#409 離婚するための条件-3
【 自己紹介 】
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このブログでは,2017年1月に弁護士に登録し,現在弁護士5年目を迎えている私古田が,弁護士業界で生き残っていくために必要不可欠な経験と実績を,より密度高く蓄積するため,日々の業務で学んだこと・勉強したこと・考えたこと・感じたこと,を毎日文章化して振り返って(復習して)います。
僕の経験と実績を最も届けなければいけないお相手は,このブログを読んで,僕のお客さんとなってくださるかもしれない方々,つまり,法律のプロではない皆さんだと思っています。そのため,日々の業務・経験がこのブログのトピックになっているとはいえ,法律のプロではない方々にわかりやすく伝わるよう,心がけています。
後戻りの必要なく,スラスラと読み進められるようにも心がけていますので,肩の力を抜いて,気軽な気持ちでご覧くださるとと大変嬉しいです。
【 今日のトピック:離婚するための条件 】
さて,今日も,昨日に引き続き,「離婚するための条件」という,ちょっと難しいことについてお話します。
昨日は結構難しい話をしました。離婚訴訟についての話でしたね。
どうして離婚訴訟を提起するかというと,「離婚する」と書かれた判決を市役所に提出すると離婚できるからです。
本人同士での話し合いでも離婚できず,調停を提起しても離婚できなかった場合に,最後の手段として離婚訴訟を提起するわけですが,その離婚訴訟での最終目的は,「離婚する」と書かれた判決です。
で,「離婚する」と判決に書かれていることは,すなわち,「離婚請求権」という権利が存在することを意味する,ということも書きました。
「権利は目に見えないからおばけと一緒」ということも昨日書きましたよね(笑)。
「離婚する」と判決に書いてほしいから,「離婚請求権が存在するよ!」と一生懸命アピールしたいところなんですが,どれだけ一生懸命になっても,「離婚請求権」は目に見えないんです。
残念ながら。
じゃあ,どうやって「離婚請求権」という「おばけ」の存在を裁判官に認めてもらうかというと,「離婚請求権」が発生する「事実」が民法に書かれているので,その民法に書かれた「事実」が存在することを,裁判官に認めさせるわけです。
そうすれば,「離婚請求権が発生している」と裁判官が認めてくれて,「離婚する」と判決に書いてくれます。
じゃあ,民法に書かれた「事実」って何だよ,という話になりますよね,次は。
この,離婚請求権を発生させる「事実」のことを,「離婚原因」と呼んだりもします。
まあ,呼び方が違うだけです。
さて,本題に入りましょう。「離婚請求権」という「おばけ」を発生させる「事実」は,民法に5つ書かれています。
でも,5つ全部をここで指摘する必要はないと思います。
よく問題になるのは2つです。
・不貞(不倫)
・婚姻関係の破綻
この2つ。
民法には,もっと難しい書き方で書いてありますが,簡略化して書きました。
「不貞(不倫)」とは,夫婦のどちらかが,別の異性と性行為に及ぶことです。
ざっくりいえば,「不貞」とはセックスのことです。
もっといえば,「不貞」とは「挿入」です。つまり,「挿入」していなければ,「不貞」ではありません。
そうすると,「不貞」という「事実」を根拠に,「離婚請求権」という「おばけ」が発生したと主張したい場合,夫または妻が,自分以外の異性に「挿入した」(夫の場合),または「挿入された」(妻の場合)ことを立証しなければいけません。
でも,「挿入した(された)」ことの立証なんて,めちゃくちゃに難しいですよね?
