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令和の歳時記 ヤマホタルブクロ
ホタルブクロは北海道から本州、九州の野山や丘陵地に自生しているが、このヤマホタルブクロは東北南部から近畿東部の山深い斜面に咲いている。
特に我々が住んでいるこの地方にはなじみ深い花だ。釣鐘型の花は細い茎に4~5センチくらいの大きさで何本もぶら下がっている。
ちょっと重たげな様子だ。色は白、ピンク、赤、薄紫など豊富である。触ると何となくゴムのような吸着感があるが、内側は乾いた障子紙のような感触だ。
臭いは期待した甘美なものではなく、草をちぎった時に漂う青臭いものだ。
このヤマホタルブクロの名前の由来は提灯の事を“火垂る”呼んでいた説と、子供たちが山でホタルを見つけこの花に入れて家へ持ち帰った、という説があるが後者はどうやら真実ではないらしい。
時期的にはゲンジホタルの出現とヤマホタルブクロの花期は一致する。しかしゲンジホタルの生息する場所でこの花を見たことが無い。
ならばと思いわたしはゲンジホタルがいる里山へこの花を一房だけ持って出かけた。ゲンジホタルを一時的に捕まえて強引ではあるが花の中へ入れてみた。
中で光を放つヤマホタルブクロは確かに提灯のようだった。名前の由来が提灯説だとうなずける。
薄い花びらを透かしてエメラルド色の光がゆっくり明滅する。辺りは清流の調べ、カエル合唱、虫の囁きが一層雰囲気を盛り上げる。
蒸し暑い夜、わたしは日本的なわびさびを感じて涼しい気持ちになった。
こんなバカなことをするのはわたしくらいであろうが、こういう遊び心を持つと益々自然との付き合いが楽しくなる。