令和の歳時記 ショウジョウバカマ
春の山里を歩くと木々の新芽の香りが鼻孔を刺激してとても気持ち良く感じる。
頭上からは春光が降り注ぎ林床では新しい花々が次々と咲き乱れこれから訪れる季節に胸が踊る。
その代表的な花にショウジョウバカマがある。この花は小川などの湿地沿いに咲いている。淡紅色した花だ。背丈は大きくなると70cm程になるが花弁の大きさは1、5cm程だ。
四方八方に広がる花弁はまるで線香花火の光りのようにはかなく感じる。この花を漢字で書くと『猩々袴』となる。
猩々とは中国の架空の動物で猿に似て顔は赤く酒好きの動物で、顔と足は人間の姿をしている。
しかも人の言葉を理解できる動物のことである。
格調高い姿と舞い戯れる無邪気な霊長とされていて、“猩々”は不老不死の福酒を人間に授けるという中国の伝説から、能学に猩々が作られたと言われている。
ちなみにバカマは葉っぱがロゼッタ状、タンポポの葉っぱのように放射状に土中から伸びていて着物の袴に見られることから名付けられた。
確かにこのショウジョウバカマの淡紅色した姿を見ていると気持ち良く酔っぱらった猿の様に見える。
更に驚くべきことにこの花の子孫繁栄は5mm程の種子を遠くに飛ばす方法と葉っぱを分裂して増やす方法がある。
前者は一般的な植物では見られるが、後者は葉っぱの先っちょに自分自身の新しい株を増やしそれを土に戻すのである。
現代風に言わせればクローンにような子孫繁栄である。一見逞しいショウジョウバカマも今や減少の一途を辿っているらしい。
それはやはり私達人間による人工的な自然破壊による要因が大きいらしい。