Mini Program:アプリの進化形?
今回ご紹介するトピックは、中国でかなりはやっているミニプログラム([英] "Mini Program", [中]"小程序")です。
日本の皆さんはあまりなじまない言葉かと思いますが、中国では実はすでに広く認知され、応用されています。6億人超えのユーザーを擁するミニプログラム、今回連載では、この利用実態に迫ります。
Mini Programとは?
ミニプログラムのことを最初開発したのがテンセント社で、Wechatアプリ内で作動するものです。一言で端的にいえば、アプリ内のアプリとも言われます。
Wechatアプリ内でミニプログラムを検索すれば、特にApp StoreやGoogle Play等を開いてダウンロード・インストールすることなく、すぐ使えるのが最も大きな特徴です。
・ ダウンロードする必要がないのはなぜ?
一回Wechat内でミニプログラムを呼び出してみましょう。やりかたはすごい簡単、合わせて2ステップのみです。
また、チャット画面をプルダウンしたら、直近使用したミニプログラムがずらりと並べています。
・ Wechatミニプログラムで何ができる?
幾つかの事例を挙げてみましょう。
①オンラインゲーム
②オンラインコミュニティー(RED「小紅書」等)
③オンラインショッピング(JD「京東」等)
④オンライン動画視聴(iQiyi等)
⑤オンライン教育
⑥Webアンケート
一見アプリのように見えるが、すべてミニプログラムの形で、Wechatのアプリに内包されています。
ちなみに、写真の右上に、「・・・」と「◎」のマークがありますが、それは、前者をタップすると、ミニプログラムのシェアができ、後者をタップすると、Wechatの画面に戻る設定です。
中国の阿拉丁指数が発表した「2018 White Paper on the development of mini program industry」の統計データを見てみると、幅広く応用されていますが、中でも、ゲーム、EC、コンテンツがTop3となっています。http://www.aldzs.com/viewpointarticle?id=4378
Wechatミニプログラムの数の成長スピードも驚異的で、2017年1月9日にリリースしてから、同年度の数が58万だったのに対し、1年後の2018年には230万に上り、App Storeのアプリ数(210万)を上回りました。
どんなプレイヤーが参入している?
中国では、アプリが飽和になってきた現在、ポストアプリ時代のユーザー滞在時間に巡る戦いが蔓延しています。Wechat以外に、2018年に新たに参戦したプラットフォームが7つあります。
・ テンセント系:Wechat、QQ
ミニプログラムの第一人者であるテンセント。リリースしてからのMAU(Monthly Active Users)推移をみると、最初2017年初の6万から年末には2億近くに成長し、2018年の年初には一気に4億台に上りました。
また、浸透率をみると、こんだけ成長したにもかかわらず、まだまだ浸透率が43.9%しか達していないというのは、これからのさらなる成長も見込めるでしょう。
・ テンセント以外のプレイヤー
①アリババ系(Alipay、Taobao)の特徴:
・2018年の7月に参戦。
・一番差別化になるポイントは、ミニプログラムでは「芝麻信用」のスコアへのAPIアクセスが可能ということ。
②Bytedance系(TikTok、Toutiao)の特徴:
・2018年9月に参戦布告。
・ToutiaoとTikTokでミニアプリを相次いでリリース。
・今後は、エンタメに特化したコンテンツの充実が期待できる。
③Baidu系(Baidu smart miniprogram)の特徴:
・Baiduは中国の検索最大手で、AIにかなり注力。
・スマートミニプログラムでは、画像認識など同社のAI技術をサードパーティーに提供するのが特徴。
・オープンソース化も推進中。
④スマホメーカー系(快応用「Quick App」)の特徴:
・Huawei、OPPO、Xiaomiなどの中国の10大スマホメーカにより合同リリース
・スマホメーカーの顧客基盤を整合して、上記アプリに対抗する姿勢
革命的といわれるのはなぜ?
ミニプログラムの出現により、アプリの概念が大きく変わり、スマホ業界を激変させるといも言われています。一体どこが革命的なのでしょうか。私はいろんな記事をまとめて、ミニプログラムの以下のような特徴を整理してみました。
・ 包括性
Wechatはオフィシャルアカウントとは別に、ミニプログラムをリリースすることで、SNSの性質だけでなく、いろんなサービスを載せていくプラットフォームへのトランスフォーメーションが実現できました。これにより、ユーザーは、IOSとは関係なく、生活のすべてが、Wechatを使えば解決できるような包括的なサービスの享受ができるようになってきます。
また、オープンソースかにより、第三者の誰でもミニプログラムを製作できるようになることで、ミニプログラムサービスの充実も期待できます。プラットフォーマーは他人のサービスで自社プラットフォームの満足度の向上に貢献することも期待しています。
・ 軽便性
ユーザーにとって、Wechat自体がOSになり、自分がどんなスマホでも、
同じ体験が手軽にできるところが一番のメリットかと思います。また、ダウンロード・インストールなしだけでなく、Wechat内だから、ログインの手間も要らなくなります。
ベンチャー企業にとって、ミニプログラムでスタートすれば、iOSやAndroidエンジニア両方を最初から確保する必要がなくなり、一個のミニプログラムをつくれば、全機種対応できるので、金銭と時間コストが大幅削減されます。実際にも、初期検証にミニプログラムを使う中国のスタートアップが多いようです。
・ O2O
他の国より、中国では、一つインフラが進んでいます。それは、QRコードです。Wechatのミニプログラムが最初考案された際に、アクセス方法が三つしかありません。それは、「現実世界でQRコードをスキャンする」「Wechat内で検索する」「チャットでシェアする」です。
AppStoreのアプリ同士で、ホームスクリーンの場所を獲得する戦争は過酷です。しかも、勝ち抜いたとしても効果がよくありません。そのため、テンセントはオフラインに目を向けたのです。一見オンライントラフィックを抑制しているようですが、実際はオフラインを巻き込むことで、新しいトラフィックの入口を獲得したのです。
・ 拡散性
Wechatのグループチャットとモーメンツはコミュニティや友達同士の話し合いをしたりする場所としてよく使われています。ミニプログラムはシェア機能があるので、こういったグループへのシェアにより、一気に広がることが可能になります。
ユーザーにとってはチャットから離さずに、話し合いしながら、気になるものをシェアすることがとても便利なので、利用率が高いです。
また前述の軽便性もあり、とても拡散しやすく設計されています。
・ 破壊性
以上がのような性質を持つミニプログラムは今までアプリ利用の習慣を覆す力を持っています。今までOSごとに対応したりしなかったりするアプリにとって、OSをクロスして対応可能になるのが、より大きな客層を獲得するチャンスです。
実はすでに活用始めた日本企業もいます
実際に、これだけ大きなユーザ層がいて、頻繁に使われるのであれば、マーケティングへの活用も期待されています。
博報堂は、既に2018年3月からWechatミニプログラムを利用して、日本企業にプロモーションサービスを提供し始めました。主なターゲットはインバウンド市場となります。