移住者のおこのみ焼記
大阪から長野に越して2年が経った。
そして気づいたこと。
大阪にあって長野に圧倒的に不足しているもの、それは持ち帰り専門のお好み焼き屋である。
ずっと駅前がなんとなーーく仄暗いのは本屋とたこやき屋が無いからかって気づいていたけれど認めたくなかった。
大阪では、用事のある駅の改札を出るととかなりの確率で出くわすそれは、いくつかチェーン展開している屋号があるはずだけど実のところ区別はついていない。
いずれも派手で大きな看板と、昼夜問わず煌々と輝く照明、モクモク立ち上る煙とソースの匂い。
店前の通行人の有無に関わらず、信号の向こうからジュウジュウやりながら呼び込みをしている兄ちゃん。
そして老若男女が、食卓の隙間にどうやってそれらを食い込ませようか考えながら店先へと誘われていく、、。
休日の昼時なんかは、道幅が広くない事もあってかお店の前は列というか群れ。
注文にも受け取りにも熟練のワザが必要で、当時、自分は大阪マインドを持ち合わせていないと思っていた私はそのソースの乱に加勢することはついぞ無かった。
いつも立ち寄るのは残業終わり、もうジューシーな音も煙も立っていない、
兄ちゃんも鉄板をヘラですーいすーいとなぞって掃除しているような時間帯。
閉店間際にすがるように立ち寄っては、その時に残っているものをせしめて帰った。
先週の金曜日、ついに、オレにお好み焼きを食わせろ!が溢れ出し、休憩時間に発作をなだめるようにこの文章の原型を打ち込んだ。
しかし発作は止どまらず、
終業後、もうほとんど気づいたら電車に揺られて会社の人に教えてもらった古くからあるというお好み焼き屋さんのカウンター席に座っていた。
鼻息荒くモダン焼きを注文したものの、上下豚玉に焼きそばを挟むコワモテストロングスタイルに怯みモタモタしていたら「食べきれなかったらね、包んで持って帰れますから」と言う店員さんに後光を見た。
半分は早々に包んでもらい、手製のスタンプカードまでもらい、
棚ぼた的に持ち帰りお好み焼きの嬉しさを味わうことができた。立ち上る湯気と甘やかなソースの香りで安眠すらできそうだ。
ソースとかコナモン、べつにそんな、、みたいな顔して10年大阪で暮らして、出てきたのに。
この際認めざるを得ない。自分コナモン好っきゃわ。
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