【YJCapital特別イベント記録】音声プラットホーム上場企業ライチFMのCEOが語るUGC音声プラットホームの勝ち筋
YJ Capitalの李路成でございます。YJ Capitalは海外のスタートアップ&ユニコーンと交流する場を作るために、一連のイベントを企画しておりまして、音声というテーマにおいてナスダックに上場している唯一中国音声プラットホームライチFMとコラボを組ませていただきました。以降のイベントの告知はこちらへフォローお願いいたします。@LukeLee
そしてのゲストはライチFMのCEO赖亦龙Marcoさんです。イベントに触れていましたが、Marcoさんがサービスのロゴもキャラクターも日本のデザイナーにお願いするほど日本大好きな方です。
イベントにYJCapitalのCOO都虎吉より質問を色々とぶつけてたくさん興味深い創業初期の話が転がっていました。このイベント報告書を通じてお話しした内容を書き起こして皆さんにお届けしまして、少しでもお役に立てれればと思います。(*読みやすいように少し内容を調整しております。)
サマリ
大事なポイントを先んじてサマリをします。
①ライチFMの創業仮説:
Marcoさん自身ずーと音声市場に興味があるという背景があり、スマホが流行り出した頃に、スマホで音楽が聞けるのでは、仮説を持っていた。そこでアメリカ市場を調査して3つのファクトがわかった。
・ポッドキャストのユーザー数が膨大
・アマゾンのポッドキャストの収益規模が多い
・Spotifyの取り組みが斬新的だ
そこから中国市場に持っていくとビジネスが拡大できるかもしれないと思った。まずはいきなりアプリを作るのではなく、仮説の検証はwechat公式アカウントで行ってみた。wechatで公式アカウントを通じて音声コンテンツを配信してみて、特にお子持ちの親から支持を得て、スマホと音楽視聴の組み合わせのニーズは確かあると確信できた。
②ライチFMの成長戦略:
・一つ目、お子持ち親層など特定のセグメントのニーズにソリューションを提供した
・二つ目、UGCプラットホームとSNSの相性を見極めて、ユーザー同士がインタラクティブに交流できる機能の開発をした
・三つ目、マスのニーズを見直し、音声チャネルのフォロー&配信など、より拡大したユーザー価値を提供する
このような繰り返しで、セグメントごとにニーズを解決するソリューションを発明しつつ、次々と新しいセグメントへ攻略していく
③ライチFMのマネタイズ戦略:
今のビジネスモデルは投げ銭がメインだが、創業当時は全くそれをしようとしていたなかった。まず、リアルな商品を作ってそれをお届けして、それを課金するようなことをやってた。例えば、CD、クリエーターの周辺商品など。しかし会社のオペレーションコストが高いことと気付き、新しいモデルを模索し続けていた。そしてAKB48の劇場、握手会などの商品化からアイディアをもらい、ユーザーに販売するものをバーチャルにするのがいいのではと仮説を持ち始めた。するとアイドルが大好きな若者たちから反響を得て大ヒットした。そこから投げ銭を主とするビジネスモデルを確定した。
イベントのセッション①:ライチFMの成長ストーリー
(*以下はイベントの記録)
李路成(以下李):本日のゲストはナスダックに上場している、唯一の中国系音声プラットフォーム、ライチfmのCEO、Marcoさん。ライチfmはmauが5590万人いる中国最大のugc音声プラットフォームだ。
ライチfmがどのようにして中国最大の音声プラットフォームに成長したのか、その舞台裏を語ってもらう。
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赖亦龙Marco(以下Marco):ライチfmは10年前からインターネットを通じて、日本のGREEやDENAと交流があった。会社のロゴは、くまモンのデザイナーである水野学さんがデザインした。ロゴとともに、会社のキャラも水野さんにデザインを依頼した。TEKIというキャラだ。
