![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/84342051/rectangle_large_type_2_3c05cc1e6e1d354c4154e4fec969431c.jpeg?width=1200)
令和の歳時記 アオカナブン「背中の輝きに自分史を描く」
体が丸っこかったり、キラキラした虫のことを称して“カナブン”と呼ぶことがある。時にはゴキブリのことをもそう呼ぶ人もいる。
虫に興味のない人にとっては同じなのであろう。それは仕方のないことだ。
カナブンはカブトムシと同じコガネムシ科に属する甲虫で、夏の森の樹液には欠かせない存在である。
![](https://assets.st-note.com/img/1660009126930-YHEc5WHtYz.jpg?width=1200)
大抵、カブトムシが幅をきかせる“樹液酒場”の隅っこでちゃっかりと蜜を頂いている。
カブトムシを採るために、乱暴だがカナブンを払いのけると「ブーン」という音を立てて飛び立っていく。
でもすぐさま戻ってくる度胸の良いところもある。カナブンの体色は青っぽいものから銅色までと様々だ。
でも中にひときわ青というか、エメラルドというか輝きを放つ種のカナブンがいる。アオカナブンだ。
わたしは毎夏、森に入る時、アオカナブンに出会えることを楽しみにしている。心なしか減少しているような気がしてならないから、それを確かめる目的もある
わたしの少年時代の夏の森のスターは、もちろんカブトムシであった。魅力の理由は単純なもので大きくて長いツノだった。
![](https://assets.st-note.com/img/1660009178687-Bu0IipW5Z8.jpg?width=1200)
短いツノが戦いにおいては重要な役割を果たすなど知らず、ただ大きい事だけが強さの象徴だと子ども心に決めていたのだろう。
体が小さかったわたしが、いつか「大きく強くなりたい!」という想いをカブトムシに重ねたのは当然のことだった(しかし残念なことにわたしの体はそんなに大きくならなかった)
青年時代はクワガタムシが無償に好きになる。頭、胸、腹まで完璧に整った容姿に芸術性を見出したのだ。
しかも繊細な性質でありながら、いざという時は“アゴ”を振り回したり、挟んだりと勇敢に戦う生き様に惚れたのだと思う。
強さだけを求めた少年期とは異なり、美しさの中の大胆さに魅かれたのだろう。大人?になった今、わたしの心を捉えて離さないのは先に述べたアオカナブンなのだ。
薄暗い雑木林に生息しているから、撮った写真はいつも光量不足で今ひとつだ。名前は金属的な青色(昔の人は緑系色を青色とひとまとめにしている)でブンブンと飛び回る様子から付けられたらしい。
アオカナブンに魅了されながらも、上手に表現する言葉が見つからず数年過ぎたような気がする。
しかし今夏、私は西陽が降りる森でアベマキの樹液を静かに舐めるアオカナブンの背姿を見て自然に『美少年』とつぶやいた。
![](https://assets.st-note.com/img/1660009221483-qi5Wb9EppJ.jpg?width=1200)
無邪気で透明な少年時代の心模様がアオカナブンの輝きに重なったのだろう。
少年はある夏を境に青年へと成長する。理由は友と喜びを分かち合ったり、恋に涙したり、巣立ちに気が付いたりと様々だろう。
そして漠然とした不安を抱きながらも未来に夢を抱く毎日を過ごすのだ。少年の未来には大きな挫折も悲しみも待ち受けているだろう。でも安心してほしい。
その倍の喜びも幸せも享受できるはずだ。そしてちゃんと背筋を伸ばして堂々と生きていれば良い。
わたしもまだまだ『生きる理由』を問う毎日だが変わらぬ思いは“ずるい大人にはなりたくない”だ。
10年後、わたしはアオカナブンの背中のエメラルドの輝きに映る自分の姿に何を見て何とつぶやくのだろうか。楽しみだ。
分布●本州、四国、九州と、佐渡島、種子島、屋久島など広く分布する
生息地●雑木林の広葉樹の樹液などに生息
花期●7~8月
大きさ●22~32㎜
学名●Rhomborrhina unicolor (Motschulsky, 1861)
和名●アオカナブン(青金蚉、青金蚊)
英名●Drone beetle
![](https://assets.st-note.com/img/1660009246496-wSlJKup4UI.jpg?width=1200)