Wechat Mini Programがアプリを代替できない理由
医療通訳士の受験勉強のため、一週間以上休刊しましたが、今日また再開します。今回は過去にご紹介したWechat Mini Programについて少し補足説明をします。
Mini Programについて、日本でもいろんな紹介記事があるのですが、App Storeの脅威になるぐらい、過大にWechat Mini Programを評価しがちという問題に気づきました。
また、前回の拙作をお読みの方々にも誤解を招かないよう、今回は、Mini Programに対する、自分の判断を述べたいと思います。
結論から言うと、
Mini ProgramはAppを代替することができないです。
主な理由は、以下の4つです。
アプリの代替ではない理由:
①企業の取捨選択
Wechat Mini Programを開発する企業の多くは、自社アプリも持っています。
ユーザーにとって、Mini Programはダウンロードのデータ量を使わない、スマホストレージに負担をかからないというメリットがあります。その結果、もし、両方の機能が一緒であれば、Mini Programのほうを残して、アプリを削除する行動をしがちです。
しかし、ユーザーのこのような行動は企業にとっては致命的な問題を招きます。それは、オンライントラフィックの入口が自社ではなく、Wechatが持つようになることです。
また、プッシュ通知ができないMini Programはユーザーの獲得という面では有利ですが、ロイヤリティを育てることも難しいです。
そのため、多くの企業、特にトップ集団の企業は、自社アプリ機能の開発に力を入れながら、Mini Programではアプリの一部のコア機能しか実装しません。
そうすると、Wechat上のトラフィックも獲得できるし、Mini Program上の機能だけで満足できないユーザーを自社アプリユーザーに転換することもできます。
中国版のCookpadである「下厨房」がその一例です。
アプリ版では、料理のレコメンド、料理を作る動画の閲覧、食材の予約などの機能があるが、Mini Program版では、レシピの検索とブックマークしかできないシンプルに設計されています。
一方で、トップ集団よりも、ベンチャーやロングテールのほうは、積極にMini Programを開発しています。
彼らにとっては、開発コストが安く、オフラインからもトラフィックが獲得できるMini Programのほうが、アプリよりハードルが低いからです。
②Tencentが考えるMini Programの位置づけ
TencentがWechat生態圏の一環として、Mini Programを開発しました。
その生態圏の中で、Mini ProgramによってTencentが解決しようとする問題は主に2つあると考えられます。
①オフィシャルアカウント(公衆号)が一方的な発信しかできない問題。
②オフラインのローカルコミュニティを巻き込みことが難しい問題。
近年では、オフィシャルアカウントは購読した後、コンテンツ生産者からの情報受取しかできない問題が顕在化してきました。ユーザーとのインターラクションが足りない問題により、オフィシャルアカウントのアクティブ数が落ち、ユーザーの脱落が起こります。
ミニプログラムはWechat内のプロモーション手段として、ユーザーとのインターラクションにより、生態圏の活性化に有効です。
もう一つの問題は、オンライントラフィックが飽和した今、いかにオフラインのローカルコミュニティを巻き込むかです。Mini Programが開発されたのも、主にこれを解決するためです。
つまり、TencentはWechat生態圏のオフラインからの入口を意図的に作ることでMini Programを開発したともいえます。
そのため、Mini Programの入口は、主に
①オフラインのQRコード
②位置情報により近くのMini Program
③Wechat内の完全一致検索
Wechat内でも、あまり目立たないところに置いて、プッシュ通知機能が設置されていないなど、Mini Programはオフィシャルアカウントと補完的な関係で作られました。
③Mini Program自体の弱点
万能な「アプリ」ではなく、ローカルコミュニティやローカルサービスのためのMini Programという主旨の下で、自然にMini Programが以下のような弱点を持っています。
①オンライントラフィック抑制のため、Wechat内の入口が見つりにくい。
②プッシュ通知機能がないため、想起されにくい。
③軽便性重視のため、ソースコードパッケージの制限が2Mbまで。
④機能がシンプルなので、複雑なシーン対応ができない。
④ユーザーからの抵抗
最後に、ユーザーにとってもデメリットがあります。一番大きいのが、個人データ問題です。
アプリの場合は、ユーザーはそれぞれの生活シーンに合わせて、対応するアプリを使用しています。それぞれのアプリが獲得した個人データはお互いに孤立されている状況なので、アプリの利用によって、一部の生活習慣がアプリプロバイダーに把握されるリスクはあるものの、すべての趣味や個人情報などではありません。
ところが、もしすべての生活シーンにMini Programが対応できるのであれば、ユーザーに利便性をもたらす一方、その人の日常生活すべてがTencentにさらけだすことになります。
そうすると、個人に関するすべての情報を一社に把握されるという高いリスクも高くなるので、ユーザーからの抵抗もあると考えられます。