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令和の歳時記 スイセン
スイセンは冬の花とのイメージもあるが、春先の今も楽しめる。街中の路傍の灌木などで目にすることが多い。大抵、数本が一斉に立ち並んでゆったりと揺れている。
一見、弱そうに見えるがそうでもない。冬の強風の中でも倒されることはない。もちろん、背丈が低いこともあるが、触ってみるとその理由がわかる。
茎は芯がしっかりあるが、前後左右に曲げてみるととても柔軟性がある。つまり“しなやか”だ。
自然の風、あるいは国道沿いでは大型自動車の風圧などスイセンにとっては「どこ吹く風」状態と言えるのだろう。
さて、スイセンの香りが好きかどうかは賛否両論の結果になる。ミカンの花などの柑橘系を帯びているが、もっと強烈に鼻腔をついてくる。
中にはトイレの消臭剤を想起させるので、苦手だと言う人もいる。わたし自身は自然の中でこのスイセンの香りを何度も嗅いで楽しんでいる。
冬と春とでは香りの強さが違うような気がする。
冬の方が強いように感じる。勝手な見解だが、生物の少なくなった冬ではスイセンのように花を咲かせる花は少ないから受粉昆虫と出会えるチャンスも減る。
香りを武器にしているスイセンにとっては死活問題であり、「もっと強い香りを出そう」と努力しているのかもしれない。
しかも冬の凜とした空気の中で嗅ぐというシチュエーションもわたしの嗅覚に追い打ちをかけて、香りを助長しているのかもしれない。
先日、神社に生えているスイセンの香りを嗅いでみた。周りは梅の花、タンポポなどが生え始めている。
メジロも歌い出している。土面にはアリがアクビしながら闊歩し始めている。
さて、スイセンの香りは如何に?わたしの感覚では優しい香りになっていると感じた。冬の鼻腔をつく強さより、かなりまろやかな印象だ。
たぶん、わたしの目、鼻、耳、口、触の感覚器がフル稼働し始めたから、嗅覚に集中する意識が減ったからやさしく感じたのかもしれない。
実際、スイセンの前に座ってしばらく過ごしてみた。案の定、多くのミツバチが飛来する。冬には見れらない光景だ。
実際、香りの強さを季節によって調整することが可能かどうか不明だが、春は多くの昆虫が出現するので、香りを緩めることが、省エネに繋がるかもしれない。
それに集団で咲いている利点もある。ひょっとして、隣のスイセンと連絡して「ちょっと休むから君が香り出してね」などの協力体制が敷かれていたらと想像すると楽しくて仕方がない。