では、ライチfmとはどのような会社か。そのビジョンは、音声プラットフォームを通じて人々をつなげることで、従来のポッドキャストとは違い、独自のプラットフォームを築いていくことを掲げている。
その歴史を見てみよう。ライチfmは、今年(2020年)1月にナスダック上場。今年で7周年を迎える。7周年の記念に公園ランを企画しているという。初のアプリは2013年10月にリリース。その時点で、すでにアメリカの先進的なビジネスモデルを称える賞を受賞していた。世界初の個人がポッドキャストチャンネルを開けるようなサービスを提供していた。
そのサービスのアイデアは自らのルーツと関係ある。もともと、子供の頃からブログなど自分でコンテンツを発信することが好きだった。あるといいなと思った音声サービスを提供することに着手した。その後、個人がプラットフォームで音声番組を開設するサービスの特許を取得した。
ライチfmのプラットフォームでは、簡単にノイズ削減や美声加工などができる。初代アプリをリリース後、すぐに何十万ものダウンロードがあった。理由は、事前の仕込みだ。具体的には、wechatで公式アカウントを開設。そこでサービスの人気を集めた。公式アカウントで音声コンテを配信することで、サービスの需要を検証した。結果、初期ユーザーの獲得に成功し、数ヶ月で、公式アカウントのフォロワーが100万人を超えた。アプリでのユーザーはそのフォロワーが流入した格好となった。興味深いことにユーザー層を見ると、初期ユーザーには子持ちのお母さんが多かった。お母さんたちが子供に物語を語る際、ライチfmで録音するという使い方だ。実は、これは予想外の使い方だったが、幅広いユーザーの獲得につながった。また、一般人だけでなく、ママタレントもサービスを利用したことで、想像以上の宣伝効果があった。そして、初年度にはユーザー数が1000万を超えるという結果となった。
翌年、ライチfmは新たな機能を2つ追加した。1つ目は、コミュニティ機能だ。この導入により、若年層ユーザーが増えた。また、若年層の獲得には、アイドルを起用した番組も寄与した。2つ目の新機能は、フィード型のレコメンデーションだ。これらの新機能投入により、ユーザー数は5000万を突破した。
3年目には、音声チャンネルを開発。音声チャンネルでは、生配信や録音放送も利用可能だ。その後、ユーザーは1億を超えた。
また、マネタイズの開発も始めた。マネタイズのアイデアはakb48からインスパイアを受けた。マルコ氏が以前、akbの劇場に行ったところ、アイドルのために握手券やグッズ購入などをするファンを目撃した。そこから、バーチャルギフトの開発に着手。結果的に、マネタイズで5000万ドルの売り上げを確保した。ユーザー数も順調に成長し、2億人規模のユーザーを抱えるまでになった。
ライチfmのユーザーはプラットフォームで何ができるのか。例えば、音声を聞く、探す、シェアする、お気に入りリストを作るなどだ。また、ユーザー、クリエイター同士の交流なども可能である。サービス実現のために、人工知能(AI)の開発でたくさんの機能をエネイブルした。コンテンツのディストリビューションやユーザーのマッチングなどにAI技術を活用している。
プラットフォームでは、音声コンテンツの作成だけでなく、ファンとの交流も容易にできる。
プラットフォームが実現できるのは、知らない人ともインタラクティブに楽しめるエンタメランド。音声コンテンツの貯蓄なども可能だ。
実績について。ライチfmは中国最大のugc音声プラットフォームである。音声でインタラクティブに交流できるプラットフォームだ。音声プラットフォームがたくさんあるが、ライチfmは市場2位のシェアを確保している。中国ネット企業100位にもランクインしている。
