弁護士の僕ならこうやって遺産相続を進めます-19(最終回)
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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。
僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。
ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。
あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。
ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。
【 今日のトピック:遺産相続 】
今日で19日目ですが、引き続き、遺産相続についてお話していきます。そろそろ終わろうと思います(汗)。
さて、遺留分の請求について長々と書いてきましたが、僕だったら、父の遺言について、納得できる理由を説明してもらえない限り、遺留分を請求します。
こういった前提で、つらつらと文章を連ねてきました。
今回の設定では、父の遺産は、
・自宅土地建物
・農地10筆
・預金500万円
という3種類で、相続人は、妻(僕の母)、長男(僕)、長女及び二女(僕の妹2人)でした。
この場合、僕の遺留分は、12分の1(法定相続分6分の1の半分)です。法定相続分は、妻(僕の母)が2分の1で、子ども3人はそれぞれ平等に6分の1ずつで、その半分が遺留分です。
だから、遺言がなければ、父の遺産は、↑の法定相続分に従い、妻に2分の1、子どもそれぞれに6分の1ずつ配分されることになります。
しかし、今回、父は、「すべての財産を妻に相続させる」という遺言を残していました。
その結果、遺産はすべて妻(僕の母)が取得することになってしまい、このままでは僕に1円も入ってきません。
「僕には1円も入ってこない」を修正するのが「遺留分侵害額請求」です。「遺留分侵害額請求」とは、「僕の遺留分に足りない分をお金で払ってくれ!」という請求ですが、「僕の遺留分に足りない分」とは、今回の設定で言えば、遺産の総額÷12です。
僕の遺留分は12分の1ですが、遺言のせいで遺産はすべて母が取得してしまい、その結果僕の遺留分が不足しているので、遺産の総額÷12が、僕の遺留分不足額とイコールになっています。
この場合、僕がどうやって遺留分を確保していくか、ということを、昨日までいろいろと話してきましたが、じゃあ、今回の設定の場合、遺産が↓
・自宅土地建物
・農地10筆
・預金500万円
でしたが、このうち、自宅土地建物と農地10筆は、価値がないという設定でした。
そうすると、遺産の総額は500万円で、僕の遺留分は、500万円÷12=41万6666円です。
ただ、じゃあ、最初から、自宅土地建物と農地10筆は価値がないことを前提に請求する金額を算出するのかどうかは別問題です。
例えば、自宅土地建物は500万円、農地10筆は200万円という風に値段をつけて、遺産の総額を1200万円として、その12分の1=100万円で請求することもあり得ます。
自宅土地建物や農地10筆の金額は、固定資産税の納付書を見れば載っていますし、父が亡くなった後は、市役所で、不動産の課税台帳(その市内に存在する父名義の不動産の一覧表)を見せてもらうことができて、その一覧表には、固定資産評価額が記載されています。
だから、土地や建物の値段(固定資産評価額)は、すぐに調べることができるわけです。
で、その固定資産評価額を基準に遺留分を算出して、請求するでしょう、まずは。
ただ、遺留分を算出する場合、法的には、土地や建物の値段は「固定資産評価額」ではなく「時価額」で算出します。
だから、固定資産評価額として、いくらか値段がつけられているとしても、時価額がゼロであれば、その不動産の価値はゼロとして遺産の総額を算出し、遺留分の金額も導かれます。法的にはこうなります。
そうすると、僕だったら、不動産屋に確認しておきます。
「父の自宅土地建物と農地10筆は、固定資産評価額だと、それなりの値段がついているけれど、売るとしたら値段がつくの?」
という風に、不動産屋に確認して、「売れないよ」とか「値段はつかないよ」という返答があったら、自宅土地建物と農地10筆は、価値ゼロとして遺留分を算出します。
その結果、僕は、母に対し、41万6666円の支払いを請求することになります。
「たった41万ぽっちで遺留分を請求するのかよ」と思われるかもしれませんが、「たった41万ぽっち」なのは、母にとっても同じです。
僕の立場から見れば、「たった41万ぽっちなんだから素直に払ってほしい」と思います。
これだけの金額で訴訟まで提起するのは馬鹿らしいかもしれませんけど、僕だったら、最終的には訴訟まで覚悟しちゃうでしょうね。
「遺留分を諦めた」と思いたくないからです。
その結果、最初は「100万円払え!」からスタートするけれども、最終的には、預金500万円の遺留分だけは確保する、という方針をとります。
これはあくまで、「不動産の価値がゼロ」だからです。
不動産に価値がある場合は、「預金500万円の遺留分だけは確保する」というのは覚悟しすぎていると思います。
この場合は、不動産業者に「実際、どの程度の値段がつくのか?」ときちんと確認しておいて、最低限譲れないところを決めておきましょう。
「最低限譲れないライン」を決めておくと、紛争解決はラクになります。
今回の設定だと、僕の「最低限譲れないライン」は「41万6666円」です。
これを、母が支払ってくれれば、それで紛争は終わります。
最初は100万円で請求するけれども、交渉の結果、「41万6666円」となればオーケーなんです。
ただ、母がこのラインに届かないなら、仕方ありませんが訴訟を提起します。
これが「ライン」の果たす役割です。足りなければ仕方ありません。自分の決めたラインに届かない場合に、それでオーケーしてしまうと、「諦めた」という思いがついて回ります。
そんな思いにさいなまれるくらいなら、さっさと訴訟を提起して、とことんやったほうが精神衛生上良いです。
これくらいで遺留分の話を終えて、19日間にわたって続いてきた遺産相続も終わろうと思います。
明日からは、借金の問題(任意整理・再生・破産)について書いていこうと思います。
それではまた明日!・・・↓
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