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#421 「離婚自体慰謝料」と「離婚原因慰謝料」
【 自己紹介 】
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【 今日のトピック:離婚慰謝料 】
離婚の相談は本当に多いんですが,今日は,離婚に伴う慰謝料請求について書いてみようと思います。
「離婚で慰謝料を払う」って,よく聞きますよね。
でも,「慰謝料」って,何か,よくわかっていない方も多いと思います。
「慰謝料(いしゃりょう)」って,実は略語なんです。
「精神的苦痛を慰謝(いしゃ)する料金」だから,略して「慰謝料」と呼ばれています。
「慰謝」とは,その文字通り,「相手を慰(なぐさ)め,謝(あやま)る」ことです。
自分が精神的苦痛を与えた相手の,心の傷をなぐさめ,その心の傷に対する謝罪として与えるお金。
それが「慰謝料」なんです。
慰謝料が,精神的苦痛に対して支払われる,ということは,それなりに多くの人がご存じだとは思います。
そのせいで,何かしらの精神的苦痛を受けると,すぐに「慰謝料だ!」となってしまう風潮があるような気がします。
確かに,慰謝料は精神的苦痛に対して支払われます。
しかし,精神的苦痛を受けたら必ず慰謝料を請求できるわけじゃありません。
ここに,慰謝料の,もう1つ大事な性質があります。それは,「慰謝料請求」とは,「損害賠償請求」だということです。
民法には,「不法行為に基づく損害賠償請求」が定められています。
これは,民法に書かれた「不法行為」の要件を満たす行為によって,被害者に対して損害を与えた場合,被害者は,不法行為をした人物に対して,自分が被った損害の「賠償」=「損害を金銭に換算した額の支払い」を請求できる,というものです。
ここでいう,「損害」は,本当にいろんなものがあって,よくあるのは,交通事故の場合の治療費です。
交通事故によってケガを負った被害者は,交通事故を引き起こした加害者に対して,ケガの治療費を請求できますが,それは,治療費が「損害」と評価されているからです。
「損害」にはいろいろあるわけですが,この「損害」が,精神的苦痛の場合に限って,「慰謝料」と呼んでいます。
どうして慰謝料だけ特別扱いするのか,その経緯はわかりませんが,とにかく,不法行為によって精神的苦痛が引き起こされた場合に,その精神的苦痛を被った被害者の「損害賠償請求」を「慰謝料請求」と呼んでいるのです。
そうすると,「慰謝料」を請求したい場合,精神的苦痛を受けただけではダメです。その精神的苦痛が「不法行為」によって発生しなければなりません。
「不法行為によって発生した」精神的苦痛でなければ,慰謝料は請求できないのです。
その結果,「慰謝料」を請求したい場合,「不法行為によって精神的苦痛が生じたこと」を立証しなければなりません。
さて,「離婚慰謝料」に話を戻しましょう。「離婚慰謝料」も,慰謝料であることに変わりありません。したがって,不法行為によって精神的苦痛が生じたことを立証する必要があります。
まあ,請求する相手が慰謝料の支払いに応じてくれたら立証する必要もないんですが,納得できる額を「うん」と言ってすぐに払ってくれる人は,まずいないでしょう(笑)。
さて,「不法行為によって精神的苦痛が生じた」という話です。
離婚慰謝料の場合,「不法行為」とは何か,「精神的苦痛」とは何か,突き詰めるとよくわかりませんよね。
離婚自体が「不法行為」になることはないでしょう。「不法行為」とは,「違法な行為」ということなんですが,結婚した夫婦が離婚することは,法律で当然に予定されていますから,離婚すること,または,離婚を請求すること,それ自体が「不法行為」になることはありません。
じゃあ,「離婚慰謝料」の場合の「不法行為」って何かというと,「配偶者の一方が離婚原因を作り出したこと」と考えられています。
「離婚原因」って何かというと,不倫や暴力・暴言です。
例えば,不倫した配偶者は,もう一方の配偶者の権利を侵害したことになる,と最高裁で認められています。
つまり,不倫=権利侵害で,違法です。これが,最高裁の見解です。
だから,不倫=不法行為なのです。不倫は,違法なので「不法行為」に該当し,それによって被害者に発生した損害を加害者は賠償しなければなりません。
そして,暴力や暴言が「不法行為」に当たることは,言うまでもありませんよね。
暴力をしたら,それは「暴行罪」で犯罪となりますし,相手がケガをすれば「傷害罪」となります。暴力が「違法」であり,「不法行為」に該当することは間違いありません。
そして,「暴言」も,「違法」です。一般的に見て我慢する必要がないくらいの,ひどい暴言は,「違法」ですから「不法行為」に該当します。
じゃあ,「損害」とは何か。離婚「慰謝料」と銘打っているわけですから,「損害」が「精神的苦痛」なのは間違いないですが,じゃあ,精神的苦痛とは何を指しているのか。
「離婚」は精神的苦痛じゃありません。なぜなら,離婚は法律で想定されているからです。結婚した夫婦は,離婚する可能性はあるわけです。どの夫婦もです。
だから,離婚することそれ自体が,「精神的苦痛」とは評価できません。
じゃあ,何が「精神的苦痛」かというと,「離婚を余儀なくされたこと」だと考えられています。
つまり,相手配偶者が違法な行為=不法行為を自分にしてくるわけですから,そんな配偶者と一緒に暮らすことなんてできませんよね?
