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伊勢太神楽のこと
「旅するカミサマ、迎える人々」@大阪大学中之島芸術センターを見にいく。
もう会期末ギリギリ。少し前の実演は見に行けなかった。
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獅子舞として親しまれてきた伊勢大神楽は、元を辿れは伊勢神宮のお使いだ。発祥の地は三重県桑名市の西の丘陵にある太夫町の増田神社。
今から約600年前のお伊勢参りが盛んな頃、ここを本拠にして、伊勢神宮に参拝できなかった人たちに伊勢神宮のお札を持って1年に一度、西日本の各地をまわったのが、そのはじまり。
日本の観光の最初とまで言われる伊勢参拝も、かつては「伊勢神宮参拝は一生に一度の夢」と呼ばれたほどの命懸けの参拝。しかも、伊勢神宮へ参拝できる人はほんの一握りで、ほとんどの人々にとっては夢のまた夢だった。
そんな人たちのために、伊勢神宮の神札を持った伊勢大神楽の一行が地方へ分散し、一軒一軒の家を門付けして無病息災、家内安全などのお祓いをするのが、その任務だった。
ワシが伊勢大神楽を知ったのは、万博の国立民族学博物館でのいつかの特別展でのこと。映像で見たんよね。
それ以前にも名著の誉高い小沢昭一の『日本の放浪芸』でも知ってはいたのだけれども、みんぱくでビジュアルを初めて目にして、グッと身近になり、これはナマで見たい!と思い、年末に桑名の増田神社へ総舞を見にいったのが、2021年の暮れのこと。
以来、何度か、関西各地で彼らの芸を目にしてきた。
ワシはどーも、旅すること、ロマの楽団やサーカス一座やテキ屋のような、旅をしている人たちに対する憧れが常にある。
ムラには入れず、ムラの一員となるのではなく自分たちで独自の小さくも強固なコミュニティを築くというスタイルに対する憧れが、僕にはあるんだと思う。
そんな人たちが生業に選んだのが芸能で、だから、ロマの音楽や獅子舞の門付けや伊勢大神楽やサーカス一座は、ワシのなかでは一直線で繋がっているのだ。
中之島の展示はおもしろかった。
冒頭の、ニセモノとの攻防戦がまずおもしろかった。
神楽を舞い、神札を配って、祝儀をいただいて日々の糧とするわけだが、ちゃっかりニセモノが出現するのだ。偽札をつくり、勝手に舞い、祝儀をもらう。天神祭だって、いろんな講が店々を巡って手打ちを打って祝儀をもらい、夜の飲み代とするが、稀にニセモノが登場する。いずこもおなじであ。
これまで何度も演舞で観てきたはずの楽器の解説もよかった。
伊勢大神楽は歩き旅に特化しているため、締め太鼓などの演奏法は独特だ。片手で太鼓を持ち、バイ(バチ)は両手に1本ずつ持ち、歩きながら太鼓を叩く。太鼓を置いてすぐさま次の仕事ができるよう、機動性が重視されているのだ。
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笛は神楽師の手づくりだ。
毎年八月末に瀬戸内海の塩鮑諸島の本島を巡る際に、そこでメダケを切って、材料とする。そこから楽器にするまでには、無論、数多くのステップを踏むのだが、旅をしながら材料を調達し、道具づくりをするところが大神楽らしい。
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初穂料の金額を現場で仲間に知らせる際には、半紙の先端を切ったり折ったりしたものを玄関先にかけておくことで金額を知らせる符牒とする。初穂料の金額によって舞うものが変わるからだ。といって、金額を口にすることで家の人に失礼を働くことのないようにとの配慮だ。
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そういった旅芸人ならではの細かなハックがたくさん展示されていて、とても興味深かった。
コンパクトに収納された「総舞」での長持ちには、なにがどう収納されているのか。そんな解説もあった。
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「総舞」とは、地域の神社や寺などでおこなわれる獅子舞と放下芸の奉納演舞を指す。かつては男女の見合いの場でもある、未婚の女性は晴れ着で着飾って見にいったそうだ。どこも祭りはおんなじだ。
総舞の演目には「八舞八曲」がある。
鈴の舞・四方の舞・跳びの舞・扇の舞・剣の舞・神来舞・吉野舞といった獅子舞のレパートリーに加え、
剣三番叟・献燈の曲・綾採りの曲・手毬の曲・水の曲・傘の曲・魁曲といった曲芸が次々と繰り出される放下芸がある。
放下芸の合間に繰り広げられる芸者(曲芸師)とチャリ師(道化師)による漫才も見どころのひとつだ。
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毎年12月24日には、伊勢大神楽の講社5社が本拠地である三重県桑名市太夫町の増田神社に集結して、1日かけて総舞を披露する。
毎年でも見に行きたいのだけれども、今年はどうやっても見に行けそうにない。
その代わりに、中之島での「旅するカミサマ、迎える人々」を心ゆくまで見ていた。
総舞の写真は、昨年の増田神社でのもの。
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