分のファッションセンスは皆無だということに気付かされたのだ。
それからというもの服は全て妻に選んでもらっている。だから例え同じ見た目の服であっても、自分一人で買うことが怖い。決断力が欠如してしまったのである。
結局、今ある服であと数年はいけるかな、なんて思ってヨレヨレの服をもっとくたびれさせるのである。
話を戻そう。
「欲しい」と「買う」の間を埋めるために必要なのは以下の3つの観点だと思う。
① 自分一人では解決できないこと
② 購入しても家計に大打撃を受けない金額
③ サービス利用後のメリットが具体的にイメージできるか
これは洋服だけではなく、全てのサービスに当てはまるのではないかなと思った。
ユニクロの服は全てリーズナブルなので②はクリアしている。①に関しても、私のレパートリーにない新品の洋服やカラーシャツなどが揃っている。
問題は③で私自身が洋服を買った時に具体的なメリットを感じることができないことにある。
その状態で仮に定員さんが「お似合いですよ!」なんて言っても、自分が納得できていないから購入まで至らないのである。
広告を見ると、どれもPASONAの法則に沿って合理的にメリットを提示してくる。しかし恐らく問題はそこではないのだ。頭ではそのメリットを理解しているが、 "なんか腑に落ちない" のである。
この状態になったら、何を言われても「都合のいいことばっかり言ってるな!」と不信感が湧いてくる。セールスの言葉なのに逆効果になる可能性がある。
だからこの時に必要なのは、他者からの誘導ではなく、自分の中で腹落ちできる状態になる熟成の時間が必要なのだと思う。
ふと自分のサービスについて考えてみた。
インターネットで検索すると、たくさんの "最適解と思われる" 勉強法の情報が出てくる。どれも個人の体験に紐付き、それなりに説得力がある。
私は英語学習に関してある程度の知識を持っているから、その中からベストを見つけることができる。
しかし、これから英語を勉強しようと思っている人にとっては、ファッションセンスゼロの私が洋服を上から下まで全てコーディネートするような難易度なのかもしれない。
たくさんの解の中から最適解を見つける。または、その人の現状に合わせた最適解を作り出す。
自分が当たり前にやっていることが、他の人にとっては価値のあることなのかもしれない。そんなことを思った。
今度、妻に一緒にユニクロに行って服を選んでもらうように頼もうと思った。