#445 明るい話題について書こうとしましたが,結局難しかったです
【 自己紹介 】
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日々の業務経験がトピックになっているとはいえ,法律のプロではない方々にわかりやすく伝わるよう,心がけています。スラスラと読み進められるよう,わかりやすくシンプルな内容でお届けしております。肩の力を抜いてご覧くださると嬉しいです。
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【 今日のトピック:弁護士が仕事で体験する明るい話題 】
昨日と一昨日で,かなり暗い話題が続いたので,今日は明るい話題を書いてみたくなりました。
昨日のブログ↓
一昨日のブログ↓
しかし,弁護士の仕事で,「明るい話題」に出会うことはほとんどありません。
弁護士は,何かしらの紛争が生じてから,動き出す仕事です。
紛争の予防として,契約書のチェックや,公正証書遺言作成の依頼を受けたりしますが,僕の場合,そういった依頼はかなり限定的です。
自分ではどうしようもない紛争に直面し,弁護士に助けを求めるケースがほとんどです。
だからこそ,仕事上「明るい話題」なんて,まずありません。
紛争に直面しているという,めちゃくちゃマイナスな状態で仕事がスタートするのが,弁護士です。
しかも,めちゃくちゃマイナスな状態に陥っているお客さんに,着手金の支払いを要求し,着手金が支払えないのであれば依頼をお受けできません,とマイナスな状態に陥っているお客さんに対して,高圧的な態度をとってしまいます。
まあ,弁護士としては,弁護士の仕事でマネタイズして生活費を工面していて,着手金がもらえなかった死ぬしかなくなってしまうので,着手金の支払いをお願いするのは,許していただきたいところです。
いくら,お客さんが紛争に直面していて,めちゃくちゃマイナスな状態に陥っていたとしても,お金が貰えなければ弁護士も死ぬしかなくなってしまいます。
そんな「死ぬしかない」仕事は誰もやりたがりません。そうなると,紛争に直面した際に駆け込める弁護士が1人もいなくなってしまいます。
だから,弁護士が人間として生きるために必要な生活費として,お金は頂いております。
さて,話を続けますが,紛争に直面してめちゃくちゃマイナスに陥っているお客さんが,そのマイナスの状態から,プラスに上回くことがあります。
例えば,貸していたお金が返済されたとか,交通事故の損害賠償金が入金されたとか,そういうときは間違いなく,「めちゃくちゃマイナス」の状態からは好転しています。
ただ,それは,お客さんが本来持っていた権利が実現されただけです。
弁護士がどれだけ優秀でも,そもそもの権利がなければ,どうしようもありません。
僕ら弁護士は,お客さんが持っている権利が,より確実に実現できるよう,お手伝いをしているにすぎないのです。
だから,貸していたお金が返済されたとか,交通事故の損害賠償金が入金されたとか,そういう場面での「好転」は,あくまで,「めちゃくちゃマイナス」が「プラスマイナスゼロ」になっただけです。
本来実現されるべき権利が実現されただけなので,「プラス」は発生していません。マイナスだったのが「プラスマイナスゼロ」になっただけです。
まあ,この「プラスマイナスゼロ」にめちゃくちゃ感謝してくださるお客さんもいて,その感謝はとても嬉しいので,この喜びを「明るい話題」と捉えてもいいのですが,とはいえ,「本来実現されるべき権利が実現されただけ」ということに変わりはありません。
これは,例えば,ハウスメーカーの仕事とは違うのです。
ハウスメーカーは,お客さんから依頼を受けて,マイホームを建築します。
着工する前から,お客さんはワクワクがとまりません。夢のマイホームを建築するなんて,めちゃくちゃワクワクするでしょう。
そして,着工後,少しずつ自分のマイホームが出来上がっていく様子を見たら,そりゃ,嬉しくてたまりません。
なぜなら,マイホームが「なかった」状態から,マイホームが「ある」状態に変わり,そこには,「マイホーム」という,間違いのないプラスが存在するからです。
ほとんどの商売が,このハウスメーカーと同じです。
お金を払ってくれたお客さんに,お金と引き換えに,何かしらのプラスを提供する。それこそが商売なのですが,弁護士が提供するのは,「マイナス」を「プラスマイナスゼロ」にしてあげるだけです。
うーん,「明るい話題」は,原理的にムリそうですね(笑)。
