#477 少年事件の進み方:20歳未満が犯罪を犯すと「少年事件」になります。
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【 今日のトピック:少年事件 】
今日は「少年事件」についてお話してみたいと思います。
「少年事件」って何かというと,実は3種類あります。
・少年が「犯罪」を犯した場合
・13歳以下だから「犯罪」は犯しようがないんだけれども法に触れることをしてしまった場合
・犯罪を犯す危険性がある場合
上の2つは,犯罪を犯していたり,年齢のせいで犯罪にはならないだけで法には触れているので(13歳までは「刑事無責任」といって,犯罪が成立しません),家庭裁判所が関与して,少年の処遇を決めるのもわかるんですが,一番下の「犯罪を犯す危険性がある場合」って,犯罪を犯してもいないのに,「危険性」があるだけで,家庭裁判所のお世話にならなきゃいけないなんて,かなり乱暴な制度だと思います。
僕はまだ,「犯罪を犯す危険性がある場合」に遭遇したことはありませんが,かなり怖いなあとはなんとなく思っています。
「犯罪を犯す危険性がある」と認められてしまうと,法に触れることをしていないにもかかわらず,「少年事件」として,鑑別所に少年を閉じ込めることができるようになってしまいます。
「犯罪を犯す危険性がある場合」の少年を「虞犯少年(ぐはんしょうねん)」と呼ぶのですが,虞犯少年を鑑別所に閉じ込めてまで,いろいろと調査しなきゃいけないケースはあまり多くはないと思いますが,ただ,鑑別所に閉じ込めることは法的に可能です。
さてさて,「虞犯少年」の話はこれくらいにして,よくある「少年事件」は,犯人が20歳未満の場合です。
傷害事件とか,万引とか,薬物事犯とか,普通に犯罪となることをやってしまったけれども,被疑者・被告人が20歳未満だと「少年事件」となります。
先ほどの3分類でいえば,一番上又は真ん中のケースに当てはまります。
まあ,13歳以下の犯罪というのも,そこまで多くはありません。僕もまだ経験がありません。
結局,僕がこれまで経験してきたのは,すべて,一番上のケースです。
14歳以上19歳以下の少年が犯罪を犯した結果,「少年事件」となる,というケースが僕がこれまで経験してきた少年事件です。
さて,少年事件は,20歳以上の被疑者・被告人と何が違うかということですが,その前に。
実は,始まりは同じなのです。
逮捕状や現行犯逮捕によって逮捕されて,その後勾留されるまでは,20歳以上の被疑者・被告人と同じです。
ただ,そこからが違います。
20歳以上の場合は,逮捕・勾留の後に待ち受けるのは「起訴」です。
検察官が,被疑者を起訴するかどうか決めて,起訴すると決めたら起訴され,起訴しないと決めたら起訴されずに釈放されます。
しかし,少年事件の場合は,「起訴」ではなく,「家庭裁判所へ送致」されます。
「家庭裁判所へ送致」って,どういうことかというと,警察署の留置場で勾留中の被疑者(少年)が,警察車両で家庭裁判所まで連れて行かれます。
(ちなみに,20歳以上で「起訴」された場合,被疑者はどこにも行きません。起訴状が留置場まで届きますが,前日までと同じように,留置場での暮らしが続きます)
家庭裁判所まで連れて行かれた少年が何をするかというと,裁判官と話します。
裁判官と話すのはどうしてかというと,実は,この裁判官が,少年の処遇を決めるのですが,処遇を判断する材料を少年から引き出すためです。
(ちなみに,20歳未満であれば,女性であっても「少年」に含まれます。)
家庭裁判所に送致された(家庭裁判所に連れて来られた)少年には,何が待ち受けているかというと,「釈放」or「鑑別所」です。
裁判官が,鑑別所で更に少年を調査する必要があると判断したら,少年は家庭裁判所からそのまま鑑別所に連れて行かれます。
「いったん外に出る」なんてこともできず,そのまま鑑別所へ直行です。
これに対し,鑑別所に閉じ込めてまで調査する必要はないな,と裁判官が思えば,少年は,連れて来られた家庭裁判所で釈放されます。外に出て,自分の足で自宅まで帰ることになります。
これが「家庭裁判所送致」と呼ばれるものです。逮捕・勾留の後,更に鑑別所に閉じ込める必要があるのか,釈放していいのか。家庭裁判所に連れて来られた少年と話をして,そして,警察がまとめた事件の資料を見て,裁判官が判断します。
実は,この2つのほかに,選択肢はもう1つあります。「逆送(ぎゃくそう)」です。
「逆走」ではなく「逆送」です。
家庭裁判所へ連れて来られた少年を,鑑別所に閉じ込めるでもなく,釈放するでもなく,再び警察署の留置場へ逆戻りにしてしまうのが「逆送」です。
鑑別所に閉じ込める,または,釈放する場合,その先に待っているのは「審判」という,家庭裁判所の手続きです。
これに対し,「逆送」は,家庭裁判所の手続きではなく,刑事手続がふさわしいケースです。
「審判」という家庭裁判所の手続きは,少年に刑罰を与えることが目的ではありません。審判によって,少年院送致という判断が出ることもありますが,「少年院」は「刑罰」ではないのです。あくまで,少年の「更生」を目的としているのが少年院です。
だから,「審判」が適切なのは,刑罰を与えるよりも,少年の更生を優先するべき場合に限られます。ほとんどの少年事件が,「審判」とはなりますが,殺人事件や放火事件など,重大犯罪については,いくら少年とはいえ,刑罰を与えるべきなので「逆送」となります。
重大犯罪の場合は,少年の更生よりも,刑罰を与えることを優先して「逆送」となってしまうのです。
さて,僕もまだ「逆送」の経験はないので,「鑑別所」と「釈放」という家庭裁判所の手続きを前提に話を進めていきましょう。
ここで大切なことは,鑑別所送りになっても,釈放されても,それで事件が終わるわけではない,ということです。
家庭裁判所へ送致されても,その時点では,鑑別所に閉じ込めるかどうかを決めるだけです。
最終的に,少年の処遇を決めるのは,「審判」です。
「審判」で,「少年院送致」または「保護観察処分」が決まります。
ちなみに,「鑑別所」と「少年院」は全然違います。「鑑別所」は,審判の前に,少年にとってどんな処遇がふさわしいのか調査する機関です。
鑑別所に閉じ込められてはしまいますが(基本的に4週間閉じ込められます),あくまで,少年の調査を目的とするのが鑑別所です。
これに対し,少年院は,審判の後に,少年院で矯正することがふさわしいと判断された少年を矯正する場所です。
「矯正(きょうせい)」というのは,少年が今後社会できちんと生きていけるように再教育することです。
・鑑別所は少年を調査する場所
・少年院は少年を再教育する場所
普通に暮らしていると,鑑別所と少年院の区別は難しいと思いますが,その目的は全然違うんです。
【 まとめ 】
犯罪を犯した被疑者が少年の場合,逮捕・勾留までは同じですが,その先を扱うのが家庭裁判所なので,少し手続きが違ってきます。
少年の場合は,少年の「可塑性(かそせい)」が重視されます。「可塑性」というのは,「やり直しがきく」ということです。
20歳以上の大人とは違って,少年は,きちんと再教育することで,やり直しがきくからこそ,刑罰を与えるのではなく,再教育を施して,今後過ちを繰り返さないようにしておくのです。
こういった理念に基づき,家庭裁判所が関与して,少年の処遇を決めます。
今日はこれくらいにして,明日,もう少し続きを書きます。
それではまた明日!・・・↓
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