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#425 不動産の財産分与(親がお金を出していた場合)-2
【 自己紹介 】
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このブログでは,2017年1月に弁護士に登録し,現在弁護士5年目を迎えている私古田が,弁護士業界で生き残っていくために必要不可欠な経験と実績を,より密度高く蓄積するため,日々の業務で学んだこと・勉強したこと・考えたこと・感じたこと,を毎日文章化して振り返って(復習して)います。
僕の経験と実績を最も届けなければいけないお相手は,このブログを読んで,僕のお客さんとなってくださるかもしれない方々,つまり,法律のプロではない皆さんだと思っています。そのため,日々の業務・経験がこのブログのトピックになっているとはいえ,法律のプロではない方々にわかりやすく伝わるよう,心がけています。
後戻りの必要なく,スラスラと読み進められるようにも心がけていますので,肩の力を抜いて,気軽な気持ちでご覧くださるとと大変嬉しいです。
【 今日のトピック:不動産の財産分与 】
さて,昨日は不動産の財産分与について書こうと思ったら,めちゃくちゃに脱線してしまいました。
こういう脱線は,「弁護士」と打ち出している僕には求められていないのに,脱線するがままに書き連ねてしまったことを反省しています。
今日はきちんと,「不動産の財産分与」についてお話しします。
さて,昨日も書きましたが,離婚に伴って,「財産分与」なるものが行われます。
「財産分与」って,何をしているかというと,夫婦で築いた財産を「半分こ」にしています。
夫婦で築いた財産を,離婚に伴って半分こにする。
そのこと自体は,当然に聞こえます。
この「半分こ」に異論のある方はほとんどいらっしゃらないと思います。
「妻は専業主婦で,僕の稼ぎで暮らしていたんだから,半分こする必要なんてない!」という考え方は,さすがにもはや時代遅れです。
ドラマ『逃げ恥』で,家事の対価として給料が払われる「契約結婚」が描かれてから,まもなく5年が経過しようとしています。
いくら専業主婦だったとはいえ,それを軽んじ,財産分与を拒否するのは,時代遅れが過ぎるでしょう。
そういう価値観を表に出してしまうと,人間性を疑われるようになってきましたから,専業主婦を軽んじる発言は,「タブー」とも言えます。
ですから,表立って「半分こ」を拒否する人はいません。
ただ,いざ財産分与の金額を計算して,それを提示すると,その金額に驚く方は多いです。
よく問題になるのが,マイホームです。
結婚後に購入した「マイホーム」も,当然ながら,財産分与の対象になります。
例えば,結婚後に5000万円で購入したマイホームがあったとしましょう。
離婚するということは,夫婦は離れて暮らすことになるわけですから,このマイホームは,夫婦のどちらかが引き取ることになります(売却することもあります)。
例えば,夫が引き取ることになったとしましょう。
離婚時には,購入価格の5000万円から価値は落ちています。仮に離婚時の価値が4000万円だったとしましょう。
この「4000万円のマイホーム」を「半分こすること」こそ,「財産分与」なのです。
マイホームを引き取ることになった夫は,4000万円のプラスを引き受けているので,妻には,その半額の2000万円を現金で支払うことになります。
こうやって,「半分こ」を実現していくわけです。
ただ,実際は,財産1つひとつを「半分こ」していくわけではなく,全部を合計して半分こします。
例えば,4000万円のマイホームに加えて,以下の財産もあったとしましょう。
・預金700万円(内訳:夫200万円,妻500万円)
・住宅ローン残債2300万円(夫名義)
この場合,財産分与によって「半分こ」しなきゃいけない財産の総額は,マイホーム4000万円+預金700万円-住宅ローン残債2300万円=2400万円となります。
そうすると,この場合の「半分こ」とは,夫と妻が,それぞれ1200万円ずつ貰うことを意味します。
夫がマイホームとローンの残債を引き取り,預金もそのままだとすると,
・夫=マイホーム4000万円+預金200万円-住宅ローン残債2300万円=1900万円
・妻=預金500万円
となって,夫が700万円オーバーして,その反面,妻が700万円足りないことになってしまいます。
そこで,夫から妻に700万円を現金で支払う,ということになります。
これが,財産分与の基本です。
ただ,よくあるパターンとして,マイホームの購入資金の一部を,夫の両親や妻の両親が出していることがあります。
例えば,↑のマイホーム購入資金5000万円のうち,土地の購入代金が2000万円,建物の新築工事代金が3000万円だったとしましょう。
よくあるのが,土地の購入の手付(頭金)と,建物工事代金の初回を支払ってあげることです。
土地購入の手付は,多くの場合,土地代金の1割です。2000万円の土地なら,200万円です。
手付は,土地売買契約書に印鑑を押す際に現金(または振込)で必要です。つまり,200万円もの現金を用意できないと,土地の購入契約書に印鑑を押せないのです。
土地の契約書に印鑑を押す時点では,住宅ローンを借りているわけでもありませんから,それだけの大金を用意できないことも多いです(普通は,土地の契約書に印鑑を押した後で,住宅ローンの審査を申請します)。
だから,その手付200万円を,夫または妻の両親が用意することは,往々にしてあります。
そして,建物の建築代金というのも,たいていは,3回に分けて払います。
