10月は最も運勢が悪いらしい。
2021.10.25
一年の中で10月がやけに目につくのは、中学生の頃に家族がハマっていた占いの本の影響だろう。生年月日から調べるやり方で、わたしは土星人だとわかった、真面目、頑固、潔癖、芸術を好み、自由を求める土星人の性格の説明はぐうの音も出ないほど納得した、そして本を読み進めているうちに土星人は9月、10月、11月が運気が停滞しやすく、中でも10月は最も運勢が悪いらしいのだと知った。たかが占い、と思えないのが真面目なわたしの性格で、けれど確かに10月は面倒で厄介な出来事が多数起こったことで、さらにその信憑性を高めてしまったのだった。
試しにいくつか書き出してみれば、高校でも大学でも吹奏楽をしていた頃、この時期はだいたい学祭のための準備で忙しく、おまけに気温も下がり始めるのでよく体調を崩していた、社会人になって経理を担当していた頃も、10月は中間決算の時期で何かと神経を尖らせなければならず、2年間10月は繁忙期だった。そこから解放された3年目の10月、ニューヨーク旅を計画していたら、その一ヶ月前に突然衆議院が解散し10月に総選挙が決まったので泣く泣く旅行はキャンセル、おまけに選挙当日に台風がやってきて現場はてんやわんやの大混乱、その2年後にようやく念願かなってニューヨークに向かうも、そのタイミングで月の巡りがやってきて現地のドラックストアに駆け込み、腹痛にひとりホテルで寂しくぽろぽろと泣いていたり、あぁ、書いても書いても尽きない。
そんな感じで今年も10月がやってきた、どうせ大変だろうと思っていたら結構大変だった、1週目の週末は宣言が明けたので久しぶりに美術館やらカフェやら色々遊びに行ったら次の日の平日、体はぐったりで仕事が手につかず失敗ばかり。2週目の週末はコロナの2回目に打ったワクチンの副作用でほとんど体は動かず、3週目は職場のひととすき焼きを延長した納涼床で食べていたら雨に降られてしまい、そして先日の4週目は初めて参加したサバゲーでそこそこガードしていたにもかかわらず家に帰って服を脱いだら足にBB弾で撃たれたあざがいくつも出来上がっていた。そしてシナリオはまだ一枚も書けていない。
でも果たしてそれらは運勢が悪いから起こることなのだろうか。
コロナのこともあってずーっと家に引きこもっていた人が急に遊び出して疲れるのは至極当たり前のことで、反省と同時に自己管理せねばと気を引き締められた。ワクチンとはいえ体調が悪く、帰ることを遠慮していたわたしを母と妹が車で迎えにきて実家で養生させてもらったことは一生忘れられない出来事になった。納涼床で雨に降られることなんて夏の間はしょっちゅうあることでむしろ10月まで延期された納涼床でまだ寒くもないいい環境でご馳走を食べられたのは貴重な機会だった。撃たれて傷ができても「またやってみたいな」と思えるものに出会えたのはこの先の人生でも結構な幸せなことなんじゃないだろうか。
そもそも運勢が悪いってなんだろう。
「何にもうまくいかない」と布団の中でメソメソしている時は大抵何もしていない暇な時に生まれる不安だし、「周りのひととうまくいかない」と愚痴りそうな時は自分の方が凝り固まった価値観でしかものをみていないから思う感情だし、そういう時は好きな人といてもその人の悪いところばかりをみて勝手に落ち込んでいたりする自分が全面に出ている。本当に阿呆だ。でもその阿呆さを、最近になってようやくこうして言葉にできるようになれた、これはいまのわたしにとって大きな一歩なのである。たぶん来年の10月もこんなふうに泣いたり落ち込んだり傷だらけになったりして、また似たような文章を書くと思うけれど、「何もなくて暇やったよりマシか」と少しは心の器を大きくして笑えるようになっているかもしれない。そんな自分になっていたいと思う。
たぶんその占いを知ってから、今はもうすぐ干支をぐるっと一周した頃だろう、ようやくわたしは「10月は最も運勢が悪いらしい」の呪縛から自分を解放できるようになったらしい。
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