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#462 破産は人助け
【 自己紹介 】
※いつも読んでくださっている方は【今日のトピック】まで読み飛ばしてください。
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日々の業務経験がトピックになっているとはいえ,法律のプロではない方々にわかりやすく伝わるよう,心がけています。スラスラと読み進められるよう,わかりやすくシンプルな内容でお届けしております。肩の力を抜いてご覧くださると嬉しいです。
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【 今日のトピック:破産は人助け 】
「破産」にはめちゃくちゃネガティブなイメージがついてまわります。
破産=社会的抹殺のように思っている人もいますが,そんなことはありません。
全然違います。
むしろ,破産することで,借金に苦しんでいる人は救われるのです。
僕も,何度も何度も,借金に苦しんでいる人たちを,破産によって救ってきました。
そもそも,「破産」って何かというと,借金に苦しんでいる人の財産を全部お金に変えて,そのお金を債権者に配る手続きです。
これだけ書くと,全然「救い」じゃないので,少しずつ説明します。
「債権者」とは,お金を貸していて返済してもらっていない人(または会社),他にも,家賃に滞納がある場合の大家さんとか,そういった,本来払ってもらうべきお金を払ってもらえていない人や会社を指します。
この「債権者」は,本来,払ってもらうべきお金を満額払ってもらうことができるのですが,破産手続が始まると,満額払ってもらえなくても,それで我慢しなければならなくなります。
「破産」というのは,「破産手続開始決定」が出た瞬間に持っていた財産だけお金に変えて債権者に配ればそれでいいんです。
「破産手続開始決定」というのは,「これから破産手続を始めますよ」と裁判所が宣言することです。
例えば,古田博大が借金に苦しんで破産する場合,まずは,破産の申立書を裁判所に提出します。
「申立書」といっても,「申立書」だけを提出すればいいわけじゃなくて,預金口座の履歴や,返済が追いつかなくなった経緯を書いた「陳述書」など,提出しなきゃいけない書類は,かなりたくさんあります。
「弁護士に破産を依頼する」ということの意味は,↑に書いたような,破産を裁判所に申し立てるために必要な,たくさんの書類を弁護士に作ってもらうことを意味します。
そして,破産を裁判所に申し立てると,書類に不備がないかどうか,裁判所が確認して,不備があれば追加で書類を提出します。
追加書類も提出して,不備がなくなったら,裁判所が「破産手続開始決定」というのを出します。
「これから古田博大の破産手続を始めますよ~」と裁判所が宣言するわけです。
で,この「破産手続開始決定」には,日付だけでなく,時刻まで書かれています。
というのも,先ほど書いたように,破産手続は,破産手続開始決定が出た瞬間の財産を全部お金に変えて債権者に配る手続きなので,出た「瞬間」を,日にちだけでなく,時刻も記載して特定する必要があるのです。
こうやって,破産手続開始決定が出ると,古田博大の財産をお金に変えていきます。
「お金に変える」にも,誰かがお金に変えてくれないと,お金に変わりませんよね。
普通であれば,古田博大の財産をお金に変えられるのは,古田博大だけなのですが,破産手続はそうじゃありません。
「破産管財人」といって,古田博大に代わって古田博大の財産をお金に変えることのできる人が,裁判所によって任命されます。
その結果,古田博大は,自分の財産であるにもかからず,自分で自分の財産を売ったり使ったりすることができなくなります。
古田博大の財産を,誰にどれくらいの金額で売却してお金に変えるのか,その決定権が古田博大から破産管財人に移ってしまうのです。
これが「破産」です。
自分の財産なのに,自分で手をつけられなくなる。一応,理屈はこうです。
ただ,僕が経験した破産は,あんまりこういうことはありません。
会社の破産であれば,その会社の財産は,全部管財人に決定権が移ってしまいますが,個人の場合は,「自由財産」といって,破産手続開始決定後も,本人が自由に手をつけていい財産が確保されます。
当たり前ですが,破産した後でも,働いて給料を得て生活していいです。
自分の預金口座に入金された給料は引き出して使っていいですし,家賃も払っていいですし,水道光熱費も払っていいし,お弁当を買って食べてもいい。
破産したからといって,生活が何か変わるわけではありません。
「自由財産」の範囲内で,自由にお金を使っていいんです。そして,自由財産の範囲は,MAX99万円です。
つまり,99万円までは,破産した後でも,決定権が破産管財人に移りません。99万円までは,自分のお金を自分で使っていいんです。
