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不倫の慰謝料を請求されたら-16(不倫は共同不法行為)

【 自己紹介 】

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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。

僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。

ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。

あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。

ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。

【 今日のトピック:不倫の慰謝料を請求されたら 】

今日も引き続き、不倫の慰謝料を請求されたケースについてお話していきます。

さて、昨日の話では、僕と夫の弁護士が交渉していました。

夫は、弁護士つけてまで僕に対して不倫の慰謝料を請求してきたわけですが、しかしながら、弁護士が冷静だったのか、当初は慰謝料300万円を請求してきたにもかかわらず、今は、150万円まで減額した上で、慰謝料ではなく「解決金」という名目で支払うことにも応じてくれています。

まあ、夫とすれば、「肉を切らせて骨を断つ」の精神なのかもしれません。

名目なんかにこだわるよりも、よりたくさんお金がもらえればそれでいい、ということでしょうか。

しかし、夫が300万円から150万円まで譲歩して、僕も0円から30万円まで譲歩したとはいえ、まだまだ開きは120万円もあります。

大きな開きですが、この開きは埋まるのでしょうか。

お互いにこれ以上譲歩するつもりがないのであれば、この開きは埋まりません。

夫が150万円から譲らないのであれば、僕が150万円まで増額しない限り、交渉はまとまりません。

逆に、僕が30万円から譲らないのであれば、夫が30万円までの減額を了承しない限り、交渉はまとまりません。

当たり前ですが(笑)

交渉はお互いに譲り合いながら、どこか金額的に折り合いがつくところがあれば、そこを目指して進めていきます。

とはいえ、お互いに「譲り合う」といっても、何の基準もなしに譲り合うことは難しいです。

この場合の「基準」は、「裁判になったらどうなるか?」です。

不倫が裁判で認められたら、慰謝料としてどれくらいの金額が認められるか、という、いわば「相場」があって、その相場に照らしながら、不倫を裁判で立証できる確率がどれくらいかということも考慮しながら、金額を決めていきます。

めちゃくちゃ雑な話ですが、不倫の慰謝料として300万円を、80%の確率で立証できるのであれば、合理的に考えて、240万円まで譲歩する理由があります。

230万円に譲歩する必要はありません。それは合理的に考えばマイナスです。

しかし、人間には損失回避傾向があるので、20%の敗訴リスクを回避するために、合理的に考えれば「損」である、230万円に応じる可能性はあります。

まあ、考慮しなきゃいけない要素は、慰謝料の相場と敗訴リスクだけでなく、早期解決によるメリット(お金が早く手に入る、円満解決による支払い確保など)もあるので、こんな単純ではありませんが、慰謝料の相場に敗訴リスクをかけ合わせた金額が、一応目安になります。

じゃあ、まずは慰謝料の相場ですが、これは、婚姻期間と不倫期間、そして不倫をきっかけに夫婦が離婚したかどうかによって左右されます。

例えば、婚姻期間が10年で不倫期間が1年、不倫をきっかけに夫婦が離婚してしまった、というケースであれば、慰謝料として250万円~300万円くらいでしょうか。

300万円は少し高いかもしれません。250万円くらいでしょうか。

今回の設定では、夫と妻が結婚して4年くらいで、不倫期間は約半年でした。だから、まあ、離婚するなら150万円~200万円くらい、離婚しないなら100万円~140万円くらいでしょうか。


まだ夫が妻と離婚するかどうかについて書いていませんが、とりあえず、離婚することを前提に、180万円としておきましょう。

次に、この180万円に敗訴リスク(勝訴の可能性)をかけ合わせます。

例えば、8割くらいの確率で夫が勝訴する見込みなのであれば、180万円の80%=144万円が、一応の基準になります。

じゃあ、このケースで、144万円を基準に交渉していけばいいかというと、ここでもう1つ話があって、それが求償「アリ」か「ナシ」かです。

そもそもですが、夫が、妻の不倫を理由に慰謝料を請求できるのは、妻の不倫が、夫に対する不法行為になるからです。

しかし、当たり前ですが、不倫は1人じゃできません。セックスは2人でするからです。

つまり、不倫相手と妻の2人の営みとしてのセックスが「不貞」になるわけですから、不貞という不法行為は、妻と不倫相手の2人が加害者になります。

こういう、加害者が複数存在する不法行為を、「共同不法行為」と呼びます。

「共同不法行為」によって損害を被った場合、被害者1人に対して、加害者が複数となります。

今回の例だと、被害者が夫1人で、加害者は妻と僕の2人です。

発生した損害は、被害者1人にしか発生していませんが、じゃあ、その損害を、被害者は加害者2人のうち、どちらにどれくらい請求できるのか?という問題が発生します。

しかし、これは結論が民法に書いてあって、被害者は、加害者のどちらにも、損害全額を請求できることになっています。

つまり、夫が180万円相当の精神的苦痛(損害)を被ったのであれば、その慰謝料全額を、僕にも妻にも請求できるのです。

とはいえ、夫が被害を受けたのは180万円分の精神的苦痛だけなので、夫が妻からも僕からも180万円受け取って、合計360万円を受け取れるわけではありません。

受け取れるのは、あくまで、夫が被った損害分、つまり180万円だけです。

例えば、僕が夫に180万円を支払ったのであれば、夫は慰謝料全額の支払いを受けているので、もう1円も妻に請求することはできません。

しかし、よくよく考えれば、2人の不法行為によって損害が発生したわけですから、その損害を僕1人で負担しなきゃいけないのはおかしいです。

僕1人でまるかぶりするのではなく、2人で負担するのがスジです。だとすれば、僕が支払った180万円のうち、いくらかは妻にも負担してもらわなきゃ困ります。

これを「負担割合」と呼ぶんですが、夫に対する慰謝料180万円を、加害者の誰がどれくらい負担するか、というのが「負担割合」です。

で、特に割合を左右する事情がなければ、割合は全員同じとされているので、加害者が2人であれば、各自負担割合は2分の1です。

したがって、夫に対しては全額の支払いを拒否できないにしろ、自分の負担割合(2分の1)よりも多く払った場合は、多く払った分を他の加害者(=妻)に請求できなきゃいけません。

180万円を支払った僕は、もう1人の加害者である妻に対して、半額の90万円を支払ってもらうことができます。これを「求償」と呼びます。

いわば、他の人の分も代わりに支払ってあげたから、後でその分を返してもらうのです。これが「求償」です。

「立て替えたお金を返してもらう」に近いでしょうか。

今日はこのへんにして、明日続きを書きます。

それではまた明日!・・・↓

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