令和の歳時記 クロスジギンヤンマ
今あちこちの池や湿地でクロスジギンヤンマが羽化し始めている。クロスジギンヤンマはトンボ科の中でも最も美しい体を持つ昆虫だ。
黄緑色というか青色というかキラキラと光りながら空を飛んでいる様子はまるで宝石のような煌きを発する。
テリトリーといって自分だけの行動範囲を持っていて他のトンボが入って来ると追い出す。ホバリングしてハエなどの小昆虫をすばやく捕らえるのもカッコ良い。
このトンボは大抵、夕暮れ時に水面から草木に登り始め羽化する。じっと観察しているとその警戒心の強さに驚かされる。
まず上り始めたヤゴに少しでもこちらの気配を与えるものならたちまち水中へ落下する。無論触ろうものならその日は草木に再び登ろうとしない事が多い。
人はもちろん他の昆虫や小動物に狙われないように細心の注意を怠らないことが彼らの流儀だ。
一度草木に止まり邪魔者がいないか確かめ、羽化する体制が整うとこちらが動いてももう大丈夫だ。
その時、観察するのが一番楽しい。頭から抜け始め尻尾を抜き、羽が乾くのに約2時間。大きさは8cmくらい。
このクロスジギンヤンマの名前の由来も実にユニークだ。胸に黒い筋が2本通っていること。
そしてこのヤンマという意味は“八重羽(やえばね)”から来ているらしい。つまり八重桜の花びらが開く様子とトンボの羽が開く姿が似ているということが訛って“やえば”そして“ヤンマ”になったという。
クロスジギンヤンマも含めトンボは水中生活から大空へとその人生を謳歌して行く。われわれ空を飛べない人間にとっては昔から憧れの昆虫であったのであろう。
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