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#435 遺留分と遺産分割の区別:遺言があるかないか

【 自己紹介 】

※いつも読んでくださっている方は【今日のトピック】まで読み飛ばしてください。

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【 今日のトピック:遺留分と遺産分割の区別 】

今日は,遺留分と遺産分割の区別についてお話をしたいと思います。

まあ,結論から言えば,区別する基準は,遺言があるかないかです。

遺言があれば,遺留分の話になりますし,遺言がなければ,遺産分割の話になります。

ここだけ書いてもわかりにくいと思いますので,少し前提から説明します。

そもそも,「相続」や「遺産」という話って,亡くなった方の財産をどうやって分けるか,という問題です。

人間は,生きている限り,財産が必要です。亡くなるその瞬間まで,食事などで栄養を摂取する必要がありますが,栄養摂取にもお金が必要です。

住む家も必要ですし,病院に入院しているなら,入院料金が必要です。

だから,亡くなる瞬間までお金が必要で,しかも,お金だけあっても仕方ないので,洋服や家具,自宅建物などの財産が必ず残ります。

亡くなった瞬間,必ず何かしらの財産を持っているわけですから,その財産をどうするかという問題は,必ず発生します。

それが,「遺産」とか「相続」とか「遺産相続」などと言われる話です。

亡くなった人が持っていた財産は,亡くなった人が持ち続けることができないので(亡くなった人が財産を所有することはできません。あくまで法的には。),生きている人に引き継ぐ必要があります。

生きている人に引き継ぐ方法が,「遺産分割」または「遺言」なんです。

「遺言」とは,亡くなった人が,亡くなる前に,自分の財産を誰にどれくらい引き継がせるか書いた書面です。所有者本人が,自分が死んだ後に自分の財産をどうやって生きている人に配分してほしいか書き残しているのであれば,それに従えばいいし,というよりも,その意見に従うべきです。

だって,自分の財産を,自分が死んだ後に,誰にどう引き継いでほしいかは,財産の所有者本人が自由に決めていいはずで,それを,所有者本人以外の人間が覆すべきではないからです。

いくら本人は既に死んでいるからといって,その人が最後に残した意見を,他の人間が覆すことはできない。

そのほうが,いいですよね。自分が死んだ後の自分の財産について,自分であらかじめ決めることができて,それを,自分が死んだ後,誰かに覆されることもない。

そのほうが,安心して生きていられます。死んでしまうと,もはや感情はないので,安心も不安もないのですが,ただ,生きている人にとって,自分が死んだ後,自分の財産が自分の思い通りになる,と確信できることは,大きな安心材料になります。

そんな感じで,自分の死んだ後の自分の財産について,生きているうちから決めることができるし,それを「遺言」として書き残していれば,いざ自分が死んだ後,自分の財産が,遺言に書き残したとおりに引き継がれます。

これでめでたしめでたしなはずなんですが,そこでひょっこりと「遺留分」というシステムが顔を出してきます。

先ほど書いたように,自分が死んだ後に自分の財産を誰にどれくらい引き継がせるか,「遺言」で決められるのですが,ただ,決められる範囲に限界があるのです。

例えば,子ども2人と妻が相続人という場合,自分の財産のうち半分は,必ず子どもと妻に配分しなきゃいけないのです。

これが「遺留分」というシステムです。

本来であれば,自分の財産を,子どもでも妻でもない誰かに全部引き継がせてもいいはずです。自分の財産なんですから,死んだ後に誰に引き継がせようが勝手です。

でも,それを法律は許しません。必ず自分の財産のうち半分は,妻と子ども2人に引き継がせる。それが「遺留分」です。

そして,遺留分は,妻と子どものうち,誰かに半分を引き継がせればそれでいい,というわけでもありません。

↑の例だと,妻には遺産のうち25%,子どもには,1人あたり12.5%を引き継がせなきゃいけないのです。

もし,この割合に足りないのであれば,貰いすぎている人から,足りないぶんを取り戻すことができる。

それが「遺留分」です。「取り戻す」方法は,お金です。足りない金額を,貰いすぎている人からお金で支払ってもらう。それが「遺留分」というシステムです。

ただ,遺言がない場合もあります。遺言がない場合は,残った遺産は,相続人全員で話し合って,誰がどれを引き継ぐのか決めます。

それが「遺産分割」です。

話し合いがまとまれば,最後に「遺産分割協議書」を作成します。この「遺産分割協議書」と,遺産分割協議書に押印された印鑑の印鑑証明書が全員分あれば,土地の名義も亡くなった人から変えることができますし,預金口座の解約もできます。

話し合いがまとまらなければ,家庭裁判所に遺産分割調停を提起して裁判所で話し合います。それでも話し合いがまとまらなければ,遺産分割「審判」に調停から移行します。

遺産分割「審判」では,裁判所が遺産の分け方を決めてくれます。

こんな感じで,遺言の有無が,遺留分/遺産分割を区別しているのです。

ただ,遺言の内容が不明確だったりして,遺言だけでは不動産の名義が変更できなかったり(きちんと体裁が整っていれば,遺言だけで不動産の名義を変更したり,預金を解約したりすることができます)するケースで,遺言があるけれども,遺産分割するパターンもあります。

遺言があるかどうかで,相続の手続きは全然違ってきます。

それに加えて,↑に書いたように,遺言があるけれども,遺産分割をしなきゃいけなかったり,遺産分割をしたほうがいいケースもあります。

遺産のこと,相続のことでお悩みの方は,いちど弁護士に相談することをオススメします。

くれぐれも,遺産分割協議書に押印する前に相談してくださいね。遺産分割協議書に署名押印してしまうと,それを後から覆すのは,ほぼ不可能です。

ぜひ気軽に,お近くの弁護士にご相談されてみてください。

それではまた明日!・・・↓

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