他社と比較すると、ライチfmの財産はugcのコンテンツだ。競合企業は音声コンテンツを外注することもあるが、ライチfmはユーザーのオリジナルコンテンツ一筋だ。独自のレコメンデーションアルゴリズムも使用している。ビジネスモデルは、ユーザーの投げ銭がメインとなる。若年層ユーザーが多く、彼らにとって投げ銭は抵抗の少ないことだ。それを支えに、ライチfmのビジネスが拡大している。クリエイターへのサポートもライチfmの強みだ。クリエイターに対して、saasを提供するなど、ストレスなく音声配信やコンテンツ作成ができる。同社のシステムは、ユーザーがゲーム感覚でポイントがもらえたり、配信回数でリスナーが何人集まったかなどでインセンティブがついたりする仕組みだ。配信内容や視聴回数などの分析機能も提供している。より良いコンテンツ作成をサポートする仕組みがある。
今後の方針、方向性について。現状は、売り上げはバーチャルギフトで、2−3億ドルの売り上げがある。今後は、ビジネスモデルの拡大を目指す。メンバーシップ、vip的なシステムでユーザーの課金を促す。メンバーシップは、自分が好きなタレントのメンバーシップに加入というシステムである。vipとしてクリエイターへの貢献度が上がると、ファンとしての称号も変わる。次に考えているビジネスモデルは、有料コンテンツの導入だ。有料コンテンツの提供方法として、一つのコンテンツを小分けで出すことを検討している。1、2個目を無料で、その続きを小額課金で提供するモデルを検討中だ。一般的な広告収入のモデルも導入検討中だ。
中国の音声市場について。音声サービスの普及率はまだ低く、45.5%ぐらいに止まっている。ただ、ショートビデオなどでは80%をこえる普及率となっている。tiktokなどの流行で、普及率の底上げを狙えるかもしれない。また、スマートスピーカーは中国で急成長している。そういったスマートスピーカーに、ライチfmのプリインストールするなどの方法で音声サービスが普及していくと、市場シェアを獲得できるのではないだろうか。
ユーザー属性について。女性比率が高い。ユーザーの58.4%は女性だ。90%以上のユーザーは90後となる。女性ユーザーの音声コンテへの需要は高いとデータは示しているので、そこを狙うストーリーを描いている。若年層のライフタイムバリューを向上する試みをしている。中国市場の成長率は高いと見込んでおり、2023年には690億元規模の市場になると予想されている。
今後の戦略について。核となるのはAIの技術だ。この技術を活用することでクリエイターをエネイブルさせ、急速に成長できるサービスにしたい。AIがこれから音声市場で何ができるか試行錯誤を重ねていき、今後もAIに注目していくつもりだ。
イベントのセッション②:Q&A
都虎吉(以下都):1年目、2年目のサービスは何?
Marco:3年目以前は、音声録音をして、プラットフォームに発信をすることのみだった。ポータルサイトのイメージである。また、自ら好きなコンテを探すことも可能だった。要は、自分で録音して流すだけのサービスだった。
都:3年目にプロダクトの方向性変化はなぜ?きっかけは?
Marco:1、2年目で急成長した後、コンテンツの膨大さに気付いた。簡単にCategory別に探すだけでは物足りないと。そして、レコメンデーション機能が必要だと気づいた。そこで新しい機能を追加した。喩えを言うとtiktokの音声版のような発想。
都:創業当時の話を聞きたい。当時音声サービス少なかった。どのような思いで始めた?
Marco:自分が音声、ラジオ、音楽が好きな人間であることから、この分野をずっと見てきた。スマホで音楽が聞けるのでは、と感じた。そこでアメリカ市場を調査。すると、3つのファクトが見えた。ポッドキャストのユーザー数、アマゾンのポッドキャストの収益規模、Spotifyの斬新的な取り組みだ。そこから中国市場でも通用するのではと思った。まずはテストをしてみた。wechat公式アカウントだ。スマホと音楽視聴の組み合わせはいいとテストから気づいた。
都:コミュニティ機能でユーザー数増。なげ銭の機能は早期から検討していた?当初どのようなマネタイズを検討していた?
