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変形性股関節症と再生医療
変形性股関節症とは
変形性股関節症は、股関節の軟骨がすり減り、関節の変形と痛みを引き起こす病気です。主な原因は股関節にかかる過度な負担とされ、特に中年以降の女性に多く見られますが、年齢を問わず誰にでも起こり得ます。原因には、加齢による変化のほか、先天性股関節形成不全やスポーツによる外傷などが挙げられます。
初期には、歩き始めや立ち上がるときに違和感を感じる程度ですが、次第に痛みが慢性化し、症状が進行すると長時間歩くことが難しくなり、跛行(はこう:足を引きずるような歩き方)が見られることがあります。
では、変形性股関節症にはどのような治療法があるのでしょうか?
一般的な治療方法
まずは、股関節周囲の筋力を強化することが重要です。筋力をつけることで、股関節への負担を減らし、症状の進行を遅らせることが期待できます。また、股関節の可動域を広げるストレッチも効果的です。これにより、体重増加を予防することも可能です。
痛みが強い場合には、患部を冷やして炎症を抑えたり、痛み止めを使用する薬物療法が一般的です。しかし、これらの保存療法で効果が得られない場合、症状が進行したケースでは手術を検討することもあります。
膝関節ではヒアルロン酸注射などの保存療法が一般的ですが、股関節においては施行例が少なく、効果が限定的です。
保険診療の限界と再生医療の選択肢
保険診療による治療は選択肢が限られており、痛み止めなどの薬物療法では十分な効果が得られないこともあります。また、運動療法(リハビリ)を提供している医療機関も少なく、必要なケアを十分に受けられないのが現状です。
こうした課題を解決する方法の一つとして、再生医療が注目されています。再生医療は、体への負担が少なく、治療期間が短いというメリットがあります。手術を避けたい方や、年齢・骨の状態にかかわらず、多くの患者様が治療の対象となります。
再生医療の仕組みと治療の流れ
再生医療では「幹細胞」と呼ばれる、さまざまな組織に変化できる細胞を利用します。この幹細胞を患部に投与することで、組織の修復を促進し、炎症を抑える可能性があるとされています。
幹細胞は主に骨髄や脂肪に存在しています。当クリニックでは、脂肪から採取した幹細胞を用いて治療を行っています。おへその近くを局所麻酔下で2~3㎜ほど切開し、カニューレ(特殊な針)を用いて少量(通常2~5g程度)の脂肪を採取します。傷跡はほとんど目立ちません。
採取した細胞は約1カ月かけて培養しますが、投与する日程は患者様のスケジュールに合わせて調整できます。治療中も多くの場合、普段の生活を続けながら進めることが可能です。ただし、医師の指示に従って適切な生活管理を行うことが推奨されます。
治療後のケアも重要
幹細胞を投与した後も、治療を効果的にするためにはリハビリが必要です。特に、筋力トレーニングやストレッチなどを継続することで、症状の改善が期待できます。また、体重管理や適切な運動を続けることも重要です。
納得できる治療法を一緒に見つけましょう
どの治療法を選択するかは患者様ご自身の判断に委ねられますが、私たち医師は、患者様の症状やニーズに応じた最適な治療プランをご提案いたします。
診察時には、どんな些細なことでも構いませんので、不安なことや気になることを遠慮なくお伝えください。一緒にしっかりとコミュニケーションをとりながら、納得のいく治療法を選択していきましょう。