#405 結構珍しい土地の紛争に直面しています。
【 自己紹介 】
弁護士古田博大の個人ブログ(毎日ブログ)へようこそ。
このブログでは,2017年1月に弁護士に登録し,現在弁護士5年目を迎えている私古田が,弁護士業界で生き残っていくために必要不可欠な経験と実績を,より密度高く蓄積するため,日々の業務で学んだこと・勉強したこと・考えたこと・感じたこと,を毎日文章化して振り返って(復習して)います。
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【 今日のトピック:必要費の償還請求 】
さて,いきなり「必要費の償還請求」なんてめちゃくちゃに難しいワードを書いて申し訳ありません(笑)。
今僕が,この事件に直面しているせいです。すみません・・・。
僕の乏しい経験から言うのはおこがましいのですが,「必要費の償還請求」というのは,それなりに珍しいと思います。
僕は初めて扱います。
これ,民法でいうと196条1項の条文です。でも,民法の条文を調べて読んだところで意味がわからないと思いますので(意味がわかる方は,僕のブログよりも,もっと専門的なブログを御覧ください笑),ちょっと説明します。
僕が扱っている案件が,土地の話なので,土地を例に説明しますね。
えーっと,当たり前ですが,普通,土地を使えるのは,その土地の所有者(俗に「地主(じぬし)」と呼ばれます)だけです。
日本中のあらゆる土地は,法務局によって区分けされていて,1つ1つに番号がつけられています。
区分けされたすべての土地は,法務局によって,その所在場所,番号(地番),土地の面積がデータ化されています。
そのデータは,法務局で「登記事項証明書」を取得すれば,見ることができます。
どの土地が,誰の所有なのか(=誰の名義になっているのか),法務局で「登記事項証明書」を発行してもらえば,一目瞭然なわけです。
そうやって土地の所有者が法務局で管理されているんですが,実際に土地を使っているのは,土地の所有者(地主)以外の場合もあります。
よくあるのが,土地を貸すパターンです。
地主さんが,土地を誰かに貸して,貸した相手(借主)から,借地料(「地代(じだい,ちだい)」とも呼ばれます)の支払いを受ける。
これは,かなり広く見られます。僕も,何度も借地の争いは経験しました。
ただ,僕が今直面しているのは,土地を貸しているのではなく,勝手に使われた,というパターンです。
そもそも,「土地を貸す」というのは,借主が土地を使うことを地主さんは承諾しています。
こんなこと,言うまでもありませんけど,「貸した」と「勝手に使われた」を分けるのは,この点です。つまり,地主さんが,土地の使用を承諾したかどうかです。
土地の使用を承諾していれば,「貸した」になるし,
土地の使用を承諾していなければ,「勝手に使われた」となる。
ここは,素朴な価値観と全く同じです。
そして,「勝手に使われた」のであれば,地主さんは,土地を返してもらうことができます。
この「使われた」というのも,あえて曖昧な表現にしましたが,現実には,いろんな状況が考えられます。
「土地を使う」って,いろんなパターンがあって,いちばんよくあるのが「土地の上に建物を建てる」です。
この場合,「勝手に土地を使う」は,「地主さんの承諾もなく,土地の上に建物を建てた」というトンデモない事態が生じています。
もちろん,地主さんは,法的には,勝手に建物を建てた人の費用負担で建物を壊してもらい,土地を返してもらうことができます。
ただ,勝手に建物を建てた人にお金がないことも多いです。その場合,壊す費用を負担させることにこだわっていると,いつまでも壊してもらえないという理由で,いったんは地主さんが壊す費用を立て替えて後で請求する形,もしくは,地主さんが壊す費用を負担して建物を壊す,というパターンも結構よくあります。
建物の解体費用をケチるよりも,一刻も早く建物を壊して,土地を取り戻したいという場合は,こういうパターンになることが多いです。
ただ,僕の直面している事件は,「勝手に使われた」といっても,土地の上に建物が建ったわけではありません。
