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贅を極めたフランス貴族が発明した究極の道具「銀器」にあこがれて ~ラッキーウッドのパリ

皆さん、こんにちは! ラッキーウッドの小林です。

今回は、本格的なフランスタイプの洋白銀器のご紹介

ラッキーウッドNo.26500<パリ>シリーズ
洋白銀器20ミクロン/ハンドルサテン仕上

「洋白」とは、銅とニッケルの合金の生地に、純銀メッキを20ミクロンの厚みで施したもの。
表面は、99.99%の純銀です。
1ミクロンとは、だいたいチョコレートの銀紙1枚分の厚みです。
それが、20枚重なった厚さが、約20ミクロン
銀はやわらかいので、摩耗により擦り減っていきます。
1ミクロンの厚みの銀が摩耗するのに、通常使用と手洗いでは、「一日10回洗ったとして、1年で1ミクロン摩耗する」と言われています。
ホテル・レストランさんの使用頻度では、10年くらいのご使用で、銀メッキのかけ直し修理をおすすめしています。
ご家庭では、20年くらいのご使用が目安とお伝えします。
「銀めっきのかけ直し修理」すると、同時にキズとり研磨もしますので、新品同様のきれいさと、口当たりの滑らかさが戻ります。(ただし、深いキズは取れません。)
これは、まるで「SDGs」ですね!
150年くらい前から、この方式 (銀仕上と修理) が、西欧で確率されているのは素晴らしいと思います。

洋白銀器は贅を極めた西欧貴族の発明した、西洋料理を美味しく食べるための究極の道具と考えます。
洋食ナイフを切り比べをしてみると、この「パリ」のテーブルナイフ(写真)が一番使いやすいですし、テーブルフォーク(写真)で、やわらかいものを刺し比べても「パリ」のフォークが抜きん出ています。
道具としても理にかなっている上に、アートのような深い造形美。

パリのデザートスプーンの皿裏模様です!

上の写真のように、表より皿裏に凝った模様が入っています。このために、金型は「総型」という特別な製法となります。下の写真ですが、ヘッド部分とハンドルが一体になっていますね。

一見当たり前に見えますが、
通常のステンレス製品は、ヘッド部分の型とハンドルの型が分かれています。それは、ハンドルを持ちながら頭だけ成形したり、頭の部分を持って、ハンドルを成形する方が、一発で加工が成功しやすく、万が一金型にはまり込んでも、手で製品を抜き取ることが容易にできます。
ですが、
「総型」で成形する場合、表型と裏型フレキションプレスの上下にセットし、アウトラインを完成させた製品板を入れて、ドスンと押す時には、手を離さなければなりません
そうすると、どちらかの金型に製品がはまり込んでしまうため、傷めないようにそろそろと取らなければなりません。非常にやっかいです。

さらに、金型の中で「肉が動く」と言ってますが、金属が移動して模様を形作るのですが、総型は、いろいろな役目を同時にさせてしまうため、なかなか模様が出にくく、
しかも、1回で加工硬化という現象が起こっていて、ガチガチに硬くなっているので、そのまま2回目を押しても「肉が動かず」模様が出ません。

特に、あの皿裏の模様の先端が、最後までなかなか出てくれないのです

そのため、
間間に焼鈍 (しょうとん) と言う工程 (一旦熱してから、ゆっくり冷ます) を入れると、加工後の形のままもとのやわらかさに戻ります。
それから、また押すを、2~3回繰り返すのです。

その間、上下をきちんと合わせてセットした総型はずっと機械から外すことできません

そのように、
手間をかけることが、最初から義務付けられている製法なのです。

パリのテーブルフォークの総型 (左の台の上のものが裏型、右が表型)

そして、
カトラリーを伏せてセッティング
して、その手間をかけた皿裏の模様を、お客様にご覧いただくのがフランス流。
そこが職人泣かせの場所なことを、ホストは良くご存じ。
そこを一番に見ていただくなんて、日本の茶道に通じるものがありますね。
食卓が、カトラリー職人たちの技の見せ場、晴れ舞台になっているのです!
なんて粋な計らいなのでしょう!


さらに、
光の反射率が金属の中でトップクラスの銀が、ホストがしつらえた部屋の光の演出を、すべて卓上に反映、宝石のようにキラキラと輝き、
特に皿裏が、ゲストの方に向いて、凝った模様でキラキラと輝いていて、
大切なお客様をお招きするのです

ゲストは自分のために磨かれた美しい銀器を見て感激し、
さらに
並んでいるアイテムの種類で、今日はどんなお料理が出るのか一目瞭然
期待に胸を膨らませます。
つまり、
銀器は西洋の「おもてなしの心」そのものなのではないでしょうか。

知れば知るほど、文化に育まれた深い愉しみ方と、
フランス料理を知り尽くした、抜群の機能性はもちろん、
作り方としても、凝るところはもちろんものすごいですが、
無駄なところはすべて削ぎ取られていて、
すべてにおいて、深く作り込まれ、考え尽くされていることが、ひしひしと伝わるのです。

貴族が発明した究極の道具である「銀器」にあこがれ、
実際に製造をしたカトラリーメーカーだからこそ、理解できたこと


その当社が、念願の本格的なフランスタイプの銀器を作らせていただくチャンスが到来したのが、1966年

マキシムドパリさんがフランス以外で初めての支店を東京に出店する際、フランスの本店で使用されている、歴史ある定番デザインを、弊社が作らせていただき、ご採用いただいたのです。

フランスの歴史的ザインに敬意をはらいつつ、日本人向けにアレンジし直し、若干シンプルに、且つ使いやすくしました。
それから50年以上作り続け、フランスタイプの偉大さと、奥深さを十分に思い知りました
そして、その経験は、当社のオリジナルカトラリーすべてに生かされています。先人たちの思いに感謝!

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