だって,セックスの場面なんて,基本的に当事者同士しか見ていませんから,「挿入した」ことの客観的な証拠なんて残っているはずもなく,セックスの当事者ではない夫または妻が,「挿入した」と立証することはかなり難しいです。
だからといって,立証が不可能なわけではありません。「挿入」の立証を厳密に求めてしまうと立証が不可能になってしまうことを考慮し,立証は緩和されています。
例えば,夫(または妻)が,不倫相手とひと晩ラブホテルで過ごしたことが立証できれば,「挿入した」ことも立証されたことになっています。
確かに,ラブホテルとひと晩過ごしたとしても,「挿入していない」可能性はあります。厳密に言えば。
しかし,裁判で必要となる「立証」とは,あくまで,「常識的な観点」から立証できていれば,それで充分なんです。
だから,「常識的に」考えれば,ラブホテルでひと晩過ごしたのであれば,「挿入した」ことは間違いないので,ラブホテルでひと晩過ごしたことが立証できたら,「挿入」も立証できたことになっているんです。
さて,「不貞」についてはこれくらいにして,次は「婚姻関係の破綻」に移ります。
昨日のブログでも説明しましたが,「婚姻関係の破綻」とは,夫婦関係が完全に崩壊して修復不可能な状態を指します。
「破綻」という言葉をわかりやすく説明すると,「壊れて元に戻らない」という意味になりますから,↑に書いたことは,「破綻」を言い換えただけです。
さて,夫婦関係が崩壊してしまう理由は,本当に千差万別です。
家庭内暴力(DV)があったり,性格の不一致によって家庭内別居状態が何年も続いていたり,家庭内別居にとどまらず本当に別居してしまい,その別居状態が何年も続いたり・・・。
本当にいろいろあります。
ただ,大事な視点が2つあります。
・「破綻」,つまり,「夫婦関係が崩壊して修復不可能な状態」になっているかどうかを判断するのは,裁判官という第三者であること
・離婚したくない夫(または妻)は「夫婦関係は崩壊していない」・「修復可能だ!」と主張していること
この2つです。
つまり,「まだやり直せる!」と熱烈に主張する相手の言い分を踏まえてもなお,「この夫婦の関係は崩壊して修復不可能」と,第三者である裁判所に認めさせることが必要なんです。
これって,それなりにハードル高いです。
「夫婦関係」って,結局は気持ちの問題ですから,夫婦の一方が「まだやり直せる!」という気持ちでいるのに,その気持ちを顧みずに,夫婦のことをよくわかっていない裁判官が「あなたたちは離婚しなさい」と命じるのは,それなりにハードルが高くないとダメだと思いませんか?
「やり直せる!」と一方が主張しているのに,もう一方がそれをはねのけているのは,「はねのけているほうも悪いよね」「もう一度真剣に話し合えば修復できるんじゃないの?」という見方もできるわけです。
だから,「婚姻関係の破綻」には,客観的な証拠が必要になってきます。
離婚するうえで「別居」が推奨されるのも,そのためです。「別居」という客観的な事実があれば,「婚姻関係の破綻」を認めやすくなるからです。
しかも,別居期間は,日々刻々と長くなっていきます。別居期間が長ければ長いほど,「婚姻関係の破綻」は認められやすくなりますから,別居生活を送ること自体が,最終目的の離婚に繋がっています。
DVを理由に「婚姻関係の破綻」を主張するのであれば,暴力によって負ったケガの診断書など,客観的な証拠が必要になるでしょう。
僕らは,最悪の場合を想定します。
最悪の場合とは,相手が「離婚したくない!」と駄々をこねてしまうことです。僕ら弁護士は,こういった最悪の場合でもなお,確実に離婚する方法を考えているんです。
逆に,離婚したくない夫(または妻)の立場から考えてみましょう。
離婚したくない夫(または妻)としては,「婚姻関係の破綻」を認められてはいけません。
協力的に家事や育児をこなし,夫婦の生活に尽力しているという事実を積み重ねることが大切になってきます。
ただ,どれだけ協力的になろうとしても,相手が別居を始めてしまっては,その願いは叶いません。
確かに,夫婦には同居義務があるので,別居した場合は,同居義務違反とも思えます。
ただ,別居開始には,それなりの理由があるわけです。同居義務違反となるのは,あくまで,正当な理由のない別居だけなので,多くの場合,別居が同居義務違反となることはありません。
別居されたら,別居期間が伸びていって,最終的に「婚姻関係の破綻」が認められてしまう!と思い,力づくで相手を同居させようとしたら,その「力づく」は「暴行罪」になる可能性があります。相手が怪我したら「傷害罪」です。
その結果,逮捕されてしまう可能性があります。
逮捕されてしまったら,「逮捕されるような人とは夫婦関係を続けていくことは難しい」という理由で,さらに「婚姻関係の破綻」が認められやすくなってしまいます。
踏んだり蹴ったりですが,仕方ありません。
別居していった妻(または夫)を,引き止める方法は,残念ながらありません。基本的に。
だから,一昨日からお話しているとおり,「最終的には離婚されてしまう」のです。
別居を止める方法がないので,別居されたら最後,別居期間が日々刻々と着実に長くなっていき,最終的には「婚姻関係の破綻」が認められてしまい,「離婚する」と書かれた判決が出てしまいます。
最終的なまとめに入りますが,結局,
・離婚したい側は,根気強く諦めなければ,最終的にいつの日にか離婚できます。
・逆に,離婚したくない側は,いつの日にか最終的に離婚されてしまうことは覚悟しなければいけません。
離婚の話は,この辺で終わろうと思います。
それではまた明日!・・・↓
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