貸したお金を弁護士の僕ならどうやって返してもらうか-18(財産開示を始める要件)
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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。
僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。
ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。
あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。
ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。
【 今日のトピック:貸した金を返してもらう 】
今日も引き続き「貸したお金を返してもらう」についてお話していきます。
昨日は、俗に「23条照会」と呼ばれる、弁護士会を通じた手続きを使ってキャバ嬢の預金口座を調査します、ということをお話しました。
「財産開示」という、裁判所を使ってキャバ嬢の財産を調査する手続きが民事執行法に用意されているにもかかわらず、最初から財産開示を利用するのではなく、弁護士会を通じて預金口座を調査するのです。
それはどうしてなのか。
昨日の最後でも少し説明しましたが、「財産開示」はいつでも始められるわけではなく、始めるには要件があります。
①強制執行したけども全額返済には足りなかった
または
②判明している財産に強制執行しても全額返済には足りない
このどちらかが満たされて初めて、「財産開示」という、裁判所を使った財産調査手続きを始めることができます。
そうすると、僕は、財産開示を利用するために、↑のどちらかの要件を満たすようにしなきゃいけません。
①の要件を満たすためには、強制執行を実際にやらなきゃいけません。
強制執行するためには、対象財産を特定しなきゃいけない、ということは既に書きました。
「なんでもいいからキャバ嬢の財産に強制執行して!」という申立ては許されません。自分で調べて財産を突き止め、その財産に対して強制執行してください、という申立てが「強制執行」なのです。
財産がわからないからこそ財産開示を利用したいのに、いったんは自分で調べてくれ、というのはなんかひどい感じもします。
確かに、「財産がわからないからこそ財産開示を利用したい」のはそのとおりなのですが、本当に「財産がわからない」のかどうかを、裁判所も確かめたいんです。
「財産開示」という手続きは、裁判所が、国家権力を用いて、「財産の所在・金額」という、めちゃくちゃ高度のプライバシーを侵害する手続です。
それを正当化するのは、「判決」なり「和解書」なり、裁判所が公的に支払いを命じた書面がまずは必要で、それに加えて、「本当に財産がどこにあるかわからない」という状況も必要です。
裁判所が支払いを命じているにもかかわらず、相手が任意に返済しないし、財産の所在もわからない。
だからこそ、財産を調査してプライバシーに介入することも正当化される。こういう立て付けになっています。
この「財産開示」って、プライバシーの侵害なんですよ。そして、いざ財産開示がスタートした後に、財産の所在を明らかにしないと(説明を拒否すると)刑事罰を受けてしまう。
つまり、刑事罰と引き換えにプライバシーを侵害させろ、という、ある側面から見ればめちゃくちゃ横暴な制度なんです。
この横暴は、「本当に財産がどこにあるかわからないんです」という事実があって初めて正当化されるので、裁判所は、きちんと「本当に財産がどこにあるかわからない」のかどうかを確認しなきゃいけない。
だから、①強制執行したけども全額返済できなかった、という要件がまずは要求されています。
既に強制執行したんだけども、全額返済には届かなかった。じゃあ、財産開示してもいいよね、と裁判所も判断できるようになるのです。
で、この①の要件は、「強制執行したんだけども、対象財産がなかった(=強制執行が空振りになった)」では足りません。
例えば、23条照会による調査もしないまま、当てずっぽうで支店を申立書に記載し、強制執行を申し立てたところ、その支店には口座がなく、対象財産が存在しなかった、という場合は、①を満たしません。
これが、1円でもいいのでキャバ嬢名義の口座があれば、1円の返済を受けて足りなかった、という話になるので、①の要件は満たします。
次に②ですが、これも、先ほど書いたような「横暴を正当化する」という文脈で読めば理解しやすいです。
既に僕なりに調査して、キャバ嬢の財産を特定したんだけども、その調査結果を踏まえても、全額返済には全然足りない、という場合が②です。
23条照会で預金口座を調べたけども、全然預金口座が見つからないとか、見つかったとしても残高不足だとか、住所を特定したけども、その住所は持ち家ではなかったとか、勤務先も変えていて今はどこに勤務しているのかもわからない。
こういった事情があると、②の要件を満たすようになります。
ただ、やっぱり、基本的には①の要件が満たされる場合が多いのかな、と僕は思います。
住所を特定しているわけですから、その近所のメガバンクには、どこかしら預金口座を持っていることが多いでしょうし(今の時代、ペイペイやLINEペイの残高などを使えば預金口座なしでも生きていけるようにはなりましたが、じゃあ、本当に預金口座を一切持たずにいる人がどれくらいいるかは疑問です)、メガバンクでなければ、その地域のメイン地銀や農協(JA)、労金などを調べたら、だいたいは預金口座があります。
もちろん、1つの金融機関あたり、預金口座の調査するだけでも5000+消費税は必要になりますが、財産開示するよりは早いです。
調査して、預金口座を調べ上げ、調べ上げた預金口座については、強制執行を申し立てる。
それで足りない場合に、財産開示に進む、というのは多くのパターンなのかなと思います。
今日はこの辺にして、明日は、財産開示の手続きが実際にどのように進むのかお話していこうと思います。
それではまた明日!・・・↓
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