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令和の歳時記 マメガキ
私の実家には樹齢100年という大きな柿の樹があった。子どもの頃、晩秋の晴れた日を狙って兄と柿の樹に登って柿もいだ。
採れた実は母が皮を剥き紐を通し、父が屋根の雨樋の下に吊るした。正月、皆でコタツを囲んで干柿を食べた。
母が「豆でクリクリ〜」と3回言って食べると健康になる、と教えてくれた。子ども心に変な呪文でも良いことがあれば良いや、と勝手に期待したものだ。
ただその後にまだ続く言葉があったが食べるのに必死で聞き流していた。
後にあの時、母が言っていた正確な言い回しが「マメ(豆)でくりくり(栗)活気(柿)でがやがや(榧)」であるとわかった。
正式には家族全員で年始を迎え豆、栗、柿、榧を食べて家内安全、商売繁盛を祈願する習わしである。面白い習慣だが都会育ちの友人に聞くと知っている人は意外と少ない。
さて、このマメガキも干柿にするととても美味しい。大きさは10円玉程でたわわに実る光景がかわいい。今年、友人の家に大量に実った。
よく熟した一個を友人がもいでくれた。何も考えずに口に含んだら強烈な渋みに包まれた。やられた、友人は腹を抱えて笑っている。
このマメガキは発酵すると「柿渋」が採れる。柿渋は紙や布に塗ると頑丈になり防水・防腐効果ある。また接着剤として昔から重宝されてきた。
何はともあれ友人に雪辱しなければいけない。美味しいと判別するプロは鳥に限る。彼らが一番敏感だ。チャンスは年始頃。
どうやら私の事始めは鳥と一緒に友人の大切なマメガキを全部食べることになるだろう。