Marco:コミュニティ機能の実装にからくりあり。まず、アプリのver1.0リリース後にユーザーからの大量のコメントがあることに気づく。そこでコミュニティ機能を実装。なげ銭は当初思いついてなかった。リアルなものを作ってそれをお届けして、それを課金するようなことをやってた。cdなどをユーザーに売っていたが、会社のオペレーションコストが高い。ユーザーに販売するものをバーチャルにするのがいいのではと仮説を持ち始めた。すると大ヒットした。音声のバーチャルギフト思いついたとき、ニコニコ動画と商談してみた。ビジネスモデルは紆余曲折をへて、現在のモデルになった。
都:wechatでのマーケティングは何をした?
Marco:2つのことをした。その前に、一点。スマホ上で音声サブスクのサービスがアップル以外、当時はなかった。そこで、wechatのプラットフォームではやる余地があるのではと思った。まずしたことは、wechatアカウントの選定だ。当時会社が公式アカウントで何か発信するのはあまりなかった。とても斬新だった。大事なのは、空白を見極めること。次に、ユーザーが公式アカウントの会話欄に「1」を入力すると、アカウントから何かしらのコンテンツを返信するという取り組みをした。すると、レコメンデーションと近いようなことを実現した。ユーザーにとって最適なものを届ける取り組みを当時から始めていた。
Marco:サービスを作り込むよりかは、市場にどれくらいのニーズがあるかを一歩ずつ検証していくことが大事だ。どの時代でも急成長するプラットフォームはある。今ではtiktokなどだ。そこで自分のサービスを検証していくという風に。競合がいないところで、最小限のコストで検証していくことが大事だ。
都:コミュニティ機能とは?
Marco:一つの音声番組のチャット機能で交流できるといったところ。
都:海外進出について
Marco:ライチは海外展開の戦略考えている。グローバルに市場をみないといけない。まずは、アメリカ、東南アジアをみている。その後、日本に進出するか検討する。
都:日本のコンテンツはライチにある?
Marco:ライチfmのところでは公式に日本コンテンツを配信していない。資格や政府の審査が必要になるためだ。政策等の変更を見て取り組もうと思う。声優という職業は中国で有名なので、ポテンシャルはある。実は、初音ミクのオフラインイベント企画していたが、コロナでなくなった。残念だ。
都:若者がアイドル好きだからアイドル番組作った。運営が頼んで番組制作した?
Marco:若者ユーザーがアイドルのために番組を作った。運営からインフルエンサーに頼んで作ってもらったわけではない。
都:音声普及率が動画やゲームのように高くなるにはどうすればいい?
Marco:なるべく音声を使うシーンを増やすことが重要。すでにある製品、airpodsやスマートスピーカー、電気自動車などにプレインストールしたシステムなどで簡単に聞けるポッドキャストリストを作成するとか。そうすることでペネトレーションレイトをあげることは可能ではないだろうか。
都:海外進出でなぜ東南アジアが二番目?東南アジア市場をどう見ている?
Marco:海外進出の優先順位。一番は東南アジア。二番目は中東。東アジアにフォーカスする理由:1. 人口が中国の半分くらい、規模が大きい。2. ユーザーが極めて若い。3. インターネットユーザーの成長が早い。4. オンラインで決済する手段が発達している。要は、中国と似ている部分があるのでポテンシャルを見込んでいる。
都:日本の起業家にアドバイスを
Marco:日本の市場にポテンシャルはある。音声事業に取り組んだ方がいいと思う。日本の文化、声優へのリスペクトなどは音声のビジネス価値が高いことの現れだ。また、日本のインターネットサービスにおいて、新しいサービスを提供するところが少ない。appストアを研究したことがあるが、ランキングに入っているアプリは10年ほど前と変わっていない。どんどん新しいことに取り組めばいいと考えている。
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以上がイベントの記録でした。今後のイベントの参加についてぜひフォローしてください。
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