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#415 相続の話:引出金は頻繁にモメる-3(引出金と遺言)
【 自己紹介 】
※いつも読んでくださっている方は【今日のトピック】まで読み飛ばしてください。
弁護士古田博大の個人ブログ(毎日ブログ)へようこそ。
このブログでは,2017年1月に弁護士に登録し,現在弁護士5年目を迎えている私古田が,弁護士業界で生き残っていくために必要不可欠な経験と実績を,より密度高く蓄積するため,日々の業務で学んだこと・勉強したこと・考えたこと・感じたこと,を毎日文章化して振り返って(復習して)います。
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後戻りの必要なく,スラスラと読み進められるようにも心がけていますので,肩の力を抜いて,気軽な気持ちでご覧くださるとと大変嬉しいです。
【 今日のトピック:相続(引出金) 】
さて,昨日で引出金の話は終わる予定でしたが,今日おもしろいことを発見したので,少し書いてみようと思います。
ざっくり言えば,「引出金が遺言の対象になるかどうか」です。
多くの人にとっては耳慣れない話だと思いますので,「弁護士がなんか言ってらぁ」くらいの「読み物」としてお付き合いください(笑)。
さて。
昨日と一昨日のブログ↓で書いたことからお分かりのとおり,
「返せ!」と請求できる引出金は,亡くなった被相続人に「無断で」引き出して着服した金額に限られます。
あくまで,「無断」なのは,被相続人に対して,です。
「被相続人」とは,亡くなった方ご本人を,亡くなった後で呼ぶ場合の呼び方でした。
被相続人に対して無断でお金を引き出し,引き出したお金を着服した,という理由で「返せ!」と請求するわけです。
本来なら,被相続人が生きている間に全額返してもらえばいいんですが,返してもらえないまま亡くなった場合に,被相続人の相続人(子どもや配偶者)が,被相続人から引き継いだ,「返せ!」という権利を行使して,返してもらいます。
相続人たちが請求できる金額は,自分が引き継いだぶんだけです。
だから,例えば,被相続人が3000万円を着服されたまま亡くなり,相続人が子ども3人という場合,それぞれの子どもが請求できる金額は,3分の1の1000万円となります。
被相続人が持っていた3000万円の請求権を,3分の1ずつ引き継いだから,1000万円だけ請求できる。
一昨日のブログでは,こんなことを書きました。
さて,今日は「引き継いだ」について少しお話しましょう。
一昨日のブログでめちゃくちゃに詳しく書きましたが,被相続人が亡くなると,被相続人の財産=遺産は,相続人の「共有」となります。
相続人が1人だけなら,「共有」とはなりませんが,相続人が2人以上いる場合は,「共有」となります。
この「共有」を解消するための手続きが「遺産分割」でした。
「遺産分割」は,最初は話し合いで始まりますが,この話し合いのことを「遺産分割協議」と呼びます。遺産分割協議で話がまとまらない場合は,裁判所に決めてもらう(=遺産分割審判)ことも説明しました。
被相続人が亡くなった途端に発生する「共有」を,普通の共有とは区別して「遺産共有」と呼ぶことも書きました。
つまり,「遺産共有」を解消する手続きが「遺産分割」なわけです。
じゃあ,被相続人の持っていた「返せ!」という請求権も,被相続人が亡くなると「遺産共有」になるかというと,そうじゃないんですね。
「返せ!」という請求権は,亡くなった途端,法定相続分に従って自動的に分割されます。
死亡に伴い自動的に法定相続分に従って分割されるので,「遺産共有」とはなりません。
したがって,「遺産共有」を解消するための手続きである「遺産分割」の対象とはなりません。
これも,一昨日説明しました。
ここまでは,おさらいです。
ここからは新しい話です。ここまでの話に「遺言」が絡んできます。「遺言」の中でも,「相続させる」旨の遺言と呼ばれるやつです。
