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聖地には近づかない

アニメ系ではなく神社仏閣系の話だが、
聖地巡礼をしたいと相談を受け、なんだかなーとなっている。
聖地を巡ってパワーをもらうとか、そういう感覚がワシにはさっぱりと分からんのだ。
旅行雑誌には溢れかえってるけど。

ワシらは何を拝んできたのかということだが、古代の日本では、神々は人の目には見えないと考えられてきた。
姿は見えない。
特定の山や滝や巨石のなかにひそんでいるので、そういう場所を聖地として拝んでいた。
琉球や八重山に行くと、ここが?と言いたくなるような、なにもない空き地が御嶽(うたき)であり、聖地である場合が多い。コミュニティの外の人間には絶対に分からないような場所だが、外の人間には分かってもらう必要もないのだろう。
大神神社は、拝殿の向こうには何もなくて、背後の三輪山を拝むようになっている。山そのものがご神体で、一木一草に至るまで神宿るものとされている。
そんな山だからもともとは禁足地だったけれども、熱心な人のために、今では登拝のための入山が許されており、ワシも登ったことがあるのでこう言ってはなんだが、入山なんてさせなくてもいいじゃないかとも、思う。
聖地には近づけない、神さんは姿を見せない。
それくらいでいいと思う。

箸墓古墳の被葬者は、第7代孝霊天皇の皇女である倭迹迹日百襲姫命(やまとととひももそひめ)とされている。
倭迹迹日百襲姫命とは、三輪山の神である大物主神の妻だ。
箸墓古墳にはこんな伝説がある。
三輪山の神は姫の家に夜のみ通ってくるので、姫は夫の顔を見たことがない。そこで姫が、「夫のあなたの顔が見たい。今夜こそあなたの顔を見せてほしい」と願うと、神は、「そりゃそうだ。ならば明日、あなたの櫛箱の中に入っていよう。けれども絶対に驚いてはいけないよ」と念押しをした。
翌朝、姫が櫛箱を開けると、そこに入っていたのはヘビで、姫は思わずヒッと悲鳴を上げてしまった。
神は、「あれほど驚くなと言ったのに」と言い、三輪山に帰ってしまった。
神に去られた姫は箸でホトを突いて、自害してしまった。
という話。

鶴の恩返しだってそうだが、つまり、見てはならぬとされたものは見てはならんし、驚くくらいなら見ないほうがいいし、近づかないほうがいい場所には近づかないほうがいい。
今現在だって、ワシらは、神社の拝殿の奥を首を伸ばして覗いたりはしないし、お守りの袋を開けて中身をたしかめたりはしない。
目がつぶれるし、バチが当たるから。

聖地もおんなじやと思うのだけど。
パワーがもらえる?
いやいや、バチが当たってよからぬこと、祟りがあるんとちゃうか?と、ワシは思っている。

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