令和の歳時記 ゴマダラカミキリ
日本全国の平地から低山地の森や農園に生息しているポピュラーなカミキリムシである。紺色の体に白い斑点が特徴で体長は25~35ミリくらい。
名前の由来は白い斑点が“ゴマだら模様”に見えることから付いたらしい。ちなみに漢字では胡麻斑天牛となる。白黒模様の牛をイメージしたのだろうか、一説には顔が勇ましい闘牛の表情に通じるらしい。
確かに迫力があり精悍な顔つきだ。大きな目、キバ、頭頂から長い触覚が突き出し牛の角を彷彿させる。
一見、冷静沈着で強そうに見えるが実際はとても敏感で臆病である。言うなれば三枚目。野山でクワ、イチジク、ヤナギ等の樹木の茎をかじっている光景に出くわす。
静かに近づくとこちらの気配を察し茎の裏側にクルリと反転し、片目だけを覗かせこちらの様子を伺ったりする。お茶目で可愛い。
手を伸ばすと案の定、落下してしまう。捕獲し両手の平の中に置くと猛烈に暴れて逃げようとする。
いやのたうち回る。背中(正確に腹部)を掴むとパニック状態になりもう収拾がつかない。
頭を回しながら触覚を髪の毛のように振り乱し、キーキーと甲高い音を出して足をバタバタさせる。
音は頭部と胸部辺りから発せられるが相手を威嚇するのには悲しいかな、武器としては軟弱だ。キバで噛もうとするが指を噛ませても全然痛くないから苦笑する。とにかくすべてが空回り。
ゴマダラカミキリの愛好家は多い。個体の大小やスタイル、ゴマだら模様の差異などに惹かれるらしいが、案外三枚目という憎めないキャラクターに魅力を感じている人も多い気がする。