先ほど書いたように,マイナスをプラスマイナスゼロにしたことによって喜んでくれるお客さんが間違いなくいらっしゃるので,その「喜び」が唯一の「明るい話題」かもしれません。
そうすると,僕らが「明るい話題」に接することができるのは,お客さんが喜んでくださった,そのときだけなのかもしれません・・・・。
でも,お客さんが喜んでくださるかどうかは,そのお客さん次第です。
「弁護士が尽力してくれたおかげで権利が実現できた」と思ってくれるか,「本来実現されるべき権利が実現されただけだ」と思われてしまうのか,それはお客さん次第です。
そして,弁護士としては「弁護士が尽力してくれたおかげで権利が実現できた」と思ってほしいですが,それを強要することはできません。
「本来実現されるべき権利が実現されただけだ」という考えを,弁護士が否定することまではできないでしょう。
うーん,唯一「明るい話題」とギリギリ言えるかもしれないのは,相続の場面でしょうか。
相続とは,亡くなった方の財産を,生きている人に配分する,という話です。
もちろん,亡くなった方の財産を相続する権利があるからこそ,その権利を行使して,配分を受けることができるわけですが,相続は,結局,「自分以外の財産を貰う」ということです。
いわば,「棚から牡丹餅」なのです。相続は,どこまでいっても,「棚ボタ」なのです。
というか,「棚ボタ」だからこそ,「相続」なのです。「棚ボタ」ではなく,生きている人の遺産が混じっているのであれば,その「混じっている」財産は,そもそも「遺産」に含まれません。
それと,生きている人のおかげで遺産が築かれたのであれば,「寄与分」という制度に基づき,「おかげで」の分は遺産から差し引かれ,「おかげ」を与えた人が直接受け取ります。
つまり,「遺産」を「相続する」というのは,亡くなった方本人が自分で築いた財産を,その人の子どもや配偶者が,「棚ボタ」的に貰う,ということなのです。
もちろん,子どもや配偶者が,いろいろと亡くなった方の面倒を見たりして,そのおかげで介護費用を支出せずに済んだとか,そういった話はあると思いますが,とはいえ,子どもは親を扶養する義務があるので,身の回りの面倒を見てあげたとしても,それは,この「扶養する義務」を果たしただけ,と評価されてしまいます。
いわば,「親」という立場上,子どもから扶養を受ける(身の回りの世話をしてもらったり,扶養料をもらったりする)ことは,当然の権利なので,その扶養の範囲内である限り,「おかげで」とは認められないのです。
だから,結局,「相続」は「棚ボタ」なのです。
この「棚ボタ」という側面に着目すれば,「明るい話題」と言えるかもしれません。
いくら「親の財産」とはいえ,「親」と「自分」は違います。
自分とは違う人の財産を,その人が亡くなったことを理由にもらい受けることができるのは,やっぱり「棚ボタ」で,この「棚ボタ」を実現してげられるのは,「明るい話題」と,ギリギリ言えるような気がします。
この「棚ボタ」という表現に対し,反発を覚える方も多いと思います。
「身の回りの世話をしていなかった二男にとっては棚ボタだろうが,身の回りの世話をしていた長男の私にとっては当然の権利だ!」という意見がありえます。
ただ,長男だからといって,身の回りの世話を全て引き受けなければいけないわけではありませんし,同居している子どもが,↑の「扶養義務」全部を果たさなければいけないわけでもありません。
扶養義務は,兄弟が,それぞれの収入に従って,平等に負担する必要があります。
同居しているからとか,長男だから,という理由で全部負担しなければいけないわけではないのです。
だから,自分だけで扶養義務を負担し続けるのは絶対にやめましょう。それだと,扶養義務を果たさない他の兄弟に対して憎しみを募らせるだけです。
その憎しみが,両親の死後に爆発し,大きな紛争となってしまうのは目に見えています。
憎しみ・恨みが蓄積する前に,両親の面倒をどう見るか,兄弟のうち誰がどれくらい金銭的に負担するか,きちんと話し合いましょう。
【 まとめ 】
今日は,明るい話題を書こうと思っていたのですが,なかなか難しかったです(笑)。
仕事では,明るい話題に出会うことはまずありませんが,それでも,少しずつ着実に紛争を解決に導くのは性に合っているので,仕事は楽しいです。
たまに訪れる,お客さんからの感謝の言葉を心の拠り所にしながら,今日もぼちぼち働きます!
それではまた明日!・・・↓
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