僕の事件の場合,土地は「農地」で,その土地は,勝手に「畑として」使われていました。
つまり,種をまいて野菜を育てて収穫し,なおかつ,柿の木を剪定(せんてい)したりして柿の実を実らして収穫したりしていたんです。
地主さんが承諾しないまま,11年間も,その状態が続いていました。
どうしてそういう事態が生じたのかというと,地主さんは,その土地を別の人に無償で貸していたのですが,その人が,地主さんに無断で又貸ししてしまったようです。
法律上,無断で又貸ししてはダメです。当たり前です(笑)。
地主さんは,土地の所有者として,自分の土地を誰に使わせるか選ぶ権利があります。
自分の土地を誰に使わせるかの決定権限は,地主さんにあって,借りている人にはありません。
又貸ししたいのであれば,地主さんの承諾を得る必要があります。
承諾を得られないのであれば,又貸しすることはできませんし,承諾を得ないまま無断で又貸ししてしまった場合,地主さんは,土地を返してもらうこともできます。
さて,この事件,普通だと,又貸しを受けた人(現に土地を使っている人)がゴネて,土地を返さないというパターンが,よくあるパターンなんですが,そういう顛末とはならず,素直に土地は返してもらえました。
「土地を返した」というのも,あいまいですが(というか,土地は動かないので「返す」という表現が少し適切じゃないかもしれませんね笑),具体的に言うと,農作業に必要な道具などを保管するために土地に持ち込んだ倉庫を撤去したり,その他,農作業のために持ち込んでいた品々をすべて撤去したわけです。
つまり,「勝手に使われた土地」は,無事に地主さんのもとへ返されたわけです。
これで万事解決となるように思えますが,そうはなりませんでした。
土地を取り戻して3ヶ月ほど経過した後,勝手に土地を使っていた人が弁護士をつけて,その弁護士から「必要費の償還せよ」という内容の手紙が届いたのです。
さて,やっと本題の「必要費の償還」について話しますが,土地って,所有していると,管理の責任が発生します。
土地は,ただ持っているだけで,何もしなくていいわけじゃないんですね。
もちろん,土地を持っていれば(所有していれば),固定資産税の支払いが必要となりますが,それ以外にも「管理責任」が発生します。
土地が崩れそうになって,隣の土地に被害が生じそうになっているんだったら,崩れるのを防止するために,工事したりする必要がありますし,それと,今回問題となった農地の場合は,草刈りなどの管理も必要になります。草刈りせずに放置していたら,農地なんて,あっという間に草ぼうぼうになって,他の土地に迷惑をかけたりしますからね(田舎生まれなので,耕作放棄地がどうなるかはよくわかっているつもりです)。
さて,そうやって土地所有者は土地を管理しなきゃいけないわけですが,その管理には費用がかかります。
その費用はもちろん,土地所有者の負担となるわけですが,土地を使っている人が代わりに費用を負担してくれた場合,本来であれば,土地所有者が負担するべき費用を代わりに負担したことになりますから,土地の所有者に対して,土地を返す際に支払いを請求することができます。
これが,「必要費の償還」というやつです。
「必要費」というのが,土地の場合は,「土地の管理費用」ということです。
つまり,土地の管理費用を,土地の所有者に代わって支出した場合,土地を返す際に,その支出額と同額のお金を支払うよう土地所有者に請求できるというのが,「必要費の償還」なんです。
土地所有者としては,「勝手に土地を使われた!」と激おこだとは思いますが,本来自分で負担しなきゃいけない土地の管理費用を代わりに負担してくれたのなら,その費用分は支払う必要があるということです。
さて,じゃあ,「必要費の償還」を請求された,今回のお客さんの場合,その請求に応じる必要があるのでしょうか。
この点は明日書こうと思います。
それではまた明日!・・・↓
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