これが,破産なのです。
で,実際問題,破産する人は,99万円ものお金を残していることは稀なので,結局,破産しても,何も財産を奪われることなく進んでいくことが多いです。
財産が99万円を超える場合も,財産が全部売られてしまうわけでもありません。
99万円を超える場合,例えば,保険の解約返戻金がたくさんあって,99万円を10万円だけ超えてしまった場合,保険を解約しなきゃいけないわけでもありません。
解約する代わりに,99万円を10万円だけ超えているのであれば,10万円だけ破産管財人に渡して,保険を解約せずに維持するという取り扱いが多いと思います。
破産手続は,財産を全部お金に変えて債権者に配る手続きではあるのですが,財産を何もかも債権者に配らなければいけないわけではなく,99万円までは債権者に配らなくてもいいんです。
財産が99万円に満たず,そのせいで債権者に何も配られなくても,債権者はそれで我慢しなければいけません。
なおかつ,破産したのが会社ではなく個人の場合,最終的に「免責」といって,借金をチャラにするという決定が出ます。
この「免責」は,必ず出るわけではありません。
法律に,免責を出しちゃいけないケース(「免責不許可事由」と呼ばれます)が列挙されていて,それに当てはまると,裁判所が免責(借金をチャラ)させてくれません。
例えば,借りたお金をギャンブルに使ったとか,破産の手続きに非協力的であったとか,そういう事情が「免責不許可事由」として書かれています。
この「免責不許可事由」に当てはまると,原則として「免責」は出ないのですが,免責不許可事由に当てはまっていたとしても,裁判所が免責させてもいいと判断すれば,免責が出ます。
正直なところ,破産が初めてであれば,よっぽどの事情がない限り,裁判所は「免責」させてくれます。
2回目以降の破産でも,前回の破産からある程度の年数が過ぎていて,かつ,やむにやまれぬ事情で破産に至ったのであれば,それをきちんと説明して反省の色を示せば,免責されることが多いでしょう。
僕も,破産の依頼を受ける場合は,この「免責」を目指して尽力するわけです。
以前にも,ある女性が,スナック経営に失敗し,家賃や未払いの仕入代金などがかさみ,やむなく破産することになったのですが,そのケースは,スナックのお店として借りていたテナントの大家さんから,執拗に取り立てを受けていました。
大家さんとしては,家賃を滞納しているわけですから,それを督促するのは当たり前です。テナント自体は,荷物も全部片付けて大家さんに返還したのですが,大家さんが,訴訟を提起してまで,滞納家賃の支払いを求めてきました。
大家さんが滞納家賃を督促するのは普通なので,大家さんを責めるのはお門違いなのですが(訴訟を提起するのも,大家さんに認められた権利なので,責められる筋合いじゃありません),ただ,大家さんからの督促に対して,この女性はかなり精神的に参ってしまっていました。
この時点で,僕が破産申立ての依頼を受け,大家さんにも,僕が破産の依頼を受けたことを通知しました。
そうすると,大家さんからの督促もなくなり,最終的に,滞納家賃も含めて,無事に免責を得ることができました。
もし破産を申し立てないままだと,免責も得られませんから,いつまでも,「滞納家賃」が残り続けます。
滞納家賃が残っているのであれば,大家さんが督促するのは「普通」なので,それを止めることはできません。
しかし,破産を申し立てて免責を得れば,滞納家賃もすべてチャラになります。
チャラになった後に督促すれば,それは法的根拠が欠けていますし,それでもなお督促を続ければ,「強要罪」になる可能性もあります。
「強要罪」は,暴行又は脅迫によって,義務がないにもかかわらず,何かをさせようとする犯罪です。
もし,免責を受けないままでいると,滞納家賃を支払う「義務」は負い続けるので,「強要罪」は成立しませんが,破産によって免責を得れば,滞納家賃の支払義務は消滅しますから,免責の後に滞納家賃を督促すれば,強要罪が成立する可能性が出てくるのです。
(ちなみに,免責の後も,支払義務が完全に消滅するのではなく,「自然債務」といって,一応,返済としてお金を渡すことはできる状態が続きます。とはいえ,債権者が支払いを請求することはできません)
破産を申し立てて,最後に免責を得られたことで,この女性は間違いなく救われました。そのお手伝いができたのは,本当によかった。
【 まとめ 】
破産しても,当面の生活に必要なお金は残ります。
なおかつ,免責によって支払いから法的に解放され,新たな人生をスタートさせることができます。
破産せずにいれば,いつまでも支払いから逃れられません。
そうすると,増える利息の支払いにいつまでも付き合わされることになります。
借金の支払いに苦しんでいる場合は,気軽に弁護士に相談されてください。
それではまた明日!・・・↓
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