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【小説】生かされているということvol.5
時刻は、6時半を過ぎていた。
病院にきて、すでに30分は経過していた。
……
実は、2年前に、妻の祖母が同じ病院に運ばれて亡くなっている。
心筋梗塞を起こし、緊急搬送された。一命はとりとめたが、心肺停止状態が長かったために、結局目が覚めないまま、約1か月後に亡くなった。
……
そのことが思い出され、イメージしたくないのに、どうしても最悪の場合を考えてしまう。
人間は欲深いものだ。
倒れたときは、命だけでも助かってくれ!と思っていたのに、次は、目が覚めてくれと願っていた。
そんな欲深さに後悔したかと思うと、すぐに、欲深く願ってしまう。感情の起伏が激しく、コントロールできず、結果涙となって出てきていたのだと思う。
そんな中、娘は、静かに膝の上で待っていた。状況がわからないだけなのか、我慢しているのか。父親が泣いているのに、泣かずに待っている娘。
ただ、娘がいたから、気がおかしくなりそうになっても何とか耐えることができたと思う。
妻のお義母さんが病院に到着した。
時刻は、6時45分。
「命だけあるなら、大丈夫だから。発見してくれてありがとう」
と。実の娘なのに気丈に振る舞うお義母さんが心強く思った。
一方で、私がもっとしっかりしないといけないと心を奮い立たせた。
看護師さんが来た。
「HCUに運びます。その後ドクターからの説明がありますので、HCU・ICU前の待合室でお待ちください」
その待合室に移動しようとすると、妻をのせたベッドが見えた。
思わず駆け寄り、手を握り、呼びかけた。
「ちはる!」
しかし、反応はない。
妻をのせたベッドはHCUへと向かい、握った手は離れた。
時刻は、6時50分。
不安に押しつぶされそうになりながら、HCU・ICU前の待合室へと向かった。
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