一時保護施設における学習支援「ポル」を通して見える子どもの現状
最近、児童養護施設等を運営している法人が一時保護施設をつくる法人が増えてきています。その法人の1つである社会福祉法人扶桑苑と連携し、一時保護児童に対する学習支援を実施しています。2021年9月から開始し、年間40名程度の男の子と関わっています。2024年5月には2ヶ所目を開始し、6名の女の子と関わってきました。
札幌市の虐待対応とその状況
児童相談所の虐待対応の人数は、令和4年度は2,286件になります。そのうち在宅指導は2,216名、施設措置は53名、里親家庭17名となっています。虐待を含む様々な理由により一時保護された子どもは451名となります。私たちはそのうち約8.9%の子どもたちと学習を通して関わっています。
私がこの数字を見て感じたのは、①虐待対応した家庭のうち、約97%は在宅指導であること、②児童相談所の一時保護所で保護された段階に至った子どもでも家庭引き取りが約83%もあることから、地域における家庭への支援が重要性が高いということです。特に一時保護されるまでに至る場合は、何かしらの理由で家庭養育が難しいと判断されたと考えられることから、より一層地域における支援が必要と考えられます。
団体として意識していること
一時保護されている子どもと学習を通して関わるうえで、Kacotamでは一時保護退所後でのつながりが持てるように、一時保護期間中にいかに子どもと関係を構築し、ニーズを把握し、少しでもポジティブな感情を抱く経験を提供することができるのかが重要と考えています。活動方針として、「子どもがポジティブな気持ちを抱いた経験を1つでも多くもって、次のステップに行けるように行動する」を定めています。一時保護解除されたとしても、本人が望むのであれば学習機会の獲得ができるように、解除前に拠点型学習支援について話をしています。(施設措置となった場合も施設に訪問して行う学習支援を利用することも可能です。)
一時保護をされている子どもと関わるなかで声を聞くのは、「当たり前のことができない」ということです。学校に行く、外で遊ぶ、友達と話す、お店でお菓子や服を買う、髪を切りに行く…。そのようなことが出来ない状況が続きます。また、いつまで続くのかも分からないことが多くあります。家庭引き取りで進めていても保護者からやっぱりやめるということがあったり、面談の約束が守られなかったりして思うように進まないことがあります。また、施設の場合も受け入れ先の施設が無く、調整することに難儀している話を聞きます。そのような現状から、原則2ヶ月以内とされている一時保護期間を越え、長期化している子が少なくありません。長期化すればするほど、先を見通すことができない不安や制限下で過ごさざるを得ない日々へのイライラや無力感を抱いている様子が見られます。これは子どもだけでなく、大人でも、誰でもそのような状況下になればそのような状態になると思います。
そのような状況にあるからこそ、話をしたいときはじっくりと聞き、やりたいことがあればそれが実現できるように動いていきます。見通しが持てず、いつ関われなくなるか分からないからこそ、スピード感をもって進めることを意識しています。直近ではレジンづくりをしたいという声を受けて、レジンづくりをしたり、それに感化された他の子がシャカシャカキーホルダーを作ったりして学習後は過ごしています。
施設措置となった子ども
これまで一時保護施設内で関わった子どもで施設措置になった子がいます。そのなかで児童養護施設等に訪問して行う学習支援「学ボラ」につながったケースが数件あります。すでに一時保護施設内で当団体のメンバーと学習しているイメージがあるからこそ、つながりやすく、利用されやすいということがあります。また、一時保護が急遽解除され、一時保護期間内で実施できなかった企画も、施設入所後に実施したケースもあります。
課題とこれから
現在の課題は、退所後に関わる機関との連携ができていないことです。家庭引き取りになる場合、児童相談所の担当ケースワーカーと連携して、個別訪問型学習支援「テラス」や拠点型学習支援「スタサポ」につなぐことができれば、連続性のある学びの場を提供することができます。また、関係機関との情報共有を進めていくことで、よりニーズにあった支援を検討し実施することも可能になると考えています。
また、現在関わることができているのは、一時保護されている子どものうち約8.9%の子どもです。民間の一時保護施設に加え、児童相談所に併設されている一時保護所内においても同様の活動をすることができれば、より多くの子どもに対して、連続性のある学びの場づくりと支援のつながりを展開できると考えています。