貸したお金を弁護士の僕ならどうやって返してもらうか-20(「第三者からの情報取得」)
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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。
僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。
ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。
あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。
ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。
【 今日のトピック:貸した金を返してもらう 】
今日も引き続き「貸したお金を返してもらう」についてお話していきます。
昨日は、「財産開示」という手続きについてお話しました。
「財産開示」とは、強制執行しようにも強制執行の対象とする財産(無理矢理売却してお金に変えちゃう財産)の在り処がわからない場合に、財産の在り処を調査する役割を担っています。
「財産を調査して、判明した財産を売却してよ」という強制執行はできないんです。強制執行する場合は、必ず対象財産を特定しなきゃいけません。
判決書なり、裁判上の和解調書なりがあれば、弁護士会を通じて預金口座を調べることができるので、まずは、こうやって預金口座を調べて、その預金口座に対して強制執行します。
それで、全額返済されれば、めでたしめでたしです。
全額返済されなかった場合は(預金口座を強制執行した場合、返済に充てられるのは、裁判所から郵送される差押通知書が銀行に届いた日時点の預金残高だけです)、他に財産の在り処に目星がなければ、「財産開示」を申し立てて、キャバ嬢本人に直接質問することになります。
昨日も説明したように、「財産開示」は、キャバ嬢を裁判所に呼び出して、質問する手続きです。
「財産開示」を申し立てると、裁判所からキャバ嬢に呼出状が郵送されます。呼出状に記載された期日に出頭しないと刑事罰が課されます。
だから、基本的にはキャバ嬢は出頭します。出頭したキャバ嬢に対して質問し、財産の在り処を探ります。
で、その質問に対する答えによって、財産の在り処が具体的に判明すれば(強制執行の申立書に記載されるくらい具体的にキャバ嬢が説明してくれれば)、その財産を記載した申立書を裁判所に提出して、強制執行を申し立てればいいです。
しかし、キャバ嬢の説明があいまいなまま終わってしまうことも多いでしょう。
というか、キャバ嬢からの説明だけで、申立書に書けるくらいの詳しい情報が手に入れられるとは思いません。
例えば、
「亡くなった父親の遺産があって、その遺産には土地があったらしく、私の名義で相続した土地もあったらしいです。ただ、手続きを兄に任せていたので、具体的にどの土地なのかは知りません。確か福岡市内の土地でしたが、それ以上は知りません。固定資産税も兄が遺産から支払っています。兄は、独り占めしたかったようですが、独り占めはよくないと母が言ったようで、その結果、私の名義になったようです」
こんな説明がキャバ嬢から返ってきたとすると、キャバ嬢名義の土地があるようですが、地番も何もわかりません。
そんな状態では、強制執行はできません。きちんと地番を確定しないと、強制執行対象財産を特定したことにはならないからです。
せっかく、財産開示の結果、キャバ嬢が土地を所有していることが判明したにもかかわらず、どこの土地なのかわからないのであれば、それは、財産不明の状態と同じです。
じゃあ、こんな場合どうするかというと、「第三者からの情報取得」という手続きを使います。
これは、登記所(法務局)や市町村、金融機関などに、キャバ嬢の財産があるかどうか照会できる制度です。
登記所(法務局)や市町村、金融機関などをまとめて「第三者」と呼んでいるのです。
第三者から、キャバ嬢の財産について情報を取得できるので、「第三者からの情報取得」と呼ばれています。
「第三者からの情報取得」も、僕からの申立てで始まります。申立書を裁判所に提出することで始まります。
で、「第三者からの情報取得」を始める要件が少し複雑で、登記所(法務局)に不動産の情報を提供してもらう場合は、財産開示を先にやっておかないと使えません。
市町村や年金機構などに勤務先を照会することもできるんですが、これは、養育費の支払いまたは生命・身体の侵害を理由とする損害賠償請求の場合に限って使えるので、貸金を請求している今回の設定では使えません。
預金口座については、財産開示を先にやっておかなくても、「第三者からの情報取得」を使えます。
ただ、「日本中の銀行全部!」なんて申立てはできません。
やってもいいんですが、銀行が1つ増えるごとに、裁判所に4000円を納めなきゃいけないので、銀行全部に照会していたら、あっという間に費用倒れになってしまいます。
だから、ある程度金融機関に目星をつけておかなきゃいけません。やみくもにやってもお金のムダです。
そういう意味でも、財産開示を先にやっておくのは賢明かもしれません。本人に質問すると、なにか手がかりが出てくる可能性もあります。
出頭が刑事罰によって担保されていますし、出頭した後、説明を拒んだり、ウソの説明をしたりするのも刑事罰の対象となっています。
刑事罰を受けますよ、と出頭した法廷で裁判官から説明されると、結構ウソはつきにくくなるもんだと僕は思います。
結局、そうすると、僕が判決(または裁判上の和解)の後に、キャバ嬢の財産を調べる方法としては、
・キャバ嬢の住所近くの金融機関に弁護士会を通じて預金口座の有無を照会する
・住所が持ち家かどうか法務局で調べる
・判明した財産に対して強制執行する
・強制執行で全額返済に足りなければ財産開示を申し立てる
・財産開示で手がかりがつかめたら、第三者からの情報取得を申し立てる
こんな感じです。
やっぱり、大変そうです(汗)。
初回からの繰り返しになりますが、お金を借りる人は、お金がないから借りていいます(借金しなくても普通に暮らせますからね)。
だから、お金を「貸す」のは、「お金がない人」からお金を返してもらうことを「お金がない人」と約束することなので、最初から無理難題です。
「貸付け」は本当に避けるべきです。「あげた」と思ってしまうのがいちばんいい。
最初から「あげた」と思ってしまえば、「お金が返ってこない」と悩むことはありません。
お金を貸すと、
・貸したことの立証
・返済原資となる財産があるか
という2つのハードルが大きくのしかかります。
もちろん、「どうしても諦められない」という理由で、最後の最後まで戦ってもいいですが、「諦める」という解決方法も十分に検討されてください。
さて、今日でこのテーマはおしまいにして、明日からはテーマを変え、不倫についてお話しようと思います。
不倫は不倫でも、慰謝料を請求する側ではなく、請求「される」側です。
今日はこの辺にします。
それではまた明日!・・・↓
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