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令和の歳時記 クマガイソウ
この淡いピンク色の花を山の中で見つけた時は深い感動に包まれ声を失った。同時に誰にもその場所を教えたくない宝物になった。
昨年もこの花を求めて山の中を歩き回ったが見つからなかったから喜びもひとしおだった。今年こそは何としてでも見つけよう情報を集めあちこちの森をさまよった。
なぜ私がこのクマガイソウに興味を持ったかと言うと、この花は環境庁の植物版レッドリストに載っており、絶滅のおそれのある貴重な花だからである。
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しかも日本に現存するラン科の花の中で最大と聞いては黙っていられない。
間近に見た花の大きさは8センチ程あり丸く穏やかな咲き方はふっくらとしていて女性的だ。
また葉っぱは扇形で20センチ程あり予想外に大きかったので驚いた。茎の高さは30センチ程で大きな花を支えるには少しばかり頼りなさそう太さに見える。
香りはどうか?私の個人的な感想を言えば心なしかチョコレートのような甘い香りがする。
クマガイソウの名の由来は、“熊が居そうな”場所に生えているからと駄洒落めいた言い伝えもあるが、実際は源平時代の源氏の武将、熊谷二郎直実に由来する。
丸い唇弁がこの武将が背負っていた母衣(ほろ)に見立てて名前が付いた。母衣とは竹製の籠の上から丈夫な布を被せ、紐で肩と腰にしかりと留める防具のことである。
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この母衣によって後方からの矢を防ぐことが出来たと言われている。
私が目を閉じ遥か800年前に起きた時空の歴史を楽しんでいるとハナバチがクマガイソウの蜜を求めて飛来して行く。
おそらく合戦で疲れた武士たちもこの光景を見たのだと思うと嬉しくなった。
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