令和の歳時記 キキョウ
やっと会えた!懐かしい友だちか恋人に再会したような気持ちであった。今年は長雨で、あちこちの草原へ行ってもキキョウを見つけることが難しかったから感激も一潮だった。
花色は白から紫色まであるが、やはり紫に限る。
は敢えてセンチメンタルブルーと呼んでいる。五角形の星形の花びらを見ていると悠久の宇宙を彷佛させてくれ、ロマンティックにさせてくれるからだ。
キキョウは日当たりが良く、乾いた草地で見る事が出来る。開花時の大きさは30ミリ程。丈は生育したもので100ミリにもなる。
根っこは咳きやタン、咽の痛みを抑える生薬としても有名である。名の由来は『桔梗(きちこう)』が訛ったから。
私は咲き誇った花びらより蕾みの方が好きだ。子供がまるで紙風船のようにほっぺを膨らまし口をすぼめた姿に似ているのが愛らしくてたまらない。
ちなみに欧米ではバルーンフラワーと呼ばれている。さて、このキキョウだが夏の花と思われがちだが実は『秋の七草』である。かの有名な山上憶良が万葉集で「萩の花、尾花、葛花、撫子の花、女郎花また藤袴、朝貌(あさがお)の花」と詠んでいる。
順番にススキ・ナデシコ・オミナエシ・ハギ・クズ・フジバマであるが、最後の朝貌がキキョウのことである。
子供の頃ススキ野原で友だちとかくれんぼをして遊んだ。息を潜めている目の前でこのキキョウを見つけうっとりしたものだ。
しかし悲しいことに今は野生種は珍しくなり、主にガーデニングの勧賞ものとして扱われている。
あの懐かしい時が帰って来ないかと思うと何だかセンチな気分になってしまった。