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#453 婚姻費用・養育費は,払う側の生活レベルが下がってしまうくらい高額です
【 自己紹介 】
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【 今日のトピック:婚姻費用・養育費 】
今日は婚姻費用と養育費の話です。
離婚の際は,婚姻費用と養育費がよく問題になります。
「婚姻費用」「養育費」とだけ書いても,あんまり意味がわからないかもしれませんが,ちょっと前提から説明します。
離婚するためには結婚していることが必要なのですが(「知っとるわ!」という話なんですが・・・),結婚すると,配偶者は,お互いにお互いを養う義務が発生します。
この「お互いを養う義務」は,夫婦が別居しても続きます。
別居して家計も別々になったとしても,夫婦はお互いを養う義務を負うのです。
この「お互いを養う義務」を,お金で果たすのが「婚姻費用」です。
「お互いに養う」とはいえ,婚姻費用を払うのは,収入が多い方だけです。
収入が多い方が,少ない方に対し,「婚姻費用」を払うことで,「養う義務」を果たすわけです。
これに対し,「養育費」は,親が未成年の子どもを養う義務を果たすものです。
親は,未成年の子どもを養う義務があるのですが,その義務を,「養育費」を払うことで果たすわけです。
この「養育費」は,「子どもを養う義務」とはいえ,親権者となった元配偶者に対して払うことがほとんどです。
親権者の承諾があれば,子ども名義の預金口座に対して直接養育費を支払うこともできますが,親権者としては,養育費を直接自分に支払ってほしいでしょうから,承諾することはあまりないと思います。
仮に,子ども名義の預金口座に養育費を支払うと約束できたとしても,親権者は,子ども名義の預金口座からお金を引き出すことができるので,結局は,親権者に養育費は使われてしまいます。
というか,養育費は,親権者が子どもを養育するために使われるお金ですから,親権者に使われないようにするのは,ちょっと筋が違います。
こんな感じで,「婚姻費用」は配偶者を養う義務,「養育費」は子どもを養う義務と区別されます。
離婚する前は,「養育費」を「婚姻費用」に含めるのが一般的です。
離婚前であれば,配偶者も子どもも養う義務があるわけですから,その「養う義務」両方を合算して,「婚姻費用」を算定します。
「婚姻費用」や「養育費」の算定方法は,確立されています。
「婚姻費用 算定方法」などと検索すれば算定式が出てきますが,ちょっと説明が複雑なので,ここでは割愛します。
算定式も決まってはいるのですが,よく使われるのは,「算定表」です。
妻の収入と夫の収入,子どもの数,子どもの年齢で,婚姻費用は算定されるので,これらの数字がわかれば,機械的に婚姻費用を導くことができます。
算定表は裁判所も公開しています(こちら)
例えば,夫が年収700万円,妻の年収が300万円,妻が長男(10歳)・長女(8歳)・二女(5歳)を連れて別居している場合,夫が妻に支払わなければならない婚姻費用は,月額12万円~14万円となります。
この例は,夫も妻も給与収入であることを前提としています。給与収入ではなく,事業収入の場合は,課税所得を出して,算定表で「自営」の方を見ます。
仮に,夫が個人事業主で課税所得が700万円,妻の年収が給与収入で300万円の場合,↑の例だと,婚姻費用は月額18万円~20万円となります。
離婚後は,婚姻費用が「養育費」に切り替わります。
先ほど説明したとおり,「婚姻費用」は配偶者を養う義務が含まれていますが,離婚後の「養育費」は,子どもを養う義務だけです。
だから,必然的に養育費は婚姻費用よりは安くなりますが,それでも,↑の例(夫の給与年収が700万円)の場合,養育費は月額8万円~10万円です(だいたい,子ども1人あたり3万円)と算出されます。
個人事業主で課税所得が700万円の場合は,養育費が月額12万円~14万円(だいたい,子ども1人あたり4万5000円)です。
これ,払う側の夫とすると,「かなり高いな」という印象があると思います。
年収700万円のサラリーマンも,仮に,ボーナスが220万円,月々の給与で480万円の支払いを受けているとしましょう。
そうすると,毎月の給与は,額面では40万円ですが,そこから社会保険料や厚生年金が差し引かれ,所得税も源泉徴収されたり,他にも会社によっていろいろと天引きされると,手取りとして30万円を下回ってしまうでしょう。
そうなると,その手取り収入から,婚姻費用として毎月12万円を支出したり,養育費として毎月9万円を支出するのは,かなり手痛いです。
これだけ支出してしまうと,残るのは15万円~20万円ほどです。
15万円~20万円しか使えるお金がない暮らしと,30万円ほどお金が使える暮らしは,おそらく,全く違います。
住める部屋も違ってくるでしょうし,食費にかけられる金額も全然違います。飲みに行ける頻度,飲みに行くお店のランクも,全く違うでしょう。
そうなんです。婚姻費用や養育費の負担って,払う側の生活レベルを下げてしまうくらい,大きな支出になってしまうのです。
「そんなのおかしい!」と思う人もいらっしゃるかもしれませんが,実は,「理論的に」,払う側の生活レベルを下げてしまうものなのです。
先ほど,婚姻費用の根拠は,「配偶者を養う義務」で,養育費の根拠は「未成年の子どもを養う義務」だと説明しました。
実は,この「養う義務」は,かなり厳しくなっています。
「厳しい」がどういう意味かというと,「自分の生活レベルと,相手の生活レベルを同じにしなきゃいけない」ということです。
この考えを踏まえると,婚姻費用や養育費を払ったとしても,払う側の生活レベルが下がらないのであれば,それは婚姻費用・養育費の支払いが足りていません。
自分と相手の生活レベルを同じにしなきゃいけないわけですから,婚姻費用や養育費を払うことで,払う側の生活レベルは下がり,これによって,貰う側の生活レベルは上がり,その結果として,払う側と貰う側の生活レベルがイコールにならなきゃいけない。
これが,婚姻費用と養育費の考え方です。
この考え方を踏まえれば,婚姻費用や養育費の金額も,納得がいくと思います。
まあ,本当に「納得」できるかどうかは,その人次第ではありますが,とはいえ,法律が,これくらい大きな負担を強いていることを知っておくべきかもしれません。
ここから考えていくと,結局,「結婚」や「子どもを作る」というのは,自分の生活レベルを下げてまで,配偶者と子どもの生活レベルを自分の生活レベルまで引き上げてあげなきゃいけない,ということになります。
【 まとめ 】
婚姻費用や養育費の金額に驚かれる方も少なくありませんが,「自分の生活レベルと相手の生活レベルを同じにする」という,婚姻費用と養育費のウラにある考え方に目を向けられれば,理解も進みやすいと思います。
配偶者を養う義務と子どもを養う義務があるのは,誰しも納得できるでしょうが,その「義務」は,自分の生活レベルを落としてまで,相手を援助してあげなきゃいけない,というものなのです。
もちろん,自分より高い生活レベルを相手に提供してあげる必要はありませんが,とはいえ,「生活レベルを同じにする」というのは,かなり手痛い出費を伴うことがほとんどです。
このことを,ぜひこの機会に理解してくださると嬉しいです。
それではまた明日!・・・↓
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