不倫の慰謝料を請求されたら-17(求償「アリ」か「ナシ」か)
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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。
僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。
ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。
あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。
ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。
【 今日のトピック:不倫の慰謝料を請求されたら 】
今日も引き続き、不倫の慰謝料を請求されたケースについてお話していきます。
さて、昨日は難しい法律の話が続きました。
まずは、慰謝料の相場について説明しました。
慰謝料とは、「精神的苦痛を金銭に換算したもの」なので、「相場」なんて本来ないんでしょうけど(人それぞれ苦痛の感じ方は違うので)、とはいえ、苦痛を感じやすい人かどうかで金額が変わってしまうのもよくない感じがしますので、ある程度の「相場」が形成されています。
その相場によると、今回の設定でいえば(婚姻期間4年、不倫期間半年)、僕と妻の不倫によって夫婦が離婚してしまった場合なら、だいたい150万円~200万円、離婚していないなら100万円~140万円くらいだと思います。
その後、共同不法行為と求償の話について書きました。
「共同不法行為」とは、加害者が複数の不法行為です。不倫が典型的な例です。
言い方は悪いですが、不倫してしまうと、2人がかりでもう一方の配偶者を傷つけることになるわけです。
↑の慰謝料の相場については、高すぎる・安すぎるいろんな意見があると思いますが、弁護士としての僕のの感覚では、それなりに高いと思います。
「精神的苦痛」って、実害がないんです。実害があれば、それをお金に換算すればいいだけですから。
実害が一切なく、精神的に傷ついたことをお金に換算するわけです。だから、基本的に相場は安くなりがちです。
例えば、交通事故にあった場合に、慰謝料として100万円以上請求できるのは、結構ひどいケガをした場合に限られます。
しかしながら、不倫の場合は、実害(ケガや財産的な損害)は一切なくとも、↑くらいの慰謝料がもらえるようになっています。
結局、この日本では、結婚による「性的独占」をかなり重く見ているのです。だからこそ、不倫慰謝料の水準は、それなりに高くキープされています。
婚姻届を出してまで「結婚」という制度を利用した場合の「性的独占」という約束は、いわば、結婚という合意の核でもあるのでしょう。
その核を傷つけたんだから、約束違反の程度は重大で、それなりに高額の慰謝料を支払わないと、精神的苦痛を補填したことにならないことになっています。
で、共同不法行為の話に戻りますが、これは、加害者複数で被害者を傷つけているので、加害者は、各自がそれぞれ損害を負担しなきゃいけません。
誰か1人が全額負担するわけではありません。特に修正すべき点がない限り、各自が平等に負担します。
加害者2人なら2分の1ずつ、3人なら3分の1ずつです。
しかし、被害者に対して、「僕は3分の1しか負担しなくていいから3分の1しか払わないよ」とは言えません。被害者に対しては、全員、全額の支払義務があります。
とはいえ、全額支払った加害者の1人は、他の加害者に対して、負担割合を超える金額の支払いを請求できます。
加害者2人なら、全額払った加害者は、そのうち2分の1をもう1人の加害者に請求できますし、加害者が3人なら、全額払った加害者は、もう2人に対して、3分の1ずつ請求できます。
これが理屈なんですが、ただ、最初から「負担割合だけ払う」ということはよくやります。
つまり、加害者2人であれば、加害者1人から全額もらうのではなく、半額だけもらう、ということです。
今回の不倫の例で言えば、夫が、僕から慰謝料全額もらうのではなく、半額だけもらう、ということです。
これは、夫にとって不利な話です。なぜなら、本当は僕から全額もらえるはずなのに、半額だけもらうことになっちゃうからです。
じゃあ、夫はこの話にのってこないかというとそうでもなくて、というのも、僕から慰謝料全額もらうと、僕は妻に対して求償できることになるからです。
当たり前ですが、夫に全額払おうが、夫に半額払おうが、僕の負担割合は同じなので、僕の最終的な負担額は同じにならなきゃいけません。
だから、夫に全額払ったのであれば、当然、妻から半額支払ってもらわないと困ります。
そうやって、僕が全額払うと僕が妻に求償するので、それを回避しようと思う夫は、最初から「半額だけでいいよ」となります。
不倫した妻に対して、僕が求償してこようが関係ないのでしょうが、妻への求償を避けようとする夫はそれなりにいます。
というのも、不倫した妻と離婚しない夫も結構いるからです。離婚しないのであれば、妻と夫で家計は同じです。とすれば、妻が僕から求償を受けてしまうと、家計から慰謝料の半額が出ていってしまうので、結局、家計に残るお金は同じになります。
こういう感じで、
①後から僕が妻に求償してもいいから慰謝料全額払ってほしい
②後から妻に求償されると結局同じになるから最初から半額だけでいい
この2つのうち、どちらにするのかで、慰謝料が全額か半額か変わってきます。
僕の支払う金額は、①は②の2倍ですから、エライ違いです。
このどちらにするかを決めないままだと、交渉の前提が食い違ってしまっているので、まとまるものもまとまりません。
もっというと、この前提について共通認識がないまま交渉を進めると、あとで「そんなの聞いてない」という話にもなりかねません。
だから、不倫の慰謝料を交渉する場合、「後で求償アリ」なのか「後で求償ナシ」なのかは、きちんと合意しとかなきゃいけません。
そして、夫が離婚するかどうかで慰謝料の相場が変わってくるので、ここもはっきりさせときましょう。
今日はこのへんにします。
それではまた明日!・・・↓
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