過払金を弁護士の僕ならどうするか-5(貸金業者の肩を持った国会)
【 自己紹介 】
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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。
僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。
ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。
あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。
ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。
【 今日のトピック:過払金 】
今日も引き続き、過払金について書いていきます。
さて、昨日まで過払金の歴史についてつらつら書いてきました。
利息制限法という法律があることはご存知の方も多いと思いますが、この法律は、その名の通り、利息の上限を決めています。
・10万円まで:年利20%
・10万円~100万円:年利18%
・100万円~:年利15%
こういうふうに利率の上限が決められているのです。
しかし、それと同時に、「任意に返済した場合」は、上限利率を超えて返済した利息の返金を求めることはできない、と書かかれていました。
自ら進んで利息制限法違反の利息を返済しているわけですから、後からその返金を求めることはできないよね、ということが利息制限法には書かれていたのです。
しかし、そうすると、せっかく上限利率を決めているのに、上限利率が有効に適用されるのは、「任意に返済した場合」以外、つまり、「無理矢理返済させられた」ケースのみとなってしまいます。
最高裁は、ここを「けしからん」と考えて、「任意に返済した」場合であっても、利息制限法の上限利率は有効に適用される、と示しました。
つまり、むりやり利息制限法違反の利率で返済させられた場合だけでなく、自ら進んで利息制限法違反の利率で返済した場合であっても、利息制限法の上限利率以上に返済しているのであれば、上限利率を超えて返済した分は返金してもらえる、ということです。
1968年の最高裁判決は、この点がめちゃくちゃ画期的でした。
ところが、1983年、貸金業法が改正され、いわゆる「みなし弁済」が認められるようになりました。
そもそも、1968年の最高裁判決によって、「任意に返済した」かどうかはどうでもよくなりました。
それまでは、「任意に返済した」となれば、利息制限法の上限利率が適用されなくなるので、「任意に返済した」かどうかは、過払金(利息制限法の上限利率以上に返しすぎてしまっているお金)を返金できるかどうかを左右していました。
しかし、1968年の最高裁判決によって、「任意に返済した」場合であっても、過払金の請求が認められるようになったので、「任意に返済した場合に過払金は請求できない」という条文は、形式的には残されていたものの、実質的には無意味になっていました。
ところが、国会は、この「任意に返済した」の条文を復活させてしまいます。
つまり、新しく法律を改正して、いろいろと要件を新設し、その要件を満たす場合は、「任意に返済した」とみなすことにしたのです。
だから、「みなし弁済」と呼ばれます。「任意に返済した」と「みなす」からです。
あらあら、せっかく、最高裁が、「任意に返済した」場合であっても、過払金を請求できると認めてくれたのに、国会は、この最高裁判決を無視し、この判決と相反する条文を作り出してしまいました。
やはり、「任意に返済した」場合は過払金は請求できなくなる、と国会議員たちは考えていたのです。
貸金業者たちは、この法改正を受けて、当然、「任意に返済した」とみなされるために、新設された要件を満たそうと躍起になりました。
新設された要件は、所定の内容が書かれた書面の交付などが要件だったので、貸金業者たちは、利息制限法違反の利率で利息を支払ってもらうために、法律に則った書面のひな形を作成し、それを必ず交付するようになりました。
その結果、貸金業者たちは、「みなし弁済」を盾に、利息制限法違反の高利率で利息を取り立て続けました。
↑の法改正は、高利貸しによる被害を防止することを目的としていたということですから、その結果、高利貸しの肩を持ってしまい、過払金請求を封じ込めてしまっているいのですから皮肉なものです。
借主側に立つ弁護士たちも、かなり熾烈に貸金業者と裁判で戦ったようです。
借主側とすれば、利息制限法に基づいて再計算して、過払金を請求するんですが、これに対し、貸金業者側は、みなし弁済が成立したと主張します。
結局、みなし弁済が成立したかどうかが争点となるんですが、もちろん、貸金業者も、弁護士に相談した上で、みなし弁済が成立すると認められたからこそ、利息制限法違反の高利貸しを行っているわけで、みなし弁済が成立していないと主張することは簡単ではなかったようです。
さて、こういった「みなし弁済が成立したかどうか」を激しく争っていた矢先、2006年に、今現在にまでつながる、画期的な最高裁判決が出ました。
この2006年の最高裁判決をきっかけに、過払金は一大ブームを巻き起こすことになります。
この話はまた明日書きます。
それではまた明日!・・・↓
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