「相続させる」旨の遺言というのは,その名の通り,「相続させる」と書かれている遺言です。
そのままですね(笑)。何のひねりもない(笑)。
「相続させる」と書いてあれば,「相続させる」旨の遺言なんですが,ただ,大切なのは,誰に「相続させる」のかです。
「相続させる」相手が,自分の相続人(配偶者や子ども)であれば,「相続させる」旨の遺言となります。
「相続させる」相手が,自分の相続人でなければ,その遺言は「遺贈」と解釈されます。
もうね,めちゃくちゃ意味不明だと思いますが,話を続けます。
自分の相続人に「相続させる」と書いてあれば「相続させる」旨の遺言,ということだけ覚えておいてください。
まあ,普通ですよね。お父さんが自分の子どもに「相続させる」と書いてあれば,その遺言は「相続させる」旨の遺言,ということになります。
だから,大体の遺言は「相続させる」旨の遺言です。
ほとんどの人が,自分の配偶者や子どもなど,自分が亡くなったら相続人にとなる予定の人物に自分の財産を相続させたいと思って遺言を書きますからね。
ほとんどの遺言が「相続させる」旨の遺言なんです。
さて,この「相続させる」旨の遺言,法的にどんな意味なのかというと,難しく言えば「遺産分割方法の指定」です。
「遺産分割方法の指定」なんて言われても意味不明なので,わかりやすく説明すると,「前もって遺産の分け方を決めておく」ということです。
普通の遺産分割であれば,被相続人が亡くなった後,生きている相続人同士で遺産の分け方を決めるんですが,そうじゃなく,被相続人が生きているうちから,自分が死んだ後に,自分の財産を誰が受け継ぐか決めておくわけです。
それが「遺産分割方法の指定」の意味するところです。
生きているうちから,あらかじめ「遺産分割の方法(=誰に遺産を受け継がせるか)」を「指定しておく」ということです。
だから,「遺産分割方法の指定」なんですね。
「相続させる」旨の遺言は,「遺産分割方法の指定」と解釈されている。これが大事です。
「遺産分割方法の指定」だとして,じゃあ,実際にどんなことが起きるかというと,「相続させる」旨の遺言の対象となった財産(土地や預金)は,被相続人が亡くなった途端に,「相続させる」相手(配偶者や子ども)が取得します。
亡くなった途端に遺産分割が済んじゃうんです。
あらかじめ「遺産分割の方法」が「指定」されているわけですから,亡くなった途端に,被相続人の言葉どおりに遺産分割が済まされたことになる。
それが「遺産分割方法の指定」が意味するところです。
ただ,「遺産分割方法の指定」だとすると,その対象となる財産は,遺産分割の対象財産に限られるように思えます。
「遺産分割の方法」を「指定」してあげているわけですから,法律上,遺産分割せずに法定相続分に従って自動的に分割される請求権は,「相続させる」旨の遺言の対象にできないような気がします。
「法定相続分に従って自動的に分割される」って,どういうことかというと,「遺産分割しようと思ってもできない」ということなんです。
いわば,法律上遺産分割が禁止されている,ということです。
ということは,先ほど説明した,「返せ!」という請求権は,法律上遺産分割が禁止されているわけです。
だとしたら,「相続させる」旨の遺言によって,「遺産分割の方法」を「指定」することはできないような気がします。
そうすると,「返せ!」という請求権は,「相続させる」旨の遺言の対象にならず,法律上自動的に法定相続分に従って分割され,それ以外の財産は,遺言に従って分割される。
そういう結論になりそうです。
今日はここまでにしますが,この結論に違和感ありますよね?
例えば,すべての遺産を相続人のうち1人に相続させるという遺言を残した場合であっても,「返せ!」という請求権は,別途,法定相続分に従って分割されるというのは,遺言を残した被相続人が予期していないことに思えます。
明日また詳しく書きます。
それではまた明日!・・・↓
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