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Asu Capital Partners2024年活動の振り返り
みなさんお久しぶりです。Asu Capital Partners の Luke です。
GP 1年目、投資家として5年目の私たちの目標は、「Japan to Global」を実現することです。そんな中で設立したAsu Capital Partnersは、国内外の投資家様(LP)のご支援を受け、2024年に投資活動を開始しました。今年の年末までにはすでに数多くの会社にサポートをさせていただいてます。
12月13日に年一のイベント「Asu Innovators Summit 2024」を実施しました。100人を超えるゲストの皆さんを招待させていただき、多くの投資家や起業家の方にご参加いただきました。イベントの最後に自分がクロージングスピーチで話した内容はたくさんの参加者の方から”とても共感した”と言っていただき、今回のnoteで自分が感じた課題感に触れながら、年末のまとめとして共有したいと思っています。
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色々調べた中で、2024年上半期、スタートアップのシードラウンド1件あたりの調達金額は2021年の1.7倍になっています。シード調達件数の伸びもやや鈍化しているのに対して、ファンドの設立数は依然として高い水準を保っています。つまり、アーリーステージにおいて資金が人(起業家)よりも多い状況が続いているのに加え、そういった資金が一部の会社に集中している可能性があると考えます。実際にnewmo、ジョーシス、PeopleXなどシリアルアントプレナーを中心とする大型の調達はかなり増えています。二周目のチャレンジが増えていることはエコシステムの成熟指標として、日本のスタートアップエコシステムが次のステージに突入したと考えます。
一方で、起業家予備軍は増えているのかという疑問も残ります。エコシステムが成長している中で、資金が過度に集中すると、成長のための成長が優先されたり、マーケットの期待が未来数年分の成長ポテンシャルを取ってしまったり、ファンダメンタルなグロースができずに局地的な最適化になってしまうかもしれないと思います。
数ヶ月前にツイートしたように、今の日本はかつてないほど投資家に注目されているマーケットになっています。私たち、Asu Capital Partnersはシードファンドでありながら、海外のシードファンドからメガファンドまでたくさんお付き合いして、ポジティブなコメントから若干まだ引いた目線で日本を見ている投資家などとたくさんお話しをさせていただきました。そこで、得られた結論は海外の投資家たちが日本に対する期待はまだ「なんかあるかな?」と入口的な位置に興味を持っていて、本格的にスタートアップ投資にコンバートするのに、真の魅力的な成長を見せるスタートアップがいないといけない状況です。
昨年から150社ほどの海外投資家とディスカッションさせていただいた中で、「日本に本当に良い起業人材がいるのか?」という内容が一番多く聞かれた質問でした。もちろん起業家層は定性的に増えているものの、定量レベルではまだまだこれからだと感じています。少子高齢化にまつわる社会課題、環境問題、社会インフラのアップデート様々な課題に関して、新しい起業人材による新しい観点の徹底的な効率化・新しい価値創造が必要だと考えます。つまり、人を増やそう、という一言です。
ただOpenAI, Anthropicなど、世界を代表するテック企業が1兆円調達して、アメリカエンジニア年収1億円みたいなニュースを見慣れると、どう頑張っても無理だろう、と尻込みするような失望感・脱力感もあるのではないでしょうか。しかし、必ずいつの時代でも機会があり、前述した日本だからこそできること、違うアプローチをとってみると前人未踏の価値を生み出せる可能性だってまだまだあります。今年多くのイベントを主催して印象的だったのは、10月に著名な外国投資家を招待して日本のスタートアップを数社紹介しところ、「日本のスタートアップはアーリーステージにも関わらずいつも進んだ考え方を持っていて、具体的なプランまで練ってとても優秀ですね」というコメントをいただきました。私がいつも思うに、日本の起業家は「ちゃんとやる」意思がある故に「入念の準備をした上で全ての可能性を尽くす」というアプローチがとても得意だと感じます。そういった意味でも「これはやる!理由は後で」と後付けするようなアメリカ的な起業方法よりも、はるかに優秀に見えるものです。
私たちはファンドの主軸である「Japan to Global」を目標に、グローバルマインドセットを持つ方とたくさん出会えました。いくつか面白い発見があったのでみなさんにシェアしたいと思います:
一つは「米国学部課程+日本修士課程」の「アジアン」学生が増えていること、弊社のハーバード大学学部卒・東大修士在学中のインターンはまさに一つの事例だと思います;
もう一つは、英語で理系修士をとっている学生たちは起業に対して高い好奇心を持っていて起業のプログラムがあるとすぐに応募すること。これは早稲田大学の教授にインタビューする中で分かった事実でした;
最後に、外国籍エンジニアの”リタイヤ”の聖地と言われる日本でも、30歳前後の若さで、休むだけではすぐに飽きが来てしまい、何か興したい気持ちに押され、積極的に機会を探っている人がかなりいることです。特にこういった外国人エンジニアのケイパに基づいては難しい開発・大規模な開発を簡単にこなすことができますので、起業チームに巻き込むか、起業してもらうか、どちらもありうると思います。
日本のスタートアップエコシステムを加速させていくために、新しい起業人材を呼び寄せることは必要不可欠です。「新しい人材」を「新しい視点」で「凄まじい成長」を見出すことは当たり前のように聞こえることだが、1年間の活動を通じてやはりやらないといけないと感じているのです。
最後にちょっと寄り道の話をさせてください。今年支援先と切磋琢磨して、自分自身が投資家としての成長やGPとしての成長、さらに感じたこともぜひシェアできればと思います。
ファンドを立ち上げてから感慨無量というのはまず言いたい感想です。なぜかというと、もともと「想像」だけにあった世界観を自分の手で・努力でちょっとずつ前進して「創造」させた。ちょっとリスク取りすぎじゃないと言われて、出張で一番安いホテルで8人同じ部屋のところで泊まったり、何考えてんの無謀すぎじゃないかと白目で見られたり、今思うと無傷にここまで来たと少し不思議に思うところがありますが、元から外圧に鈍感な人なのでそういう時間でも少しは楽しんでいたのかなと感じています。
またそれ以外に、本当に嬉しいと感じる瞬間は二つ:
一つは、支援している会社とディスカッションしている中、支援先のファウンダーは徐々に自分と経営課題の議論が重ね、お互いの信頼関係が築かれた上でそのファウンダー自身の方向性を見つけた瞬間;
もう一つは、ベンチャー投資というものすごい長いフィードバックサイクルで自分が本当に成長しているかは実感しづらい中、尊敬する先輩投資家からの「自分のエネルギーを信じてください、努力はいつかつながります」と鼓舞された瞬間。
中国に「但行好事、莫问前程」という諺があり、訳すと「見返りを望まず善いことをしなさい」という意味になります。ベンチャーキャピタルはもちろんのこと、リターンが問われる仕事にはなりますが、リターンだけならばやはりもっと稼げる仕事っていっぱいあるんです。資金をレバレッジかけてからこそ作れるインパクトはあると思うし、これから本当に世の中を変えるイノベーションは周りから生まれると強く信じています。一人一人の出会いを大事にして、いつかは何かと繋がると思います。それが自分のエネルギーの源であり、自分がベンチャーキャピタルを立ち上げた理由でもあります。
2024年、たくさんの出会いやチャレンジをさせていただき、本当にありがとうございました!来年もさらにグローバル視点を持つ日本のチームを支援し、独自の技術や能力を持つ企業の成長をサポートさせていただきたいと思います。皆様からも引き続きご支援いただきたいのですが、皆様の活動にもお役に立てればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
(起業家の方、Japan to Globalにご興味あればぜひご連絡ください!)