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【ネタバレ考察】映画『空白』「古田新太から目が離せない」「毒親が招いた悲劇」「正義マンという偽善者はどこにでもいる」
映画『空白』を観ました。「大傑作映画」だと思います。主役の古田新太さんが本当にすごかったのです。
良くも、あれほどの憎まれ役を演じきったと感心させられます。完全なる“毒親”です。毒親どころか、ある意味、「社会的不適合な人間」であると言えます。
人と会話ができません。常に喧嘩腰であり、怒鳴りつけるのが日常です。
粗野で、乱暴で、礼儀知らずで、自分勝手で、悪態ばかりつく無教養な男です。しかも自分の信念を曲げないので、どうにもなりません。
本映画『空白』は父親・添田充(古田新太)が、愛娘・添田花音(伊東蒼)の万引きの疑いを晴らそうと奔走する姿を主軸に展開しています。
もう勢いが凄まじいのです。なりふり構わず「自分の正義」を押し通して行きます。怒り狂っているのです。
スーパーの店長・青柳直人(松坂桃李)を怒鳴りつけ、娘の担任教師・今井若菜(趣里)に悪態をつき、さらにマスコミを「ゴミ扱い」して行きます。
娘を亡くしたショックもさることながら、娘が万引きをしていないことが、心の救済となっているかのようです。
しかし、それが打ち破られた時の衝撃は計り知れないほど強烈でした。
本映画『空白』では、古田さん同様、注目して欲しいのはスーパーの店員・草加部麻子(寺島しのぶ)です。「正義マン」であり「偽善者」です。
こういうタイプの人って、どの地域にもいます。ボランティアを押しつけてきたり、無報酬で活動することに、自身の存在価値を誇示する人です。とても厄介な人です。
わたし的には添田も草加も関わりたくない人物です。でも、添田は一度断れば二度と関わることがない人物なのに対して、草加は断っても断っても「大丈夫、大丈夫」を連呼して離れてくれないから、こちらの方が厄介な気がします。
本映画『空白』ではテレビ、新聞などのマスコミに対して、厳しいメッセージを送っています。
プロデューサーが『新聞記者』の河村光庸さんだけあって、「不幸を食い物にする」メディアへのアンチテーゼ作品とも言えます。
それにしても監督の吉田恵輔さんの演出は素晴らしいと改めて感じました。