令和の歳時記 シジュウカラ
冬の湿地には立ち枯れしたヨシ原が広がっている。中に入り見上げると高さは3メートルもある。悠然と風に揺れているヨシに囲まれると青く繁る夏が待ち遠しくなってくる。
竹のように節があり表面が硬いヨシ同士がぶつかるとカランカランという心地よい音がする。しばらくその音を楽しんでいると数匹のシジュウカラがやって来て、ヨシの枝に横向きに止まり嘴で突つき始めた。
ヨシの中にいる虫を掘り出し食べているのだろう。私は何本かヨシを割ってどんな虫がいるのか調べたが結局何も見つからない。
人間が忘れてしまった嗅覚を彼らは持っているのだと改めて感心した。この鳥は北海道から沖縄まで日本全国に生息するとてもポピュラーな鳥である。
大きさはスズメ程で15センチくらい。首から上が黒く頬が白い。背中は緑黄色と青灰色が鮮やかにグラデーションしている。翼の先端部は灰青色でお腹は白色。
そして一番の特徴は喉から腹、尾っぽまで黒いネクタイを彷彿させる模様だ。せわしい動作にこのネクタイは、まるでコメディアンのようで微笑ましい。
さえずりは“ツーピー、ツーピー”で、地鳴きは“シー、ヂュクヂュク”と鳴く。時折“カラカラ”という音を発するらしいが、いくら耳を研ぎ澄ましても聞き取れなかった。
名前はこれらの鳴き声をまとめてシーヂュクカラと呼ばれ、シジュウカラになったと云われている。
この鳥を題材に室町時代の僧侶一休の温厚な人柄を表した「四十雀の引導」という笑い話がある。
少女が死んだシジュウカラを供養して欲しいとお願いに来た。もちろん一休は丁寧に供養した。
後々、弟子たちがこの一件を「人生五十年というのに、小鳥の分際で四十まで生きるとは何事じゃー」と一休が一喝し鳥に引導を渡したと大袈裟に創作した。
滅多に怒らない一休が些細なことで怒ったという笑い話だ。ちなみに当の一休は五十を優に越え八十八歳まで生きた。
分布●日本を含む東アジア、ロシア極東に分布する
生息地●市街地の公園や庭、平地から標高の低い山地の林、湿原などに生息
花期●2〜3月 大きさ●全長13–16.5 cm 翼開長は約22 cm
学名●Parus minor
和名●シジュウカラ(四十雀)
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