工事開始前と,中間と,建物が完成してカギを受け取った後の3回です。
建物の建築については,住宅ローンの審査が下りた後に工事を開始するのが普通でしょう。
だから,「お金を用意できないから親に頼る」という場面は少ないと思います。
とはいえ,かわいい子どもに援助する親は多いですし,ここで援助しておけば,事あるごとに子どもに恩を売ることもできるという,現実的な利益もあります。
だから,建築資金を援助する親も一定数います。
今回のケースでは,建築代金3000万円のうち,初回の代金800万円を援助してもらった,としましょう。
そうすると,土地の手付200万円+建築代金800万円=1000万円が,親から援助されたことになります。
5000万円のうち1000万円が,親から援助されたことになります。援助した親は,「妻の」親だという設定にします。
このケース,どういう風に財産分与を考えていけばいいでしょうか。
よくあるのが,妻の両親が,「援助した1000万円を返せ!」と言ってくるパターンです。
自分の娘のために援助してあげたわけで,その娘が離婚するとなれば,マイホームを引き取ることになった夫からは,援助した1000万円をまるまる返してほしい!ということです。
ご両親のお気持ちはよくわかりますが,ただ,援助したマイホームは,当初の価値5000万円から,4000万円に下落してしまっています。
マイホーム自体の価値が下がっているのに,援助した金額をまるまる返せ!と請求するのは,少し無理があるような気がします。
じゃあ,どうやって算定するのかというと,マイホームのうち,妻の両親が援助した「割合」をはじきだすのです。
ゆっくり説明します。
5000万円のマイホームは,妻の両親が1000万円を援助し,残りの4000万円は夫が住宅ローンを借りて,資金を確保したということにしましょう。
そうすると,5000万円のうち,2割は,妻の両親がお金を出し,残り8割は,夫の住宅ローンが原資ということになります。
結婚後に借りた「夫の住宅ローン」は,財産分与の対象となって,離婚に伴って「半分こ」する必要があるので,夫の住宅ローンでカバーした,マイホームの8割は,「半分こ」する必要があります。
しかし,妻の両親がお金を出したマイホームの2割は,妻の「特有財産」といって,財産分与の対象となりません。
つまり,マイホームの2割は,妻にまるまる返さなきゃならないわけです。
ただ,マイホームを物理的に切り分けて2割を返すことはできないので,お金で計算して2割を返すことになります。
具体的に計算します。
マイホームの離婚時の価値は4000万円でした。このうち,8割だけが財産分与の対象となるので,「半分こ」する必要がある金額は,3200万円(4000万円×8割)です。
そして,預金が700万円(夫:200万円,妻500万円),住宅ローンが2300万円(夫名義)があるわけですから,これを足し合わせると,
3200万円+700万円-2300万円=1600万円となり,これを「半分こ」すると,800万円です。
つまり,「夫も妻も800万円だけもらう」という結論にしなきゃいけないのです。
じゃあ,どうやって「夫も妻も800万円もらう」という結論にするかというと,
夫がもらう財産の合計は,マイホーム4000万円+預金200万円-2300万円=1900万円です。
夫は,800万円しかもらえませんから,1100万円オーバーです。
だから,夫は妻に,1100万円を現金で支払わなければいけません。
そうすると,妻は,預金500万円+夫からの1100万円=1600万円貰うことになります。
しかし,結論は「夫も妻も800万円もらう」のはずでした。妻が1600万円を貰ってしまっているので,妻が800万円オーバーしているように見えます。
ただこれは,マイホームの2割が,妻の「特有財産」であることを反映しているだけす。
先ほど説明したように,マイホームの2割は,妻の「特有財産」として,財産分与の対象となりません。
しかしながら,その「妻の特有財産」も含めて,夫がマイホーム全部を引き受けているので,夫は,妻に対し,「妻の特有財産」部分=800万円を返さなきゃいけません。
夫:800万円,妻:1600万円となっているのは,「特有財産部分=800万円を妻に返す」からです。
もっと厳密に書くと,
・夫:800万円(財産分与のみ)
・妻:800万円(財産分与)+800万円(マイホームの特有財産部分)
となります。
妻の両親としては,援助した1000万円のうち,800万円しか返ってこないことになりますが,マイホーム自体が,5000万円から4000万円に値下がりしていますから,それに応じて返金額が減少してしまうのはやむを得ないでしょう。
昨日のブログでも書きましたが,マイホームを買うということは,必ず値下がりする「建物」と,価値が変動する(=リスクがある)「土地」に,お金を「投資」することを意味します。
バブルの前後を通じて,お金をお金として持っていた人が最も得をしているという不都合な真実に目を向けて,「みんなマイホームを買っているから」と安易にマイホームを買うことは控えましょう。
・住居は賃貸で確保し,お金はお金として貯蓄しておく。
・貯蓄に余剰が出たら,インデックス投資(株式市場全体に対する投資)をする。
・最も効率の良い投資は労働市場=汗水垂らして働くこと
このことを頭にインプットして,普通に働いて普通に家賃払って普通に貯金して生きていきましょう。
それではまた明日!・・・↓
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