不倫したり,暴言を吐いたり,暴力をふるったりする相手とは,一緒に暮らしていくこともできないし,籍を入れた状態を続けることもできません。
そんな人とは,離婚するしかないんです。
この「離婚するしかない」という点が,「精神的苦痛」と評価されている。
どうも,そうらしいです。
しかし,本来であれば,不倫されたとか,暴言を吐かれたとか,暴力を振るわれたとかされたのなら,「離婚を余儀なくされる」よりも前に,精神的苦痛は発生しているはずです。
不倫に気づいたら,その途端にめちゃくちゃ傷つきますし,暴言を吐かれたら,その瞬間にいちばんの精神的苦痛が訪れます。
暴力も,殴られたその瞬間がいちばん痛くて怖いのです。その「痛さ」や「怖さ」に襲われている瞬間こそ,最大の精神的苦痛が発生しています。
「離婚を余儀なくされた」は,その後の話です。
そうすると,「離婚を余儀なくされた」が「離婚慰謝料」なのであれば,なんか,あんまり高い金額は貰えなさそうです。
「離婚を余儀なくされた」よりも,不法行為の被害にあっているその瞬間がいちばんの精神的苦痛なわけで,それが評価されていないのなら,慰謝料の金額も少なそうです。
でも,どうやら,「離婚慰謝料」は,不法行為の被害にあっているその瞬間に受けた精神的苦痛も含めて請求できるようです。
タイトルにも書きましたが,不法行為(不倫・暴言・暴力など)の被害にあっているその瞬間に発生した精神的苦痛に対する慰謝料を「離婚原因慰謝料」と呼び,「離婚を余儀なくされた」ことによる精神的苦痛に対する慰謝料を,「離婚自体慰謝料」と,一応区別するようです。
でも,この両方を,「離婚慰謝料」として,離婚の調停や裁判で請求できる。
という風になっているようです。
だとすると,不倫・暴言・暴力のような,「不法行為」(=離婚原因を作り出した不法行為)は,その瞬間に被害者に精神的苦痛を与えるので,それを後日慰謝料として支払う必要があるだけでなく,その後離婚に至った場合は,「離婚を余儀なくされた」という慰謝料も支払わなきゃならないのです。
じゃあ,慰謝料の金額って,実際のところいくらぐらいなのさ?という疑問が浮かんできますよね。
これは,本当にケースバイケースで,弁護士でも頭を悩ませるんですが(慰謝料の金額だけをテーマに1冊本が書けるくらいです),婚姻期間がある程度続いていて(5年以上),不倫も複数回にわたって継続的(数か月以上)というケースであれば,不倫だけの慰謝料で150万円,「離婚を余儀なくされた」まで含めると250万円くらいでしょうか。
本当に,あくまで参考程度でお願いします。
ただ,不倫だけの慰謝料は,不倫相手が結婚を知っていた場合,不倫相手との2人分で150万円です。不倫相手にも責任があるので,「不倫相手のぶんは払わないよ」という話になる場合もあります。
そうなると,不倫だけの慰謝料で80万円,「離婚を余儀なくされた」まで含めると180万円くらいでしょうか。
まとめに入りますが,慰謝料が問題となる場合,「不法行為」が大前提です。
「精神的苦痛」だけでは,慰謝料は請求できません。
相手に不法行為が成立するのか,成立するとして,慰謝料はいくら請求できるのか。
いちど,お近くの弁護士にご相談されてみてください。
それではまた明日!・・・↓
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