令和の歳時記 オバケキノコ
わたしはキノコが好きです。キノコってとても神秘的だと感じています。
欧米の映画などでも同様にキノコのミステリアス感を全面に押し出した作品ってたくさんあります。
古くはジョルジュ・メリエスの『月世界旅行』(1902年)などはキノコが大活躍しています。そして、ディズニー作品の『眠れる森の美女』や『マレフィセント2』での存在感も抜群です。
さて、先日「新幹線の音を録音」する仕事で訪れた駐車場で見つけたキノコの存在力は半端なかったです。
車中から見ても、直径10センチはあろうかと思われるキノコが数本も立ち並んでいました。しかも無傷です。
わたしも踏み潰さないように避けて駐車しました。おそらく他の人たちも同様に避けたと思うのです。
車に轢かれないほども存在力を持っていること自体が“神がかり的”だと思うのです。
下車してキノコに近づいて観察しました。美しいキノコとは言い難いです。触ってみます。軽く叩いてみました。「ボンボンボン」という音が出るほど弾力があります。
このキノコの正式名はわかりません。食べられるかどうかもわかりません。大きな傘をさしていますが、その下には誰もいません。
ひょっとしたら小さな昆虫が休んでいるかと思ったのですが、そんなことはありません。キノコの目線になって、駐車場の入り口を見てみました。真っ正面になります。
絶対にドライバーの目に留まるように君臨しています。
もちろん偶然かもしれませんが、キノコの次世代のために胞子を放たなければいけません。
となると急いで成長しなければ目立たないので、踏み潰されてしまうのです。今は悠然を構えていますが、小さい時、ヒヤヒヤしているキノコを想像すると可笑
しくなってきました。みんなで「頑張るぞ」などと掛け声を出していたら、最高です。
土手に登って「新幹線の音を録音」しながら、キノコの方を見ていると、すべての車は見事にキノコを避けていました。
人間から見たら小さいけれど圧倒的なエナジーを持っていることにさらに驚きました。
ひょっとして食べられるキノコかもしれませんが、ここまで「命を主張」していると採集する気になれません。いつかキノコを題材に寓話ではなく、恋の物語を書いてみたいと思いました。